ニンパクト恐竜

エメツ、日本大陸の起源とニンジャイアント・インパクト仮説

The origin of Emetzu and Japan Continent: Nin-Giant Impact

NJRecalls開発チーム @NJRecalls *

 「ニンジャスレイヤー」シリーズ第4部「エイジ・オブ・マッポーカリプス(以下AoM)」においては、エメツと呼ばれる黒い結晶体による様々なオーバーテックや生体への効果が描写されるが、その起源は謎である。一方で並行して掲載されるニンジャスレイヤープラスのコンテンツにおいて、第1部〜第3部の舞台が「日本大陸」であったことが示唆され、またニンジャおよび人間と恐竜が同時期に生息していたことを示唆する壁画の描写など、現実世界との差異が明らかになってきた。本稿ではこのような現実世界との差異に対し、ニンジャスレイヤー世界の過去に「ニンジャイアント・インパクト」と呼ぶべき天体衝突があったとの仮説に基づいた説明を提供したい。

*: https://twitter.com/njrecalls
Keywords: AoM エメツ 日本大陸 ジャイアント・インパクト

背景

エメツはどこから来たのか

 「エメツ」の単語自体は「エメツ・ニンジャ」すなわちザ・ヴァーティゴが最初のものであるが、単独の「エメツ」としての用例はAoM予告編、そして具体的な使用場面はAoMシーズン1からとなる。その応用範囲は広く、コトダマ空間感知能力のブースト、AoM世界に欠かせない長距離移動手段ポータル、反重力デバイス等のオーバーテックに使用されている。

 エメツの由来は複数言及されている。地球にも希少ながら存在しており採掘されていたもの、アポロ11号の到達により発見された月面のエメツの他に、作中では人間の生命と引き換えにエメツが生成している様子も描写されている。では地中や月面のエメツも人間由来なのであろうか?との疑問が生じるが、少なくとも月面のエメツがそうであるとは考えにくい。

日本大陸とは何か

 「日本大陸」の単語は「インタビュー・ウィズ・ニンジャ」中で出てきたものであり、その中で著者の一人フィリップ・N・モーゼズは「スケール感を意図的に壮大にしている」と語っている。その言葉が示すように、これまでの作中描写ではネオサイタマ〜キョート間の飛行機が7時間であるなど、確かに大陸レベルのサイズであるようだ。

 作中の日本が大陸サイズであるのであれば、他の大陸との位置関係や地球の形状も現実のものとは異なっている可能性が出てくるが、AoMシーズン3のカナダに関しては現実と近い地理描写がなされている。モーゼズは趣味であると述べているが、地球上で日本だけにこのような拡大がなされている理由はなんであろうか。

恐竜はなぜ滅亡したのか

 ニンジャスレイヤープラス「バトル・オブ・フォート・ダイナソー」では、古代ニンジャ神殿遺跡の壁画として恐竜とカラテを繰り広げるニンジャという正気を疑う描写が登場する。ステレオタイプ的原始人をコミカルに描いたコンテンツで、恐竜と原始人が同時期に生存しているという描写は少なくないため、その延長として挿入されたお遊びであるという見方もできる。しかし同エピソードではハイドラの由来も恐竜の遺伝子にあることが述べられており、恐竜とニンジャが同時代に並び立つ食物連鎖の頂点であったという描写はそれなりの意味があろう。

ニンジャイアント・インパクト(ニンパクト)仮説

 以上のことに統一的な説明を与えるにあたり、筆者が導入した仮説がニンジャイアント・インパクト仮説(以下ニンパクト仮説)である。ニンパクト仮説ではまず、エメツの起源を地球外に求め、エメツそのものもしくは多量のエメツを含む天体がジャイアント・インパクト説と同様に地球に衝突したと仮定する。この衝突により直接的または間接的に巨大な陸塊が誕生し、日本大陸となる。そして、人命を犠牲に生み出すことのできるエメツは、逆に未だ人ではない生物に人に類する情報量を与え、人類そしてニンジャの誕生を促すことも出来たのではないだろうか。そして、恐竜と人類が同時期に生存していたとするならば、恐竜絶滅の原因とは即ちニンジャとのカラテ生存競争に敗れたからに他ならない。以下に本過程を詳述しよう。

図1. ジャイアント・インパクト説とニンジャイアント・インパクト仮説の比較
 A. ジャイアント・インパクト説によれば、月の起源はかつて原始地球と火星サイズの原始惑星が巨大衝突を起こし、弾き飛ばされた両者の破片が集合したものである。B. ニンジャイアント・インパクト仮説はこれに擬えたものであり、エメツを高濃度で含有する小惑星の衝突により日本大陸の生成、エメツの局在化、月への降着などが起きたと仮定するものである。

エメツの由来とその局在

 作中で人間の死、魂的な存在と引き換えにエメツを生成できることは示されている。それ以外のエメツの成因はエテルの風といった未だ抽象的な概念に止まる。いずれにしろ、人間の死のみがエメツの成因であるならば、人類誕生以前にエメツはありえないし、月面にエメツが存在することの説明にはならない。一方、地球の外部から吹き付けるエテルの風が地球・月の表面にエメツを発生させているとすればその存在は説明できるが、そのままでは地球の表面にも大量のエメツが存在するはずである。ここで、ニンパクト説の基となったジャイアント・インパクト説によれば、月の構成成分の4/5は地球に衝突した天体由来である。ニンパクトの際も同様の過程が働くことにより、ある程度月にエメツが局在することを説明することができるであろう。

 さらにニンパクト説であれば、エメツが鉱石のように採掘されている理由を説明できる。例えばAoMシーズン2ではエメツがエッジカム火山から産出されていたことが述べられている。

 表面に降着するだけではなく、衝突による高温でマントルのような地球深部の成分と一体化したとするならば、鉱石のように火山活動のあるところで産出することを説明できる。一方で月においても、現在「月の海」と呼ばれる暗い色の地形は噴出した溶岩の冷え固まったものであるから、エメツを含有していておかしくはないであろう。

人類とニンジャの誕生

図2. 人間性の消費によるエメツの生成とエメツの消費による人間性獲得
 オマーク、オヒガン・ボムなどにより人間の持つ情報量を消費することによりエメツが生成できる(A)とすれば、逆にエメツを消費することにより人類以前の存在が人類となる過程を考えることができる(B)。その発展として、人間がさらにエメツを消費することにより人間以上の存在、すなわちニンジャになる過程もまた考えることができよう。

 人間が人間たる情報量を失う時にエメツが生成するのであれば、逆にエメツを消費することによって未だ人ではない生物が人になるという過程を考えることができる(図2)。そして、人がさらにエメツを摂取することも考えられるが、例えば作中でもタキはエメツを含むドラッグの摂取によって、一時的に生身でネットワークに接続するという人間以上の能力を得ている。ここで、生身でネットワークに接続する能力を持っていた者はもう一人存在する…ニンジャであるマスラダその人である。

 このように考えれば、エメツのもたらした「魂の情報量」とでも呼ぶべきものが、人類の出現さらにはニンジャの誕生を促した可能性は十分あるのではないか。当然ここには、エメツテクノロジーが一般化したAoM世界でもエメツを摂取してニンジャ化している人類が見られないという問題が存在する。

日本大陸の生成

 ジャイアント・インパクト説に準えてはいるが、ニンパクト・イベントがもし生命誕生後であれば、その規模が生命を滅ぼすほどであったことは考えにくい。よって、ニンパクトによる影響はジャイアント・インパクトよりは小規模であり、エメツ小惑星の衝突は惑星の分裂までには至らず、地球とすでに存在していた月に破片を降り注ぐに留まったであろうことが推測できる。

 そこで思い起こしたいのは、ニンジャは世界各地に広まっていたもののその起源、カツ・ワンソーの出現は日本と推定されることである。

 もしエメツを含む小惑星がそのまま陸塊になったような地形があれば、そこはニンジャの出現を促す土壌になりうるのではないか。あるいは、エメツを含む小惑星は高温で融解し地下のマントルと一体化したものの、地殻の傷から噴き出した洪水溶岩のような地形が日本大陸を形成したという過程も考えうるであろう。

 作中世界での人類の誕生の地は明言されていないが、現実世界同様人類の起源がアフリカにあるとするとこれは一見矛盾に思える。しかし、人類に進化しうる類人猿とエメツ両方の存在が人類誕生に必須だったとすれば、人類が誕生したのはエメツが高濃度であった地点ではなく、人類の原種となった生物が生息していた地点であったということが考えられる。そして、人類が長い旅の果てにエメツを高濃度に含む陸塊に到達した時点で、原初のニンジャ「カツ・ワンソー」が誕生したのではないか。

図3. 人類の誕生とニンジャの誕生
 日本大陸が高濃度エメツ地帯であったとすれば、人類からニンジャが誕生する過程に寄与していた可能性は高い。人類の基となる類人猿は現実世界同様アフリカに分布していたとしても、その地のエメツ濃度ではニンジャに至らずに世界に分布を広げる過程で日本大陸に行き当たったことが考えられる。

恐竜の滅亡

 すでに述べたように、作中世界では恐竜と人類・ニンジャは同時期に生息していたことになる。であるならば、現実世界でのK-Pg境界に相当するような白亜紀末期の巨大衝突イベントはどう考えればいいのであろうか。

 一つの可能性は言わずもがな、K-Pg境界衝突イベントこそがニンパクトであったとするものである。この仮説によれば、巨大衝突そのものでは恐竜の絶滅は起こらなかったものの、地球上に供給されたエメツによって人類そしてニンジャが出現したことにより、ニンジャとのカラテ生存競争に敗れた恐竜は絶滅に追い込まれたであろう。さらに、人類の進化そのものをエメツが加速したとするならば、現実世界とは異なり人類と恐竜が同時期に生存していることもありうるのではないか。

図4. ニンパクトと恐竜絶滅の関係
 ニンパクトにより人類、ひいてはニンジャが誕生したのであれば、恐竜絶滅の原因となった巨大衝突はニンパクトであったと考えることができる。新たなカラテ食物連鎖の頂点ニンジャが出現したことにより、恐竜は絶滅に追い込まれた。 

今後の発展と課題

 ここまで見てきたように、地球-月系にエメツを供給した巨大衝突、ニンパクト仮説を考えることにより、人類の進化、日本大陸の生成、恐竜と人類の生存時期などに統一的な説明を与えることができた。しかしながら、この仮説は魅力的な示唆と共に未だ説明のできない課題ももたらすものである。いくつかの点に触れながら本稿を終えたい。

ギンカクとキンカク

 ジャイアント・インパクト説では、巨大衝突を起こした火星大の天体の原始惑星核は地球と月の核と一体化したとされている。もし、ニンパクトの衝突天体がエメツの塊とでもいうべき小惑星だとするならば、地球と月の核にも巨大なエメツ塊が一体化しているかもしれない。ここで、本論文の主張するようにエメツが「魂の情報量」を持つことができるのであれば、それはネットワークにおけるサーバーのようにも機能しうるのではないか。これが、キンカクやギンカクと呼ばれるものの正体ではないのか?AoMで明かされたように、マルノウチ・スゴイタカイビル地下に存在した銀のオベリスクと同様の「端末」が地球各地に存在しているのはその末端が地表近くに出ているものではないのか?

 この考察はギンカクとキンカクでなぜ機能が異なるのか、等のさらなる疑問を生むため、今後の重要な課題となろう。

地球外エメツの由来

 地球・月系のエメツがニンパクトの衝突天体であるとしても、ではその衝突天体のエメツが何に由来するのかという問題は解決されない。そのような高濃度のエメツ塊が自然に形成されるものだろうか?ここで思い出したいのは第3部最終章のヨロシサンによる交信計画である。

 ヨロシサンが交信しようとしていたのは、エメツ小惑星を送り出した何者かなのであろうか?そして、人間を消費してエメツを生成できるという事実からはさらに恐ろしい仮説を導くことができる。外宇宙から飛来したのはエメツそのものではなく、エメツを生成しうる「魂の情報量」を持つ知的生命体が大量に乗った宇宙船ではないのか?この宇宙船が地球に衝突すると同時に「魂の情報量」がエメツに変換されたとすればどうだろうか?

 ニンジャの起源と外宇宙の関係が暗示されていることはそれ自体恐ろしいことであるが、ニンパクト説の提示する可能性もまたその恐ろしい可能性をさらに拡げるものである。

参考文献

ニンジャスレイヤー エイジ・オブ・マッポーカリプス

シャード・オブ・マッポーカリプス(1):磁気嵐の晴れた世界で

インタビュー・ウィズ・ニンジャ PLUS版(5)

【バトル・オブ・フォート・ダイナソー】 #5

インタビュー・ウィズ・ニンジャ PLUS版(16)

ニンジャスレイヤー ネヴァーダイズ (不滅のニンジャソウル # 9)


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