プロット1ヶ月、作画1ヶ月、計2ヶ月で60ページの同人誌を描いた私のプロット術

こんにちは。一介の同人女です。
この前のSPARKで発行した同人誌について、プロットに時間をかけすぎた結果1ヶ月で60ページの本の作画をする羽目になったのですが、割増を使いながらもなんとか脱稿できてしまったので、制作過程を文章にして残しておけば後で自分の役に立ちそうと思い、今このnoteを書き始めています。

実は、プロットに時間をかけすぎると案外いいことがあります。
作画しながら「この本面白いのかな…」と不安に思ってる暇が物理的に無いので無心で作画できます。
っていうか無心でやってないと終わらないので…
むしろ「こんだけ時間かけてプロット仕上げたなら多分この本出来上がったら面白いんだろうな…」とすら思えるのでオススメです。
結果、ストーリーとしては過去最高のものが出来上がりました。

私はこれまでにいろんな記事や本を見て学んだプロット術を使って理詰めで話を考えているのですが、多くの記事元を失念しているため、思い出し次第URLなりamazonページなり貼り直そうと思います。
ちなみに私はブランクあるけどまあまあ同人経験があります。これまで出した本は15冊くらい。
同人経験がある前提で文章を書いていくのでこれから初めて活動を始めるという方にはあまり参考にならないかもしれない。すみません。
主にプロットの話をしているのでもしかしたら字書きさんのヒントになる部分もありかもしれません。

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過程(1)脳内プロット

紙やメモ帳アプリには書き出さずに頭の中でどんな話にしようかな〜と考えます。
今回は受け(人外なので死なない)と攻め(普通の人間)を幸せにするための転生パロにすることにしました。
この「どういう話にしようかな〜」なんですけど、私の場合は、

攻めが転生して受けに出会えたところで、受けが生前攻めの姿を転生攻めに投影し執着することは、これまで一人の人間として生きてきた転生攻めにとっては些か残酷ではないか?

という『問題』に対して、どうすればその疑問をどう解決できるかを考える、個人的にはワクワクするけどまあまあしんどい過程です。

すべての物語は『問題』を『解決』することが本質です。
例えば桃太郎であれば、人々に恐れられる鬼という問題を解決するために、桃太郎が仲間を引き連れ退治に行く話です。
シンデレラであれば、継母や意地悪な姉にいじめられ辛い生活を強いられているという問題を解決するために、魔女や王子様が現れて華やかな世界に連れ出してくれる話です。

・主人公(あるいは主人公の周りの人々)は何に困っているのか?
・この先、主人公にどんな問題が発生するか
・主人公が抱えているのに、本人はまだ気づいていない問題は何か?

そういう着眼点から始めることが重要です。

とは言え、何も大きな問題が起きないただただ平和な日常回を書きたいという人もいると思います。
しかし、日常回にも小さな『問題』と『解決』が潜んでいるはずです。

問題(1):受けが大切に取っといたプリンを食べられて喧嘩になった

解決(1):攻めが高級プリンを買って来てくれて二人で仲良く食べた
問題(2):タコ焼きを焼き始めたのに肝心のタコを買い忘れた

解決(2):チーズやウインナーやキムチで代用したらすごく美味しかった

こうして『問題』と『解決』を1セットにすることでストーリーの大筋を考える過程がかなり楽になるはずです。
書きたいエモいシーンがまず最初に思い浮かぶタイプの場合でも、その書きたいシーンを補強するために『問題』と『解決』で肉付けしていくというアプローチは十分にアリでしょう。

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過程(2)脳内プロットを紙やメモ帳アプリに書き出す

『問題』と『解決』の1セットが出来上がったら、思い浮かんだシーン、セリフ、設定等を自由に文字に起こします。
要するに言語化する作業です。
特に私の場合はペンで紙に書くことを重視しています。
矢印で結んだりちょっとした補足を書いたり、文字に起こしながらさらに思い浮かんだ疑問や問題を書き込んだり、図で示したり、自分にとって一番やりやすい方法で自由にアイディアを言語化します。

この過程の最後に物語を起承転結にまとめるのですが、前述の『問題』と『解決』を踏まえつつ、私はこの本で学んだ『三幕構成』『プロットポイント』の考え方を参考にして起承転結に落とし込んでいます。

これら三つの部分が脚本全体を形作るとしたら、どのようにしてそれぞれをつなげていけばよいのだろうか?
その答えが、物語の転換点、プロットポイント(物語の転換点)である、プロットポイントを、第一幕と第二幕の最後に置くのである。プロットポイントとは、アクションを起こさせ、物語を違う方向性に向かわせる事件やエピソードなどを指す。
(“映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術”より引用)

この『プロットポイント』とは『ターニングポイント』とも言いますね。
これを私なりに起承転結+αに落とし込むと、こうなります。

起:登場人物の置かれている状況と抱えている問題を提示する
★:日常が少し変化する事件が起きる
承:変化した日常を過ごしつつ、小さな葛藤が生まれ始める
転:葛藤が最高潮を迎え、争い、混乱が起きる
★:争い、混乱を打破するための事件が起きる
結:全てが収束し、問題が解決した世界を描き余韻を残す
※プロットポイントを★で表しています

起承転結って小学生で習いますけど、実際の物語に当てはめると『承』と『転』の境目は結構曖昧で、物語がガラッと動くシーンは『転』ではなく『プロットポイント』なんですよね。
最近見た映画だと『リトル・ジョー』のプロットポイントが素晴らしかったですね。オススメです。

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過程(3)台割りを考える

台割 読み方:だいわり 別表記:台割り
(1)主に出版業界で使われる、一度に何ページを印刷するか、各ページの内容をどうするかの割り振りを意味する用語。ちなみに、一度に印刷するページのまとまりを「台」と呼ぶ。
(2)(1)が示された表のこと。台割表、台割り表とも呼ばれる。
(Weblio 辞書より)

要するに、このシーンAは1〜2P目に割り振り、シーンBは3〜6P目に割り振る…といった感じでページ配分を決めます。
人によってはネームを最後まで終わらせないとページ数が確定しないという方もいらっしゃると思います。
私はこの最初にページ配分を考えるやり方を同人活動を始めたばかりのころから続けているので、どっちが良いとかは無いと思っています。
ただ、印刷所の予約を入れるためにはページ数が確定していないといけないので、ある程度早い段階でページ数は決めておきたいですよね。

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過程(4)写植

締め切り直前の頭が働いてない時に写植すると絶対に誤字をします
まず最初に写植をしてしまうのが圧倒的にオススメです。
あと、フキダシを適当な大きさで描いてあとでその中に写植するという順番だと、文字がギチギチになったり不自然にフキダシが大きすぎたって経験ありませんか?あるはずです。それも防げます。

あと、空白のフキダシだと絵と絵の隙間の適当な場所にフキダシを入れるという行き当たりばったりな画面作りをやりがちだと思います。
文字という強めの情報を最初に画面に配置しておくことで、セリフと絵を同列の情報として扱うことができます。

ちなみに、私は『過程(3)台割りを考える』と同時進行で写植を進めます。
このシーンは1Pあたりのセリフの数を少なくして絵で見せたいなと思えば、1Pあたりのセリフの量を減らしつつページ配分を決めます。
逆に、このシーンは説明的だからあまりページ数を割くと冗長になるなと思えば、1Pあたりのセリフを多くしつつページ配分を決めます。

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過程(5)作画

作画に関しては特にこれといったテクニックは無いのですが、見開きで作業すると60Pの本も、実質30P分の作画量で済みます!!!!
何言ってるんだって感じだと思うんですけど、見開きで作業するのってかなり利点が多いんですよね。

・めんどくさいトーンの設定も2Pまとめて終わらせられる!
・ページをまたぐ視線誘導を考えやすい
・見開きで対になる画面構成も描きやすい

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まとめ

雑多に書きなぐったのでざっくりまとめます!

・すべての物語は『問題』を『解決』することが本質
・日常回にも小さな『問題』と『解決』が潜んでいる
・『三幕構成』『プロットポイント』の考え方を参考にする
・物語がガラッと動くシーンは『転』ではなく『プロットポイント』

・最初に写植を終わらせて、セリフと絵を同列の情報として扱う
見開きで作業すると60Pの本も、実質30P分の作画量で済む

これからも同人誌たくさん描いていきたいので、プロット術をもっともっと強化していきたいなと思います。
お読みいただきありがとうございました。

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