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二郎、行ってみた

毎日会社から帰ってくる時に見る行列、始めてみた日からずっと気になっていた。なにが人をそこまで寄せ付けるのか、なぜ行列ができているのに人はそこに並びに行くのか。

流石に、毎日通っていると行列ができている日だけではないということに気づき、次行列ができていなかったら行ってみようと心に決めたのが2週間ほど前。そして、今日、ついに並んでいる人が少ない状態で突入を決意した。

店の中に入ると右手に食券機。前の人が慣れた手つきでチャーシュー5枚の普通盛りを頼んでいた。僕の番になって、食券機を見てみると、普通盛りのチャーシュー2枚、5枚の選択肢と、大盛りのチャーシュー2枚、5枚の選択肢が。そして、大盛りのところに「※注意」の一言。「当店の大盛りは1kgを超えます。」とのこと。高校生時代に一度700gのつけ麺を食べて食べきれずに友達にあげた覚えがある。流石に1kgは食べられない。ということで、前の人と同じ普通盛りのチャーシュー5枚を頼むことに。

席についてから、ラーメンが来るまでの間、他の人のところに来るものを眺めていたら、それはラーメンではなかった。二郎くんである。あの量をこれから自分は食べるのかという恐怖心と、あれだけの量を食べることができるのかという好奇心が自分の中で拮抗していた。

そして、自分のところにも二郎くんが来た。目に入るのはただただ巨大なチャーシューともやしの山である。とりあえず、もやしの山とチャーシュー一枚に手をつけて、中にある麺にたどり着こうという魂胆だ。これだけの量があるのだから、あまり食べるペースに緩急をつけるのはご法度だということは本当が悟った。それゆえ、一定のペースで淡々と食べ続ける。店に入っている他の客も淡々と食べている。聞こえてくるのは、新規の客が唱える「ニンニクヤサイオオメ」や「ヤサイカラメ」などという呪文と麺をすする音だけだ。

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半分ほど食べただろうか、お腹の方から黄色信号が発されてきた。もう入りませんと。といってもまだまだ半分残っている。小さい頃からずっと食べ物を残すことだけに関しては厳しく育てられて来たため、残すのはout of 眼中。一旦休憩を取って、水を飲もう。この段階で気づいた。二郎くんは友達ではない。敵だ。ここは戦場、倒すべき相手は二郎。少し休憩を挟んで、お腹の整理をしたらまた戦えるようになった。

また、淡々とただ食べるだけの作業を開始した。そう、もはや目の前にある麺とチャーシューを消費するだけの「作業」と化していた。自転車で思いっきり漕いだ直後にこれほど重いものっていうのは食べるもんじゃない。そんなことを思いながらもペースを落とさずに食べ続ける。

麺を食べきった。残るはチャーシュー2枚。注文する時に普通盛りのチャーシュー2枚にしなかった自分を肉む。あの時に100円ケチっていれば、もう完食していたのに。そんな嘆いてもだれも助けてくれるわけではないし、過去の過ちは取り消せない。食べるしかない。

そんなこんな自分の中で葛藤している間に、自分の前に入ってきた人を始め、自分の次に入ってきた人までもが「ごちそうさまでした」と颯爽と店から出ていくではないか。奴ら、強い。奴らが感触できて俺にできないはずはない。などと、意味のわからない理論で士気を上げた。

ここからは頭脳戦だ。チャーシューを小さく切って少しずつ食べれば、そこまで難なく食べられるのではないか。かぶりつくから歯を使って食いちぎるなど無駄なワンクッションをいれるから、食べるのが難化しているのではないか。そう思い、チャーシューを小さくしてから、食べることに。これが意外と良策であった。あっという間に2枚のうち1枚は跡形もなく消えた。

残る敵はチャーシューあと一枚。これも前回のように小さくちぎって食べれば。。。とちぎって食べる進むのだが、最後のひとかけら、行ってしまえばラスボス。脂の塊が登場した。

どうしてラスボスとか強いやつって最後に出てくるんだろう。最初に倒しておけば人生イージーモードなのに。ましてや、回復アイテムのない状況で、レベルアップも見込めないんだったら万全の状態の時にラスボスは倒しておきたかった。だが、やはりラスボスはラスボスそこにいる。流石に食べたものを店の中でリバースするのも帰宅途中でリバースするのも、というかリバースする行為自体がナンセンス。絶対にしたくない。ただ、ラスボスを口にしたらそれも有り得そうで怖い。そんなこんな考えること15秒。これを食べ切らないと、自分の中の何かが壊れてしまいそうな気がしたので一口でパクリと。

勝利だ。この戦、二郎くんに勝った。

お椀をカウンターに置き、台拭きで自分の居た場所を拭き、「ごちそうさまでした」と一言。颯爽と店から出ていった。

気分はどうですか?とか聞いてくる人が居たらそこで出てくるのは多分、

「脂肪寸前ですね。」

だろう。

帰り道の自転車の上で、普段だったら目の前に自転車がいたり、信号を渡りたい時とかははりきってペダルを回すことができるのだが、二郎くん戦のあとは流石に戦意喪失。もうこれ以上戦える状態ではなかった。ただ、ちょっといい感じに消化されてくると、もう一度食べたいなぁという感情が芽生えてくるのが不思議で仕方ない。人間、限界に挑戦するのが好きなのかなぁと思った火曜日の夜でした。

追記:聞いた話によると、僕の行ったところは二郎系の中でも量が少ない方らしい。つまり、この世の二郎系に行く人間みんなこれ以上をぺろりと平らげているらしい。最後の方でもう一度食べたいなぁとか言ってはいるものの、多分向こう1ヶ月は挑戦することはないと思います。はっきりいって、厳しすぎる。

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