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話を聞いて欲しい時読む本 ナミヤ雑貨店の奇蹟 東野圭吾

悩みを解決してくれる不思議な雑貨屋の話。これだけなら、まあ雑貨屋以外にもコンセプトがあって割と多くの人が思いつく設定だろうなと思い、正直「東野圭吾だから読もう」というレベルで手に取りました。ですが、東野圭吾にかかると次々と物語に引き込まれる仕掛けがたっぷり。筋が通って1本に繋がる感覚は、ファンタジー的要素と合わさって満足感がたっぷりです。

この作品、というよりこういう「お悩み解決しますよ!」みたいな作品を読む時は皆様どういう心境でしょうか。誰かさんみたいに「○○の作品だ」という人もいるでしょうが、「悩みを聞いてほしい、解決して欲しい」みたいな心境ではないでしょうか。ここが面白いところで、他作品よりも絶対に多い「悩みがある人」という読者(顧客)に対して最適なストーリーを届ける。という、ある種のサービス提供ができているのがこのナミヤ雑貨店の奇蹟と言えるでしょう。
ストーリーに出てくる悩みは様々です。夜逃げだの夜の仕事、恋人の病気と自分の夢のジレンマ等。もちろん、ピンポイントで解決する部分もあるかもしれませんが、解決する側を素人にすることで「傍から見たらお前の悩みなんてこんなもんだぞ」くらいの、背中をポンと叩いてくれる感じがあります。多分それは、悩みを抱えて小説を手に取る人にとっては最適なサービスなのかもしれません。

そしてラスト2ページこそ、この小説を手に取り悩みを抱えつつ誰かに話したいなと思った読者へのメッセージが、ナミヤ雑貨店の店主から送られるのです。真意は不明ですが、元々職業作家であり一般企業に勤めていた東野圭吾氏が「お客の求めてるものは何か」を考えて出した結論なら、これ程の衝撃はありません。

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