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元TBS敏腕プロデューサーの角田さんは、本当に本音しか言わない人でした。

 9月中旬、『「中の人」から「外の人」へ 出世のススメ』(以下『出世のススメ』といいます)を発行しました。著者は、「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」など、多数のバラエティ番組をプロデュースしたバラエティプロデューサーの角田陽一郎さんです。
 著者の角田さんと本書の編集者は、どちらかというと出世や世渡りに興味がないタイプ。角田さんにいたっては、「だからこそテレビ局(TBS)を退社した」とも聞きます。
 どんな思いで『出世のススメ』をつくったのか。担当編集者に寄稿してもらいました。

文:佐藤美玲(日本実業出版社書籍編集部)

「圧倒的な力を持つ伝統的なもの」が負ける時代

突然ですが、私の趣味のひとつに西洋占星術がありまして、占星術が好きな人から見て、来年2020年は特別な時代の幕開けになります。

具体的には、1.大会合(グレート・コンジャンクション)が起こる年、そして、2.「風の時代」が始まる年になります。

ここは占いサイトではないですし、私も占星術師として食べているわけではないので詳細は割愛しますが、要約すると以下のようになります。

1.太陽系の中で最大といわれる木星と、次いで大きい土星が約20年ぶりに接近して、社会の枠組みが大きく変わる
2.これまで約200年続いた、土地や財産、権威をベースにする「地の時代」が終わりを告げ、知性や情報、対等をベースにする「風の時代」が始まる

つまり、「これまでの常識が2020年から通用しなくなる」といわれています。

これを書いている2019年10月7日現在、日本で開催中の「ラグビーワールドカップ2019」において、日本代表はアイルランドを含めた強豪を相手に3勝しています。

4年前、「ラグビーワールドカップ2015」で、日本が南アフリカに勝ったときは、「奇跡」「番狂わせ」などと言われましたが、いまや日本は、プール戦(一次リーグ)「プールA」の首位に立っている――。

占星術をかじっている私にしてみれば、権威ある伝統的チームと対等にやりあう日本代表の躍進は、新しい時代のきざしのように感じてしまうのです。

『出世のススメ』は「風の時代」を先取りした本

このほど発行された『出世のススメ』は2020年から始まる「風の時代」を意識した本です。「出世」という、古風ながらも刺激的な言葉をタイトルに掲げていますが、実は「風の時代」というトレンドを押さえています。

「地の時代」でよく見かけた立身出世を推奨する本ではありません。部長や社長といった権威を得るための処世術は1つも載っていません。

そもそも著者の角田さんも、編集を担当した私も、偉い人の前でだけ「仕事、頑張ってますアピール」をする人や、社内政治と根回しに大きなエネルギーを注ぐタイプが嫌いですし、クリエイティブじゃないと思っていますから……。

この本では、字面の通り、「世に出る」ことを提案しています。いっそのこと、「しゅっせ」ではなく、「でよ(出よう)」と誤読してもらってもいいのかもしれません。

「世に出る」とは、下表の右側を目指すことです。

出世 表

著者の角田さんは、本書の中でこう述べています。

 これからは『自分というフレーム』に固執しないことです。(中略)これまでは、あるフレームの中で揺るぎない確信を持っている人が『頭がいい』と思われがちでした。でも僕は、『いろいろなことが揺れまくるこのご時世、揺るぎない確信を持つ人ほど時代とブレるでしょ!』とさえ思います。
(『出世のススメ』prologue より)

私も同感です。土地、物、ブランド、お金といった物質的価値を重視したり、偉い人の前でだけ「てい」で頑張って勲章をつかんだところで、時代の波には乗れないし、真の幸せをつかめない気がします。

角田さんの「本音100%の言葉」は読み手を覚醒させる

「本音を言ったほうが何事もうまくいく」という考え方の著者・角田さんは、この本の中でも本音を吐きまくっています。

本書152ページ「『生きてるか?』と『ご活躍で!』の差」では、元上司に対してムカついた気持ちをストレートに表現していて、こちらが心配になりました。

とはいえ、建前だらけの世の中にあって、「建設的な本音」に触れることは不思議な化学反応を起こすようです。

私は、『出世のススメ』の編集作業をする過程で、今まで頑丈に鍵をかけてきた、心の中の「本音ボックス」の蓋が開いた気がします。

原稿を読んでいるうちに、幼少期の頃から現在に至るまで、言わないでおいたことや、見て見ぬふりをしてきた想いが、いろいろ浮かんできてしまうのです。

例えるなら、心理カウンセリングを受けることになり、臨床心理士から、「私にはこう見えますが、あなた自身はどう感じているのですか?」と質問されている気分でした。

自分の本音を、自力で引き出すのは難しい。そして、相手も本音をさらけ出していないと、自分の本音に向き合えない。

恐らく、そういうことなのです。

あなたには、「本音を引き出してくれる相手」がそばにいるでしょうか?

ひとつ言えるのは、家族や恋人、親友など、身近な人や大切な人が、あなたの本音を引き出してくれるとは限らないということです。なぜなら、「本音ボックス」の中に入れた想いが、その身近な人を起因とする悩みであったり、相手を大切に思うからこそしまい込んだ想いかもしれないからです。

目に見える「表面上の平和」に重きを置くのは、「地の時代」の価値観のように私は思います。

『出世のススメ』を読んで、自分の本音を見つめてみませんか?

目に見えない「精神的な平和」が何かをゆっくり見つめ、自らの意志で自由に生きる――、これこそ「風の時代」の価値観であり、『出世のススメ』が提案する生き方なのです。

【本の概要は以下のサイトをご覧ください。】


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