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金木犀

「金木犀の香りを嗅ぐとあの頃を思い出す。」そんな冒頭で始まる小説、あってもおかしくないなって思いつつ、自分でもそんなちょっとエモいかんじのエッセイ書いてみたいとも思っている。

今年の秋の前に金木犀の香りを嗅いだのは6年も前、2013年にまで遡る。それもそのはず、2014年から2019年までは一度として日本で「秋」という季節を過ごしたことがなかったのだから。

ずっと記憶の底に焼き付いているのは、高校一年生の秋、雨の日の午後、1年7組では生物の授業が行われていた。あのころはカフェインの味も知らなかったから、授業中は基本的に眠くなったらなす術なく、居眠りしてしまっていた。そんな、うとうとしてる時に不意に金木犀の香りが外から漂ってきた。
その時に、今まで意識してなかったものが意識の届くところにふと現れる不思議な感覚に包まれた。

今年の秋に金木犀の香りを嗅いだ時に、6年前のあの時と同じ感覚に包まれた。そして、その時に久しぶりに金木犀の香りを嗅いだことに気づき、それ以来、ずっと本能的にあの香りに遭遇したがっている。あれは、自分から求めて得るものではなくて、向こうから不意にやってくるのがいい。

もうすでに10月も末期に入って、東京にある金木犀の木はその花をほとんど散らしてしまっている。次に金木犀の香りを嗅ぐのはいつになるのだろうか。

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