読書ノート⑥6月中旬に読んだ本

就活の合間に読んだ本の感想だ。
今回は1冊について長くなってしまったので、2冊だけ。

1.グレート・ギャツビー

2013年にディカプリオ主演で映画化された作品だ。
私は映画がとても印象に残っている。見終わったあと、興奮して、一緒に見た人とずっと感想を言い合っていた。

語り手であるニックは、アメリカのロングアイランドに家を借りる。隣に住んでいたのが、ギャツビーだ。
ギャツビーは毎週豪勢なパーティーを開く。

ギャツビーの富を慕って人々が集まる一方で、ギャツビーのことは誰も深く知らない。ニックはギャツビーとの会話を通じて、ギャツビーがニックの知り合いであるデイジーを長年想っていることを知る。
ギャツビーは、ニックにデイジーとの橋渡しを頼むのだが、デイジーの夫が怪しんで…というストーリーだ。

結論から言うと、ギャツビーの富は偶然手にしたものだ。
本当は貧しい家の出でありながら、エリート然とした立ち居振る舞いを身につけ、戦争で手柄を挙げ、ウォールストリートでのし上がった。
すべては、デイジーと再会するために。

ギャツビーのブランドは、はりぼてだ。
でも、デイジーの夫(エリート)からデイジーを取り戻したくて、自分の魅力をアピールする。

生まれながらのエリートに負けたくなくて、必死な感じ、すごくわかる。
私も今、就活のために東京に来ていて、同じような感情を抱いているかもしれない。

自分が手の届かなかったものを、当たり前に享受している人たちがいて、差に愕然とする。
地元に帰ると自分は自分らしくあろうと思えるのに、東京だからか、就活の場だからか、「負けたくない」という気持ちが顔を出して、ひりひりする。
慣れない競争に晒されて、いつの間にか、澱のように心を消耗している。

映画の影響で、私は読んでいる間ずっとディカプリオの顔がちらついていた。
イメージにぴったりな役者だと思う。
ギャツビーの「男の子」な感じ、ハンサムだけどどこかバタ臭い感じ、ゴージャスだけどパチモン臭い感じを、ディカプリオは見事に演じていた。

ギャツビーの富も、豪華さも、全部はりぼてだった。
しかし、だからなんなのだろうか。
ギャツビーがひたむきにデイジーを愛していたこと、いいやつだったことに何か変わりがあるのだろうか。

この作品は何度も翻訳されているが、私は村上春樹の訳を読んだ。
あとがきでは、原著が英語的に完成されており、他の言語に翻訳するのがとても難しいこと、
村上氏の訳も、原著のすばらしさを反映しきれていないこと、
原著も簡単な英語ではなく、かなり読み手を選ぶ作品であることが綴られていた。

私は英語が苦手で、それに関しては来世に期待、というスタンスでずっと生きてきたのだが。
原著の価値を理解することを目標に英語の勉強をし直すのもありかと思った。

2.このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年

サリンジャーの短編と、中編を収めた1冊。短編は『ライ麦~』の主人公を取り巻く前日譚と後日譚、独立した2編。中編は『ナイン・ストーリーズ』と『フラニーとズーイ』、『大工よ、屋根の梁を高く上げよ』に登場するグラース家の長男シーモアの物語だ。

グラース家の物語についてはまとめて感想を書く予定なので、ここでは短編にだけ触れる。

『ライ麦~』は中学生の頃に読んだっきりで、ろくに内容も覚えていない。今回の短編を読んでいて、「あぁ、そういえばホールデンってこんなやつだった」と思い出した。

中学生の頃の私は、ホールデンに感情移入できなかった。
基本的に、ホールデンは、「しょーもないやつ」だ。
名門校を退学になるし、親に連絡もしないでニューヨークをふらつくし、しまいには酒を飲んで酔っ払う。
「なんだこのいい加減なやつは。文句ばかりでなまけて。わがままばかり言うんじゃない」と思っていた。

今読んでみると、あー、いるいる、こういうやつ。仕方ないよねー、くらいには、ホールデンを受け入れられるようになった。

繊細で、ちょっと傷つきやすくて、誰もが「そういうものだから」と通り過ぎるところで「ちょっと待てよ?!」と立ち止まってしまう感性。
周囲と戦って自分を押し通すほどは強くなれなくて、ぷいっと反抗することで自分の気持ちを示そうとする幼さ。
誰もわかっちゃくれないさ、と言いながら、わかってくれる誰かをちらちら探している感じ。

決して、中学生の頃の私は、ホールデンみたくは振る舞わなかっただろう。
ホールデンみたいになったら、「優等生」の座から転落することが、わかりきっていたから。
「優等生」から転落するのが、怖かったから。

もしかしたら、私は、ホールデンが羨ましいのかもしれない。
ホールデンみたく、心のままに振る舞えていたら、もっと柔軟な考え方の人間になれていたのかも、と思ってしまう。

〇まとめ

謀らずも、「男の子」(「男性」じゃなくて、「男子」!)を扱った作品を立て続けに読んだ。
「男の子」って、いつまで経っても女子にはわからない部分があるよね…。

女子は女子で楽しいんだよ!という作品があれば、読みたいな。

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