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第17回ナノ会議レポート 「施工から紐解く。アフォーダブル施工という選択肢」/大工 いとうともひさ

しばらくサボってしまっていたのですが、スタッフも増えたので任せることとして、ナノ会議のレポートも再開します。

〇はじめに
はじめまして、ナノメートルアーキテクチャースタッフの原田祥吾です。
今回で17回目の開催となったナノ会議、ゲストは和歌山県と千葉県を拠点に活動する大工、いとうともひささんを招待しました。
いとうさんとの出会いは過去の記事にもある「松阪の住宅」プロジェクト。

https://note.com/nm9/n/n95cac631b0e5

大人の事情により既存住宅が全解体されてしまうことになったため、少しでもこの家のストーリーを後世に残せるよう、いとうさんの知識と技術をお借りし廃材をレスキューしました。ここで回収した材たちは新たに建てられる松阪の住宅に家具や建材として受け継がれていく予定です。

いとうさんにレクチャーを受けながらの解体ワークショップの様子。普通の材に見えるものが「実はレア物なんです」と、いとうさんによってどんどん価値付けされていきました。

〇いとうともひさって何者?
はじめにいとうさんのことを大工と紹介しました。これまで数々のプロジェクトで施工を手掛けてきたいとうさん。彼の活動を見るに、大工さんであることは間違いない(はず)です。しかし、話を聞けば聞くほどとても大工という言葉では括れない人物だと痛感します。
いわゆる大工は、設計者の設計した通りに建物を組み上げていくのが一般的かと思います。ところがいとうさんは、設計者の視点に立って考えるし、研究者的視点で物事を分析するし、気づけば解体も施工もしています。そんな、不思議で魅力的な人物がいとうともひささんなのです。

〇アフォーダブル施工ってなんだろう?
彼の掲げる、アフォーダブル施工という言葉。いとうさんは「手頃に作れる施工」「その場所の人や資源ありきの工法」といった意味合いで使っているそうです。実際に過去のプロジェクトでは、ホームセンターに売っているプラスチック容器でモルタルを打ったり、家主に家のどこでどんなストーリーがあったのか聞きながら場当たり的に改修を行っている様子が見受けられました。
一見、時間やエネルギーのかかる作業のようにも見えます。ですが、きっと昔の人たちはこうやって、そこにいる人たちと一緒に、そこにあるもので物事をつくりあげていたんだと思います。アフォーダブル施工は、そんな昔ながらの感覚を想起させました。
そして、これまでのチャレンジは、設計や施工をはじめとした建築設計の各工程の間でどうしても生まれてしまう価値観や目的の相違といった溝、それらを埋め、一つなぎのストーリーをデザインすることへの挑戦にも見えました。

ナノ会議の様子。笑顔の絶えない、楽しい回でした!

〇おわりに
技術だとか希少性だとか、いとうさんはそういうところに依らない部分に意味や価値を見出しているんだと感じます。そして、その価値観はきっと以前は多くの人が当たり前に持っていた感覚のはず。いとうさんの活動を見て「変わったことをする人だなぁ」と感じてしまう、その価値観を疑わないといけないのかもしれません。個人的にではありますが、そんな教訓を得ました。

モルタルを詰めたプラスチック容器を表現した手

学びあり、笑顔ありの楽しい回でした。いとうさん、ありがとうございました!

次回は6/24土の開催です。いつもの金曜夜ではなく、土曜日日中での開催予定ですが、大阪・関西万博メンバーを3名招いた特別回を予定しています。

ナノメートルアーキテクチャー スタッフ原田祥吾

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