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読書ノート③5月中旬~下旬に読んだ本

就活の合間に読んだ本がたまりすぎており、1冊ずつ感想を書く時間が無いので一気にまとめておく。

1.フラニーとズーイ

『ライ麦畑でつかまえて』で有名なサリンジャーの作品だ。青年期特有の自意識に苛まれる妹と、妹をえいやっと世界に蹴りだす優しい兄の話。

前半の『フラニー』のパートでは、フラニーとパートナーとのデートを通じて、当時の富裕層の若者の生活の様子が描かれる。
後半の『ズーイ』のパートでは、世間に絶望して引きこもるフラニーとズーイの掛け合いが続く。
宗教的な概念が根底にあるため、なかなか難しい言い回しが多い。

なのに読めてしまうのは、文体の力のおかげだ。軽やかで、結構難しいことを言っているのだけど、すらすらと読めてしまう。きっと訳の妙もあるのだろう。
この兄妹を含む一家のお話は「グラース家・サーガ」として有名らしく、今は『ナイン・ストーリーズ』を読んでいる。他の小説を読み終わったらまとめて感想を書こうと思う。

2.フランス現代思想史

レヴィ=ストロースに始まる構造主義~脱構造主義までの流れを「フランス現代思想」と位置づけ、概要をまとめている。まだ最後まで読んでいない。途中で「あ、構造主義のことをいろいろ忘れてる」と気づき、復習しているところだ。

というわけで、全く思想について素養が無い状態から読むとちょっと難しいかもしれない。同じような内容なら、何回も書いているけども橋爪大三郎の『はじめての構造主義』がおすすめだ。

3.レヴィ=ストロース入門

レヴィ=ストロースの思想と業績について、網羅的に解説してある。

前半の『親族の基本構造』に関する説明では、図をふんだんに用いて説明しており、前述の『はじめての構造主義』よりも深い理解ができる。「ジャンケンの例え」によくある誤解について書いてあったのは収穫だった。

後半の『ブリコラージュ』の概念の説明や、『神話論理』の解説についても、時間は掛かったものの読み解くことができた。
特に『神話論理』の説明では、神話の実例をふんだんに用いており、かなり親切ではないだろうか。

もう少し柔らかい言葉遣いで書いてあれば、私のように好きで思想に触れているだけの者にはよりわかりやすかったかもしれない。

4.知的生産の技術

研究者である著者が、長年の研究者仲間と練り上げた「考える技術」を紹介してくれる内容。エッセイ調で、かつ著者のこだわり(こだわりの根拠は本文中に出てくる)によってひらがなが多い文体のため、さらりと読める。

50年前に書かれたという時代背景もあってか、「書く技術」に関する項目は今はもう応用しづらいものも多い。しかし、「書くこと」に対する姿勢は今にも通ずるところがあるので、一読する価値はある。

「メモは忘れるためにする」、「『よんだ』と『みた』を区別する」など、いくつか見習いたい点があった。
昔の研究者もこうやって四苦八苦しながら日々考えていたんだと思うと、私ももっと考えようと背筋が伸びる。

著者は他分野の友人と共にこの方法論を練り上げていったらしい。やはり他分野の人々との交流は大切にしようと思った。

5.センスメイキング

テクノロジーやビッグデータを重視し、人文科学を軽視する流れに警鐘を鳴らす内容だ。哲学、文化人類学、現象学といった分野における思考法や調査手法がいかに実践に求められているかを滔々と説いている。

社会科学を学ぶ者として、主張自体は嬉しいのだけど…自分の主張に沿うケースを集めて貼り合わせただけ、という印象も否めない。学術的読み物ではなく、あくまで実務家が実務家に向けて書いたものと捉えてライトに読んだ方がフラストレーションが溜まらないかもしれない。

6.入門 公共政策学 - 社会問題を解決する「新しい知」

公共政策学が生まれた過程、政策が生まれ活用される過程について解説してある。とてもさらりと読め、正に「入門」という内容だ。

モデルケースを用いた説明が多く、ポイントが押さえてられており、初心者にはかなり親切な設計になっている。反面、実践的な面によっており、学術的な面についてはあまり紹介されていない。「結局『公共政策学が存在する意味』ってなんなの?」という疑問は払拭できない。

学術的な面について理解を深めたい読者向けに、「次におすすめな本」が紹介されていればもっとよかった。

〇まとめ


今月読んだ内、一押しは『知的生産の技術』だ。内容を実践に取り入れるかどうかは別として、エッセイとして読んでも味わい深いだろう。

新書ばかり読んでいるので、来月は小説も読みたい。
カズオ・イシグロの他の作品を読むか、他の海外文学を読むかしたいな。

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