パイプ横回転のすすめ

なぜパイプに手を出したのか?

苦手な相手がわかってきた

私が参加したころは、横回転は片手で数える程しかいませんでした。
10カウント適用前で、両脚が浮いたら負けルールも理由かもしれません。
他団体との対戦であれば初見殺し的なこともありそれなりに勝てました。
しかし、部内ではそうもいかなくなりました。
同期、先輩、後輩が横回転に慣れ、何をされると嫌なのかバレてきました。

イヤな攻められ方やロボは、ざっくりと下記のとおりです。

イヤな攻められ方・苦手なロボ

  1.  小型機
    アームの攻撃判定が鎌の部分にしかないため、懐に入られるときつい。
    練度の高い小型機だと、スタート直後の速攻だけでなく縦横無尽にフェイントをしかけてくる。アームリーチを稼ぐために立ちスタートや折りたたみ構造を採用するが、スタートするだけで体力つかう。
    例:しゃこたん・顎兎系列。

  2.  先端火力の高いアーム(シールド)
    先端速度が早く、パワーも十分にあるアームだと、鎌先をはじかれただけでそのまま本体ごとひっくり返る。
    例:レパード系

  3.  超ロングリーチのロッド
    横回転のアームリーチの最大が大体500mm前後。
    600~700mmを超えたロッドが相手だと刺し合いで負ける可能性が増す。
    ロッドを噛んでから鎌を回しても、ロッドがねじれる分のタイムラグがあるため、相打ち覚悟で突っ込まれると運要素が増す。
    カウンターアームは狙えるのでまだやりようはある。
    例:琴系列・ラインアーク

  4.  同族
    同じ横回転同士だと超ロングロッドよりも運要素が増す。
    減速比が同じ程度であれば、逆回転を前進を織り交ぜることで多少はいなせるため、まだやりようはある。
    2014年ぐらいまでの鎌+横カウンターの標準的な3ch操作
    例:白銀

  5.  未完成のアイツ
    前脚折りにくる。読みを外すとタヒぬ。
    例:いわずもがな。シールド回転の皮をかぶった走る小型旋盤。
    夢にも出てきて、正面からぶつかり合って自分のロボだけ左右真っ二つに両断される。夢の中ぐらい華持たせてくれよ。

中型・大型機にはそれなりの戦績は維持できていた気がしますが、足が速く、的が小さく、攻撃力の高い相手はやはり苦手でした。
総じて小型機を苦手としていましたが、中型サイズでも底板を肉抜きしない、一枚板にして隙間をなくしているロボも、鎌がお腹をくすぐるだけだったので苦手でした。身内はそれを知っていたため、底板はポケット加工が標準装備されるようになりました。

鎌からパイプへ

特に未完成のアイツが止まりませんでした。
何とか対応できないもんかと、朝昼晩食べて寝て唸っていた時に出会ったのが、「ぬえ」という〇314のロボです。
本大会には出場していないロボですが、
・身体の半分は鎌の横回転
・身体の半分はパイプ横回転を装備
・更に本体は横に広がる
という男の子にはたまらない全種盛りみたいな横回転です。
このアームなら仕留められると思い、パクリスペクト参考にしました!!
ほかにも、過去の大会にいたVerboteneや、部室に残っていた雷電といった、アームを真横からではなく斜め方向や正面から差し込んで横転させるロボの画像も参考にしました。そして生まれたゲテモノが鬱金香です。

図1. 2011_横幅535mm+アーム込み全長860mm+パイプアームのリーチは約500mm

パイプ横回転の特徴

鎌とパイプの両方をそれなりに使い込んできた私の所感ではありますが、
以下の点が鎌との違いや印象です。

  1.  前進・後退・旋回した時の障害物の影響が少ない

  2.  面ではなく、点で対峙できる

  3.  懐が深い

  4.  真横からではなく、斜め下からはいりこむ

  5.  置き刺しがしやすい

  6.  減速比が低くても(わりと)成り立つ

  7.  本体側の態勢が崩れにくい

  8.  噛んで(絡んで)からひっくり返すまでの応答が遅い

  9.  SUSパイプを曲げるのが大変。曲げるのは公園がおすすめ。

    といった点です。

1. 前進・後退・旋回した時の障害物の影響が少ない

丸パイプを使用しているためフィールドとの接地面が少なく、滑りやすい。
障害物との接触すときにはR面で受けるため、中央の丘以外の障害物の干渉をほとんど気にせずに動ける。
先端を低い位置に保ったまま前後にゆすったり、左右に頭を振るという揺さぶり動作がしやすい。

アーム上下が標準装備になった横回転であれば、先端位置の調整手段が増えたのであまり旨味ないかもしれないです。

2. 面や線ではなく、点で対峙できる

鎌はどうしても相手の目の前に板をさらすため、他の縦方向に動作するアームよりも被弾面積が大きくなります。
シールド機も被弾面積は大きいですが、衝撃を受け流せるように斜めになっているので、鎌に直撃を食らったときの影響はシールドよりも大きいです。
点で対峙できるようになったのは大きく、シールド回転やブレード回転のような縦回転系のアームに対して、対面時に有利を取りやすく感じました。
(動き回られると怖いことに変わりはないです。良いこのみんなは対面しても止まるんじゃねぇぞ。)

図2. 正面から見た鎌とパイプ
図3. 横から見た鎌とパイプ

3. 懐が深くなる

2とまとめようと思いましたが、別かと思ったので分けました。
鎌の場合、横回転の回転中心を相手の眼前にさらすことになります。
横回転アームの回転中心は機構の都合上、100mm前後の高さが多いです。
この回転中心へもろに攻撃を食らうと、鎌の重量も相まって慣性でそのままひっくり返されることもあります。

パイプにすることで相手にアームの回転中心を晒さずに済むため、
ロングロッドの先端のように、叩かれても態勢が崩れにくくなりました。

最近は横回転ユニットそのものが上下したり、スタピライザーを付けて転倒しにくくしているロボが多いので気にしなくて良いかも?

図4. シールド回転の下をとれる
シールド回転側は適当に描いたのでサイズとか変かも。雰囲気伝わって。

4. 真横からではなく、斜め下から入り込む

通常の鎌が付いたタイプの横回転の場合に狙う部分は、
1. 相手の側面
2. アームユニットと脚ユニットの空間
3. ロッド・カウンターの間の空間
4. 脚ユニット
のあたりです。

鎌で小型機や未完成のアイツを相手にした場合、1~4の部分は狙えません。
上から刺そうにも、鎌を上げてしまうと懐に入られてしまいます。
小型機だとカウンターがないですし、覆えるところは基本覆っています。

ただし、小型機でも、大型機でも覆えないところはあります。
それは「4. 脚ユニット」です。
移動するために脚の正面は必ず露出されます。

パイプの場合、ロッドのように相手の脚ユニットの隙間を狙うという選択肢もとれるので、鎌にはない立ち回りができます。
そこから刺さるんかい!みたいなことが未だにあるので、もうしばらくは通じそうです。
カムクランクやルーローみたいに脚板の間に隙間がほぼないタイプ相手にはは狙うのはきついです。素直に置き刺ししましょう。

5. 置き刺しがしやすい

私がとる基本戦法です。
先端をフィールドに擦らせた状態でも結構動けるので、低い四角丘の上に先端がちょっとはみ出るぐらいの位置を維持すれば、前進後退・左右の首振りもしやすいです。

鎌の場合、鎌以外の丸棒分は直線なので攻撃力がないです。
パイプの場合は回転中心につながる部分はすべて回転中心からずれているので、パイプそのものに攻撃判定があります。
火力は微妙ですが、鎌ほど引っかからず、牽制にもなってくれるので態勢立て直しながらのバックしての逃げがしやすいです。

6. 減速比が低くても(わりと)成り立つ

半径110mm前後の鎌を使っていた頃は、モーター2個で225:1減速比が私的に至適でよい塩梅でした。
市販の75:1ギアヘッドの3倍減速で計算も設計も楽。
ぐるぐると鎌を回しまくる戦い方はしていなかったのでパワー不足を感じることもありませんでした。

が、回転速度は速くしたいと思っており、減速比を200:1ぐらいで運用したこともあります。
その場合、速度感はよかったのですが、ここぞいう時に力不足だなと思うシーンが多かったです。
学生時代だったので、技術力や資金力などで重量を抑えるための材料を買うのも厳しく、モーター1つ増やすのもしんどかったのです。

ところが、200:1の鎌では力が物足りなく感じた場面でも、パイプの場合だと回しきれる場面が多くみられました。

鎌の場合は相手の側面から先端をひっかけることが多かったため、鎌の先端部に相手の重量3.5kgがもろに乗っかっていました。
ところが、パイプの場合は先端が刺さったと思っても、さらに奥深くまでパイプが入り込みます。
パイプの刺さりが深くなるにつれて、アームの回転中心に近いところへと無理やり相手ロボを引き込み、力が伝わりやすくなったと考えられます。
(鎌では指先でドアノブつまんでいたが、パイプでは手のひらでしっかり握れるようになった感じ?)

7. 本体側の態勢が崩れにくい

パイプ横回転は、螺旋を描くように渦巻いた形状をしています。
パイプ先端が刺さると、パイプの大外のRがリングに接します。
大外のRがリングに接触することで、腕相撲の肘の役割をします。
相手とアームが近いところに支えができるため、自機はしっかり4脚接地できます。
相手は浮いている、もしくは4脚接地できていない態勢なので、リング際まで押し込みやすくなります。

押し合いの際は、アームの順回転と逆回転を適当に切り替えながら前進すると、一方的にリング際まで押し込めて気持ちいいです。
リング際で一瞬だけ逆回転いれるのもおすすめです。

「横回転=気持ちよく回したい」

と考えているのか、アームが回された時リングに多く脚がかかっている側の脚を多めに回す人が多いです。
パイプを逆回転することで刺さりが少し甘くなるので、相手は自分の暴れによって緩んだと勘違いして多めに脚を動かします。
側面または底面から外れるので、機体の一部が場外に出るリスクを減らしながら押し出せます。

8. 噛んで(絡んで)からひっくり返すまでの応答が遅い

横転力が発揮されるのはパイプがある程度まで刺さってからです。
鎌のギザギザのように、噛んだ瞬間に横転させるようなことはできません。
ゆえに、同族の横回転や、ロングロッドが相手だとめちゃくちゃ辛いです。
一応、パイプの途中にねじやピンを刺すことで緩和できますが、鎌の応答速度には及ばないですし、ロッド先端から噛めるようになるわけではないので旨味が少ないです。素直に鎌に換装しましょう。

9. SUSパイプを曲げるのが大変。曲げるのは公園がおすすめ。

φ8.0mm、肉厚1.0mmのパイプ材を主に使用していますが、SUSなので硬いです。曲げてるうちに屈曲部も硬くなります。
包容力(物理)を鍛えないと良い螺旋を作れません。

ちょうどよいRのついた円柱を探すのも大変ですが、おすすめは公園です。
電信柱、ブランコ、ベンチ、ジャングルジム、多様な円筒面が自生しているため、様々な捻りを作れます。
公共物ですのでキズをつけないようにウェスなど忘れずに。

図5. クリスマスイブイブに抱きしめたパイプ。
出来が悪い。多分サンタの仕業

久しぶりにパイプをひねってみましたが、先端が自機側に向かってしまったので失敗です。
・上から見たときに?マークのようになる。
・先端が相手に向かっている。
という点を抑えてひねることができれば、立派なパイプ使いです。

鎌とパイプの私的まとめ

どんな機体ともまんべんなく戦える万能タイプ。
アームを回してプレッシャーを与え続けることで有利を維持する。
小型機、シールド機相手には相性がわるい。
同系統・超ロングロッドと戦う場合は運要素が増す。

パイプ

積極的に攻めるよりも、カウンターを狙った運用を意識する。
小型機、シールド機と戦いやすくなる
同系統・ロッド系統に弱くなる

所感

鎌のように回転させて相手をリング外に引きずりおろすような派手な戦い方はできません。
鎌より強いか?といわれると、毎年決勝トーナメントに残るところまでしか進めず、結果らしい結果を出せていないので微妙かもしれません。
しかし、相手の態勢を崩しながら足回りでリング際まで押し出したり、相手の呼吸に合わせて、後の先をとるようなテクニカルな戦法がとれ、使ってみると楽しいロボなのは間違いないです。

以上、めちゃくちゃ長くなりましたが本記事を終わります。
ここまで読んだ人がいるのかはわかりませんが、
もしもいましたらお付き合いいただきありがとうございました






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