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絶望との向き合い方. -Emo RockとEmo Rapについて.-

 多分病気の類では無いのだろうけれども、ここ数ヶ月に渡って気分の悪化に悩まされている。知り合いも見ているので先に書いておくと、人間関係や職場環境については特に文句はない。急激に環境が変わっている最中なので、単純にそういう時期なんだと思う。

 さて、こんな興味深い記事を発見した。

bmr - アメリカの中学生のベスト・ヒップホップ・ソング・オブ・2017 (presented by 堂本かおる)
http://bmr.jp/feature/197889/6

 2017年にアメリカを中心に大流行した「emo rap」をご存知だろうか。

 ゼロ年代に活躍したFall Out BoyやPanic! at the Disco、そしてMy Chemical Romance、あるいはLinkin Parkといった、絶望的な感情をキャッチーでラウドなサウンドに乗せて叫んでいた「emo rock」と呼ばれるバンド達。

 そんな彼らの影響を受けて育った若者がラッパーとなり、soundcloudを中心に大ブレイクを果たしている。

 上記の記事では、(あくまで一個人のランキングとはいえ)そういった「emo rap」を中学生達が熱心になって聴いている事が分かる。

 それは、ランキングに載っているようなラッパー達が中学生の頃にエモ・ロックを聴いていた姿と重なる。僕もそういうタイプの子供だったので、そういうミュージシャンにのめり込んでいくというのはとても良く理解出来る。

 それがロックではなく、ヒップホップであるという事に、強く今の時代というものを感じる。

 emo rock当時、イケてる連中はThe Black Eyed PeasやNe-Yoといったポップ・アクトを聴いていて、暗いタイプの人がエモ系を聴いているような構図だったように思う。それは、つまりロックがカウンターカルチャーとして機能していたという事だと思う。

 しかし、現在のシーンを見てみると、イケてる連中がMigosやDrakeを聴いて、暗いタイプがemo rapを聴いているという構図になる(勿論、そんな簡単に二分されるとは思わない。あくまで傾向としてだ。とはいえ、じゃあ暗いタイプが他に何を聴いているのかと考えると、すぐに答えは出てこない)。

All My Friends are Dead. Push me to the Edge.
(友達は全員死んだ。崖っぷちまで押し出してくれよ。)
XO Tour Llif3 - Lil Uzi Vert
Depression and Obsession doesn't mix well.
I'm poisoned and my body doesn't feel well.
(鬱と強迫観念は相性が悪いよな。
毒に冒されてしまって、体調も酷いんだ。)
Depression & Obsession - XXXTentacion
You don't wanna find out, better off lying.
You don't wanna cry now, better off dying.
(君は知りたくないだろうから、俺は嘘をつくことにするよ。
君を泣かせたくないから、俺は死んだ方が良いんだ。)
Better Off (Dying) / Lil Peep

 "I'm not okay"と叫んでいた頃と比べると、症状はより深刻だし、サウンドもより一層暗くなっている。

 ゼロ年代当時のエモ・ロックはある意味逆ギレのようなものだった。パンキッシュなサウンドに乗せて自分の感情を絶叫すれば、その一瞬は辛い現実を忘れる事が出来た。そして、次に現実が訪れるまでは、そのエネルギーを持続することが出来た。

 これはあくまで仮説にしかすぎないけれど、当時と現代の心の闇というものが変わってきているように思う。そして、今の方がより深く、暗くなっている。その原因として、現実が訪れるまでのスピードが挙げられるかもしれない。

 今は現実が訪れるのが酷く高速だ。Lil Uzi Vertの新曲に興奮してSNSに投稿した瞬間に、タイムラインが現実を叩きつけてくる。

 気分の上がり下がりは正直疲れる。だったら、今の気分が若干マシになるくらいがちょうど良い。emo rapを聴いて気分が上がることはないけれど、サウンドの心地よさや歌詞へのささやかな共感で、今の絶望的な気分が少しは落ち着く。多分、ロックはうるさすぎる。僕だって今はロックを聴きたい気分ではないのだ。

 「よし、明日も頑張ろう!」と前向きな気持ちになって心を折られてまた戻っていくよりも、「俺は死んだ方がいい」と思って鬱々と過ごした方が、期待を裏切られないだけ楽だ。

 現実は何一つ変わる事はないが、これ以上酷い気分になりたくない。それでいいじゃないか。どうせ未来が良くなることなんて無いのだから。そんな諦めが、emo rapの背景にはあるように思う。

And if I'm taking this the wrong way,
I hope you know that you can tell me whatever you're thinking.
(もし俺が間違った道を進んでいるというなら、
何でもいいから君が考えている事を教えてくれないか)
Spotlight - Marshmello & Lil Peep

 こんな悲しい話はないかもしれない。でも、少なくともそんな人々に寄り添う音楽が存在している時点で、それは素晴らしい事じゃないかと思う。

 素直に「死にたい」と言える場所が彼らには必要なのだから。

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ノイ村

26歳の会社員。趣味で音楽の事を書いてます。第一回「rockin'on presents ONGAKU-BUN 音楽文大賞」入賞。 連絡先 : neu_mura@outlook.com

音楽の話をしよう。軽めに。

最近では1分で読めなくなってきている音楽コラム。
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