NewsPicksに、サブカルク◯野郎が半年勤めてわかった真実の話

遅くなりましたが、明けましておめ…的なことを書こうと思ったまま、2月になってしまいました。
遅まきながら、初心を忘れないよう、昨年の仕事を振り返ってみたいと思います。

2018年5月にNewsPicksに勤めて、昨年末で約半年が経ちました。
濃かったし忙しかったので、なんだかもうずいぶん長いこといる気がします…

(ピースオブケイクを辞めるにあたって退職エントリー)

主にクライアントワークの編集仕事をやっています。

社内に"さよなら、おっさん" 的なことを言う高圧的な人は、まるでおらず、みなおもしろく優しく、クレバーな人たちで、楽しく過ごしています。

経済やビジネスの潮流を眺めつつ、それよりも、ジャーナリズムと編集の違いについて、思うところがあったので、書いてみたいと思います。
(ビジネスにもジャーナリズムにも疎い人間が書いているので、ビジネスごりごりの人や、ジャーナリストの人は生暖かい目で読んでいただけますと…)

●ジャーナリズムと編集の違い

ジャーナリストの映画とかわりと好きで見ています。

編集者とジャーナリストってスキルセットが近いと思うんです。
企画、取材、執筆、紙面作りなど。

でも、自分のことをジャーナリストだと思ったことは1秒もないですし、
ジャーナリストになりたいと思ったこともないです。
というか、圧倒的になれない気がする。

これ、格闘技を観るのは好きだけど、
格闘技をやりたいと思ったことはない、みたいな感じに近いです。

圧倒的に何かが違う。
この違いはなんだろうと思いながら半年ぼーっと考えていました。
圧倒的な行動原理の違いがあるな、と。

それでわかったのが、追っている「真実」の違いです。
これは僕の見立てなのですが、真実には2つの種類があります。

●1つ目の真実

一つ目の真実は、「深掘りした事実」のことです。
ジャーナリズムの足場は、圧倒的にファクトかなと。

「ゴンさんが不正をしていたらしい。お金をたくさんくすねたらしい」

こういう事実が明るみに出たとします。

でも、それを深掘りすると、裏に黒幕がいたらしい、共謀者がいたらしい、
お金をプライベートに使っていたらしい、別の会社につぎ込んだらしい、
等々、新しい事実が出てくるわけです。

こういう世間に知られていない「隠れた/隠された事実」を、
現場に行き、人脈をたどり、聞き込み、文献にあたり、裏取りつつ掘り出す。

そんなふうに真実を探るのが、ジャーナリストの行動原理ではないかなと。(僕はジャーナリストじゃないので、観測による仮説なんですが)

●2つ目の真実

一方、もうすこし自由度の高い真実が、「事実(事象)の個人による解釈」です。

「アレは私にとって、こういうことだったんだ」みたいなことです。

先ほどの例で言えば、

「ゴンさんが不正をしていたらしい。お金をたくさんくすねたらしい」

これに対して、そもそもなぜゴンさんが不正をしたいと思ったのか、
その振る舞いを周りの人々はどう思っていたのか、みたいなことなんです。

すこし話をズラしますが、
この「ゴンさんの不正」という事実の解釈には、個人的に全然興味がわかないです。隣のクラスで給食費が盗まれたのと同じぐらい興味がわかない。(いやゴンさんの話ですが)

それよりたとえば、
とある毒婦が、幾人もの男を虜にして、次々と自殺に見せかけて殺めたらしいという事件に対しての解釈のほうが、僕にとっては興味深いわけです。

殺された男にとって、彼女はどんな存在だったのか。死ぬときにどんな思いで死んだのか、など。そういう真実のほうが興味があります。

これは僕と同じような興味の人もいるわけで、
とある毒婦をモチーフにした本は、フィクション、ノンフィクションを問わず、軽く10冊以上出ているのではないでしょうか。

さらに身近な事柄から導き出される真実もあります。

たとえば、とある作家が、
「彼女の耳は、美しい貝殻そのものだった」
とか、
「冬眠から起きた春の熊のような女の子が」
などと書いたとします。

明らかに事実ではないけれど、きっとそうだったのかもしれないな、と思わせる本質を捉えたメタファーがある。
つまり解釈に真実味がある。

さらに「深刻になることは必ずしも、 真実に近づくことではない(キリッ」みたいなことを書いたりします。

これはもう事実の解釈というか、事象の解釈です。

こういうのに自分はグッときます。
この種の真実が、自分を捉えて離さないものです。

●2つの真実を腑分けしてみる

深掘りした事実を「客観的真実」
事実の個人による解釈を「主観的真実」
便宜的にそう呼ぶことにします。

ジャーナリストに向くのは、悪いところを見つけるのが得意な人で、
編集者に向くのが、いいところを見つけるのが得意な人である、

と昔、NewsPicks CCOの佐々木紀彦さんが話しているのを聞いたことがあります。(原典は不明)

調べたら、以下のトークショーで言ってらしたっぽいですね。

自分は東さんの「弱いつながり」の連載の担当編集をしていたことがあったので、その流れで聞いていたのでしょう。懐かしや。

これはつまり、
客観的真実を見出すには、ジャーナリストとして「疑う力」が必要だということだと思います。

ジャーナリストの追う客観的真実は、
事実ベースだからこそ、原稿確認を必要としないんですよね。
見出しや文脈の構成による演出はあっても、主観的な解釈は、記者さんの文章ではご法度だったりします。

「疑う力」というと聞こえはよくないですが、
言わば虚偽(隠蔽・改竄・捏造・誇張)を「穿つ力」です。
(穿つは掘るみたいな意味で、「穿った見方」は本来、
 物事の本質を見通すみたいなポジティヴな意味らしい)

客観的真実というのは、事実ベースですから、基本、「存在する」んです。
物なり、記録なり、証言なり、が存在する。

でも主観的真実は、基本的に現実には「存在しない」。
人の頭の中にしか存在しない。

たとえば、

1行目:病室の窓から見える木から、葉っぱがすべて落ちた。
2行目:それが私の死を暗示しているように思えた。

1行目が事実で、2行目が私だけの真実です

でも、この「自分の死の暗示」は私の頭の中にしか、存在していません。
「存在しない」ものを、他者に伝えるには、表現(表に表す!)が必要です。

この主観的真実を見出すのに、編集者の「いいところを見つける」のが得意な人がなぜ向いているのか。その能力ってなんなんだろう、と考え続けていたら、もしかしたら「信じる力」のことかな、と最近、合点がいきました。

編集者は、著者や取材対象に対して、耳を傾けて、繊細で壊れそうな当時の感情や記憶を取り出す手伝いをしていきます。

僕は小説家の人が書き進めるそばにいるとき、「暗闇の中をひとり手探りで歩いていく光景」をイメージします。

編集者は、その孤独な冒険の側杖です。

「なるほど。わかります。わたしあなたの『表現』を信じます。こっちに道があるようです。こっちにあることをもっと教えてください」

といった具合です。
そして、その表現された主観的真実を、その解釈の行方を辿っていく。

名作『わたしを離さないで』を著し、ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロは、「小説を書くということは、実際に起こらなかったことを思い出すようなものだ。その意味で、小説を書く方がノンフィクションを書くよりもはるかに難しい」と述べています。

主観的真実を辿った先の、究極的表現の一つが、自分の敬愛して止まないカズオ・イシグロやポール・オースターなどの御業なのだと思っています。


「何を信じて、何を疑うか」。そんなことを、NewsPicksのジャーナリストのお仕事を眺めながら、逆説的に気付いたのでした。

もちろん、ジャーナリストも編集者も、
両方の真実を高いレベルで追わなければいけない場面のほうが多いんですが、軸足がどちらにあるかで、ずいぶん指向性が違うなと。

●経済や広告ってどうなのよ

さて、タイトルにサブカルク◯野郎と書きました。
まあ、僕みたいな半端もんが、サブカルを名乗るのはおこがましいみたいな気持ちはありつつ(14歳のとき、エヴァンゲリオン初回を、GAINAXの新作だからという理由たけでVHS録画し、攻殻機動隊の押井守監督の映画を劇場公開初日に並び、高1でコミケに行き……みたいに基本、小説·漫画·映画·音楽みたいなカルチャー周りどっぷりで生きてきたオタクであるものの)。

つまり経済が苦手で、広告がもっと苦手でした。
そんな自分がなぜ経済メディアである、NewsPicksに入ろうと思ったのか。広告仕事をしているのか。

いや、昨年NewsPicksに移ることを話した、
たいへん信頼を寄せている編集者に、
「たいへんだね。全然好きじゃないでしょうに」
と言われたんですよね。

僕からすると、わりと筋は通ってるんですが、
あ、そういう風に見えるのか、という気づきでした。
まあ、確かにカルチャーどっぷりで、
小説とかやってたのに、なんで経済なのと。

●いまNewsPicksがおもしろい

これ一番の理由です。

実は、直前までNewsPicksに行こうと思ってなかったのに、
知人のツテで、あれよあれよという間に、入ることになりました。

おもしろそうな人が多いのと、
あ、今NewsPicksが激アツフェーズなんだな、
ということをそのときに確信したからです。

NewsPicks/Uzabaseに興味がある人はこちらでも見てください。

ちなみに、もし仕事に興味のある人はご連絡ください〜。
(めっちゃ人募集してます、退屈しないかと)

僕の部署の編集者募集はこれです。
(トップ画はうちの部署の人だよ)

さて、なんで今NewsPicksがおもしろいのか。
その核心は今、経済やビジネスがおもしろいからだと思います。

●経済がおもしろくなってきた理由

もともと僕は(政治や)経済に興味が持てませんでした。

なぜか。

それは、自分にとって「本質的」だと感じられなかったからです。
既得権益に群がるのも、大企業に与するのも、投機的マネーゲームもなんだかつまらない。むしろダサい。

だけど、日本が不景気な中、ITによって産業構造が変わってきたこと。
仮想通貨ができて、貨幣のフィクションがすこし解体されてきたこと。
キャッシュレス決済、AIによる与信など、フィンテックがいよいよ勢いづいていること。
などなどが要因で、ダイナミックなことがたくさん起きている。

経済の主役が、大手レガシー企業から、新興のICT企業、
そしてベンチャーやメガベンチャーに移り変わっている。
なんならますます加速しそうな勢いです。

いま若い子が世界を変えようと思ったら、
小説も書かないし、音楽もやらない。
アプリをつくったり、起業をしたりするほうが、リアルだなと感じています。
(漫画を書いたり、動画を撮ったり、ヒップホップはあるのかも)

実際、いまの自分より年下の起業家は、本当にクールです。
(うちの会社のCEOである梅田さんも僕よりすこし年下!)

おもしろいミッション・ビジョンをガチで掲げる、リアルなヒーローがめちゃくちゃいる。

もちろん、昔も経済やビジネスにおもしろいこと、ダイナミックなことはあったのでしょう。だから僕がビジネスに疎かっただけ、ということもあると思います。

でも、この潮流は錯覚なのかなと思って、数人の信頼している経営者に聞いたら、近しい意見を持っていました。
ただの勘違いではなさそうだなと思って書いています。

●広告がおもしろくなってきている(気がする)

広告については書いてみたんですが、なんだか長くなったのと、
まだ広告のことを理解しきってないので、割愛します。
代わりに、手前味噌にはなりますが、自分の仕事で説明します。

昨年の半年(6月から12月)で、
スポンサードの記事を25本作らせてもらいました。

個の時代、私の時代、共感の時代、
ポストトゥルースの時代だからこそ、
経済媒体でも自分のやり方が通用するかな?という挑戦でもありました。

1000Pickいく記事作れたらいいなあと思ってたら、
25本の平均が1024pickで、中央値が880pickだったので、
まずまずワークしたかなと。

1000Pick以上の担当記事はこちらです。

印象深いのは、上海と杭州にいって、
アリババを取材させてもらったことなんですが、、

なんと、あれだけ手をかけたのに1000Pick行かなかった。
ぐぬぬ、、難しい。。

ちなみにPick数というKPIは、わりと信用しています。

というのも、スポンサード記事は、アプリ上で誘導による露出を一定数かけるので、母数となるインプレッション数は基本一緒です。
そのうえで、コメントしたい、あとで読みたい、と思ってPickしたなら、読者への影響力を示す指標として、頼りになります。

もちろん1000Pickいかなくても、
個人的に手応えを感じた記事はたくさんあります。

ただ、狭く深く刺しにいって、1000Pickとれたものもあるので、
内容に自信があるのに、Pickされないのは、
ターゲッティングを含めた企画と、タイトル周りの編集が主な問題ですね。
これからの課題です。

あとは、HOPEという紙媒体を2号作らせてもらいました。

一部、こちらでも読めます。

敬愛する青木耕平さんの原稿をこういう形でまとめられたのは、喜びそのものでした。

振り切った仕事を、よい仲間、すばらしいクライアントとご一緒できてよかったです。

自分は最初からクライアントワークをやってたら、
こうはできなかったろうし、こんな風にチームで仕事ができるのは、
醍醐味があって、とても気に入っています。

ご一緒してくださったみなさま、ありがとうございました。

●副業ってほどでもないですが

あとは、cakes時代からのあれで、
以下引き続き、フルスイングでご一緒しています。

メンヘラハッピーホーム@cakesの連載担当編集
(カリスマ安楽椅子探偵スイスイさんを今年も信じ抜きます

スープレッスン@プレジデント社の書籍編集
(有賀薫さんの鍋イベント、今度あるよ!

あとは割合的にはほとんど、稼働しなかったですが、
こんなお仕事もさせてもらいました。

映画「響」劇中小説の編集
(神田さん、菊池さんおげんき?

心のベストテン@CINRAの連載担当
(柴さん、大谷さん、ことしもよろしくお願いします〜

さて、なにかご一緒できることあれば、
気軽にお声がけください。信じます。

では、今年もよろしくおねがいします\(^o^)/

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