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漫画の話『スティーブ・ジョブズ』〜最低な天才?最高の詐欺師?~


さて、漫画の話をしましょう。保険の話なんてつまんないしね。

今日紹介するのは、伝記作家ウォルター・アイザックソンの原作をヤザキマリが漫画化した、『スティーブ・ジョブズ』です。
ヤマザキマリはまあまあマイナーな漫画家でしたが、ローマ人の公衆浴場技師が現代にタイムトラベルする『テルマエ・ロマエ』で一発当てて有名になりました。原作の伝記作家のウォルター・アイザックソンは、アインシュタインやキッシンジャーなど、近現代の偉人の伝記を書くことで有名で、最近ではイーロン・マスクの伝記を書いたことで話題になりました。
この漫画はタイトルから分かる通り、Appleの創始者、スマホを生み出し人類の生活を変えた(良くか悪くかは議論の分かれるところ)、毀誉褒貶激しすぎる人物、スティーブ・ジョブズの伝記漫画です。しかし、ただの伝記ではありません。この伝記、ちょっとおかしいんです!

2巻表紙(Kindle版)


あらすじ

伝記作家ウォルター・アイザックソンは、ある日IT界の寵児であるスティーブ・ジョブズに呼び出され、自分の伝記を書かないかと言われる。

ジョブズ(髪の毛が少ない方)とアイザックソン(髪の毛が多い方)

図々しく、しつこく自分の伝記を書くように催促してくるジョブズに対し、アイザックソンは「そのうちね」と言ってとりあわない。しかし、ある日アイザックソンはジョブズの妻、ローリーンから、ジョブズがガンに侵され、余命も限られている事を聞く。アイザックソンは悩むが、最終的にはジョブズの伝記を書く事を決める。そして取材を進めていく中で、ジョブズの知られざる側面と、その複雑な人間性が明らかになっていく。

コイツ凄いクズだ!

まず最初になんですが、このスティーブ・ジョブズって奴は人間的には凄いクズです。自己中で、独善的で、他人に攻撃的で…この漫画で取り上げられてるエピソードだけでも、「親友と共同でやった仕事で、コッソリ自分だけ利益を多くせしめる」「恋人を妊娠させるが、絶対に自分の子供ではない、認知しないと言い張る」「悪質な産業スパイをする」等々…酷いもんです。

うーん…このクズ

とまあ、言い訳の余地がないシリーズ人間のクズって感じの行為を繰り返します。一応、偉人のような扱いでの伝記作品であるにもかかわらず、その主人公のクズ描写がこれでもかと描写されるせいで、読者に「これは憧れていいタイプの人間なのか?」という深刻な疑問を与えます。
しかしもちろん、世界的な企業を立ち上げたジョブズがただのクズとして描かれているわけではありません。例えば、共にApple社を立ち上げた無二の親友で天才的コンピュータエンジニアのスティーブ・ウォズニアック(愛称はウォズ)との出会いや友情もしっかりと描かれ、お互いに欠落している部分を補い合う尊い関係である事などが分かります。

悪魔と天使、これはベストパートナー
(デブがウォズ)

ただまあ、ジョブズはそのウォズも裏切ってこっそり自分だけ利益を確保しようとするんですが…。

ちなみにジョブズ容疑者は、
報酬はちゃんと半分ずつにしたと主張しており…。

しかし、じゃあこの作品でジョブズは単なるクズで、詐欺師なのかというと、それもちょっと違います。やはりある種のセンスやカリスマがあり、ジョブズなしには成立しなかったであろう製品やサービスが多々あるわけです。そう、つまりジョブズはただのクズではなく、凄いクズなのです!

天才?詐欺師?両方?

この作品は、ジョブズが天才なのか詐欺師なのか悩ませるようなエピソードで満ちています。個人的には、ともかくこだわりが強く、自分の美意識を良くも悪くも絶対視する人(ハッキリ言うとヤベー奴)だったんじゃないかなと思います。

合理性なんてクソだってのは同意する

ちなみにこの漫画で私が特に好きなのは、Apple製品以外でも今では一般的になった、アイコンの絵でアプリ等を識別するというアイデアを出したエンジニアのエピソードです。
このアイデア出した人、会議でジョブズにクソみたいなアイデアだと罵倒されます。

かわいそう

しかしその後、ジョブズが会議でいいアイデアを思いついた!と言い出すわけです。

病気かな?

手柄を横取りしようとしたのか、本気で自分が考えたと思い込んでるのか、そもそもそういった事を推測する意味があるのかと、色々考えさせられます。ジョブズの混沌とした内面を感じさせる素晴らしいエピソードです!でもマンガで読むのはいいけど、コイツと一緒に働きたくはないな…。

まとめ

ともかく、ジョブズが周りを引っかき回し、混乱させ、その中から新しい何かが生まれる。そんな不思議な世界を体験できる素晴らしい作品です。ジョブズを単なる優れた社長、もしくは逆に単なる詐欺師や山師だと思ってる人にこそ読んで欲しいです。
思った以上にクズでヤバい奴で、しかしなぜか爽やかにも感じる…そんな不思議な読後感を味わってください!

本日の漫画紹介でした!


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