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春の残酷(抒情詩+)


春の残酷

春の残酷と
冬の残滓とは
曖昧さという救済と
アルビノの蛇の神聖

季節はその狭間で必ず
傷口を残すから
妖精の孫の正体を
皆誰も口にしない

突き当りの神秘は
巧過ぎる故の軽薄
才の絶える故の輝き
青に憧れ
春の夕暮れは
なぜか
朱黄に染まっている

妖精の孫~春の残酷さ~

夢を見た。妖精は孫の代で尽きるという夢であった。その神秘は唯、その個人へ力だけを引き継いで、次の代へは決して継がない。子を為せぬ妖精の孫は、傲慢に成れこそすれど、神聖には遂に届かぬ定め。当世一代切りの魔法を、それ故に妖精の孫は最も強く持つ。滅びの行き止まりの輝きを、命の限りに振りかざすのみ。

春は夢のひと時に似て、あまりに鮮やかに揺れる。恰も確かに幸せがこの世の約束であるようにも現れるほどに、花々は咲乱れ、獣たちは騒ぎ、空は仄かに色づき、大地は温かに萌える。海の穏やかな波は珠玉の光を含む。

春は仮初め。油断の季節に、騙されまいとして苦しむものがある。それでも食いしばる頬から放たれた空を風が舞う。更地になった土地に根拠を探そうとして、故郷とは失われた胸の中にあったのだと知る。いっそ冬であったなら、何時までも凍えの中にあったのならと、すっかりと解けてしまった握り拳の上には、染み一つなく春の光が射している。秋の残照よりもっと残酷な、春の淡い光が射している。