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いきなりステーキ・サティスファクションタウン店に行ってきた

人の気配のない荒野を俺は歩き続ける。ランチタイムより少し早い時間に出たからか、辺りはこの町がクラッシュタウンかバーバラタウン、或いはロットンタウンと呼ばれていたころを思わせる、息詰まる静けさ。風の中を歩きながら、俺の胃袋が高く鈍いハーモニカの音を鳴らす。やがて俺は目当ての建物に辿り着いた。飢えたデスガンマンたちが満足を求めて集う地獄の一丁目、「いきなりステーキ」。

注文はステーキ450 gに、追加でタン4切れ。ドリンクがサービスだと言われた。ここで「ミルクでも貰おうか」などと言おうものなら余計なトラブルを招きかねないので、普通にコーラを注文。サラダとスープがすぐに出てきたが、肉が出てくる前に平らげてしまった。こんなんじゃ……満足……できねえぜ…………(量的に)

タンとライスが出てきて、その少し後にはステーキも出てきた。鉄板の上で現在進行形で焼かれる肉のボリューム感、香り、そしてジュージューという音が俺の視覚、嗅覚、そして聴覚をたちまちライフ0にした。ワンターンスリーキルゥ……こいつはすげえ!

食べ方の説明が必要か訊かれたので、「お願いします」と二つ返事。相手の墓地のカードなどの公開情報を確認しないロットンのようなやつはこの町では生き残れない。ステーキはほどんど焼けてない状態で供され、好みの焼き加減にして食べるという。鉄板は頼めば再加熱してくれる。

俺は早速、表面しか焼けてないステーキをひと切れ箸で掴んだ。するとその肉は挑戦的な笑みを浮かべて俺に語りかけてきた。

「だが俺はレアだぜ」

えらいハリキリボーイがやってきたもんだ。俺はまだ全然焼けてない肉に塩をかけ、ワサビを大量に付けて口へ運んだ。うまい。ステーキという食べ物は理屈抜きでうまい。加えてこのワサビだ。ワサビとステーキの相性は恐ろしく良い。ステーキが不動遊星ならワサビは十六夜アキ。そんなことを考えながらステーキを半分ほど食べ終えたころ、ここへ来る途中はハーモニカを奏でていた俺の胃袋が、変な弱音を吐き始めた。

「俺は満足だ……」

違う!お前がこんなことで満足するはずがないだろう!昔と変わってしまった胃袋にパンチを叩き込んでいったん気絶させ、俺は残りのステーキと対峙した。俺は醬油ベースステーキソースのポットを取り、鉄板にたっぷりと注いだ。肉をソースにこれでもかと浸し、口に運ぶ。うまい。ステーキと醬油ベースステーキソースの相性は恐ろしく良い。ワサビが十六夜アキならステーキソースは牛尾哲。そんなことを考えているうちに俺の胃袋もすっかり調子を取り戻した。

「満足させてもらおうじゃねえか!」

俺はあっという間にステーキを平らげた。ステーキソースに浸ったコーンもうまかったが、食べるのが少しめんどくさかった。タンは結構な厚みがあり、やはりうまかった。定食で2千円くらいする仙台の牛タンほどのゴージャスさはないが、タンという食材のうまさを堪能することができ、満足した。肉を平らげた後はアイスが食べたくなる。俺は近くのスーパーでしろくまを購入し、帰路についた。

「これで……満足したぜ」

明日からはまた仕事。どうやったって俺たちは社会のシステムから逃れることはできない。だったら休日で満足するしかねえ。いつの日かこの無の煉獄を越えた先に、俺はまた胃袋からハーモニカの音を鳴らしながら「いきなりステーキ」に辿り着くだろう。

「「俺たちの満足はこれからだ!」」

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