[特集] SUMMER SONIC 2017 -第一弾ラインナップ&サマソニの挑戦編-

 今年も日本を代表する夏フェスの一つ、SUMMER SONICのラインナップに一喜一憂する季節がやってきた。「フジよりサマソニ」を自称する自分としては、今年もあらゆる感情を抑え込みながら記事を更新していくつもりだ。どういう感情なのかは、先日公開したサカナクションのライブ評で伝わればいいかなぁと思っているが、一つだけ言い忘れていた言葉を書いておく。

 "Creep"であんだけ盛り上がるんだったら、"A Moon Shaped Pool"、せめて"Burn the Witch"と"Daydreaming"くらいは聴いてこいや!!!!!!

 さて、本日付けで今年のSUMMER SONICの第一弾ラインナップが発表された。昨年はブッキングが難航してしまい、中止という憂き目にあった前夜祭のSONIC MANIAも今年は復活する。まぁ知ってたけど。

 早速だが、今年のラインナップは過去に類を見ないほどに賛否両論だ。僕の視界ではどちらかというと否が目立つくらいだ。その原因を紐解きながら、今の日本の洋楽フェスが抱える問題点について考えてみる。一方で、今年のサマソニはそれをどうにかしてくれるんじゃないかという期待もある。

 まずは事前知識として、既にラインナップが発表されているアメリカ最大の音楽フェス、Coachellaのヘッドライナー、サブヘッドライナーを見ておこう。

[ヘッドライナー]

Radiohead / Beyoncé / Kendrick Lamar

[サブヘッドライナー]

The xx / Travis Scott / Father John Misty / Empire of the Sun / Dillon Francis / Bon Iver / Future / DJ Snake / Martin Garrix / ScHoolboy Q / Gucci Mane / Lorde / Justice / New Order / Porter Robinson & Madeon / Future Islands

 続いて、初期のサマソニが開催形式も含めて強く意識していたことでも知られる、イギリスのレディング/リーズフェスティバルの場合はこうだ。

[ヘッドライナー]

Kasabian / Muse / TBA

[サブヘッドライナー]

Two Door Cinema Club / Major Lazer / Bastille / Korn / Flume / Fatboy Slim / Wiley

 正直、ラインナップ弱くないか?ヘッドライナーや一部のサブヘッドライナーは確かに豪華だ。サマソニやフジロックで似たようなラインナップになったら狂喜乱舞するだろう。とはいえ、世界を代表するフェスティバルとしては中段以降のどうにも薄い感じが否めないのも事実だ。そんでもってレディングに関してはいつものサマソニって感じが凄い。

 今年のフェスティバルシーン全体を見てみると、ヘッドライナークラスでよく名前を見るのはRed Hot Chili Peppers、Foo Fighters、Green Day、The Killers、The Weeknd、Arcade Fire、Frank Ocean、Chance the Rapper、Phoenix、Metallica、Linkin Park、Kasabian、Muse辺りである。ここから最近来日済みだったり、ツアー中だったり、あるいは日本での動員が見込めなさそうなアクトを除外すると、残るのはKasabian、Muse、Phoenix、Metallica、Linkin Parkくらいだ。辛うじてフジロックならThe KillersとArcade Fireだろうか。フェスには出ていないけれど、Ed Sheeranもいけるはずだ。

 というわけで、実は2017年の時点で、今までの考え方ではフジロックとサマソニには殆ど手札が無い状態だった。特にポップ系を選択できないフジロックにとっては物凄く厳しい状況だと言える。サマソニも、正直なところ「Metallica、Ed Sheeran、Linkin Park以外に選択肢あるのか...?」と不安に感じていた。しかし、サマソニはここ数年、徐々に手札を増やし始めていた。

 大きなきっかけは2015年のZeddが巻き起こしたヘッドライナーを遥かに超える異常な盛り上がりだろう。これをきっかけにクリエイティブマンはEDMのビッグネームの来日公演に注力し始めた。2016年サマソニのAlessoトリ前+ブレイク真っ只中のThe Chainsmokers出演、David GuettaやDimitri Vegas & Like MikeといったDJ Mag上位勢の来日公演、遂に実現したAvicii悲願の来日スタジアム公演、更にはelectrox、そして4月には驚異的なラインナップが集結するEDC Japanの初開催を控えている。しかし、そもそもEDMブームより以前から、サマソニは積極的に旬のダンスミュージックをラインナップに取り入れてきた。これらは全てサマソニから始まったものだと言える。だからこそ、個人的に「近い内にEDM系DJがヘッドライナーを務めるのでは?」とも考えていた。

 そしてついにその時が来た。2017年のSUMMER SONIC、ヘッドライナーを務めるのは世界トップDJのCalvin Harrisである。

 正直、来日するとは思っていなかった。理由は主に2つ。まずは生々しい話だけど、ギャラの問題だ。四年連続で「世界で最も稼ぐDJランキング」に選ばれる彼は、その出演料も世界トップクラス。日本での知名度を考えると、いくらブレイク前の2010年、2012年に出演しているとはいえ、今のサマソニが払うとは思えなかった。もう一つの理由は、彼はラスベガスの超高級クラブでレジデントDJを務めていることもあって、それ以外の場所では殆どDJセットを披露しないのだ。実際、2016年に行った外部でのライブはコーチェラの大トリ出演を含む9本のみ。一方、2016年のDJ Magで第一位に選ばれたMartin Garrixは同年だけで100本近くのイベントに出演。つまり、彼のライブは世界的に見ても貴重だ。ちなみに今回の公演は、日本どころかアジア全体で5年ぶりのライブだ。特にこの数年は外国人のお客さんが増えてきているが、今回は過去最高の割合になるんじゃないだろうか。

 いわゆる「ヘッドライナーとしての格」については、コーチェラでのトリ経験に、プロデューサーとしての圧倒的なヒット曲の数々とそのクオリティ、更には前述した通りの希少感と、個人的には全く申し分ないと思う。正直、DJプレイや選曲の面では特筆するほどではなかったりするが、それは今のシーンではそれほど大きな問題ではない。少なくとも格でいえば90年代に全盛期を迎え、現在はその余韻で支持されているアクトよりも上なのは間違いないだろう。僕としては、世界の音楽シーンと日本の洋楽シーンの狭間で揺れ動きながらも、それでも世界基準を目指そうとするサマソニの姿勢を支持したいし、10年後も続けるためには絶対に必要なことだと思う。もしもゼロ年代のサマソニに思い入れがある人が今は多数派だったとしても、彼らはやがて少数派になってしまうのだ。昨年のサマソニで、Radioheadが既に懐メロ化しつつある現状を目の当たりにしてしまったからこそ、より一層強く思う。

 さて、ここまで書いてきたことを全て無視して、開始当初のサマソニに強い思い入れがあり、近年のラインナップが気に入らない人の立場になって考えてみる。

 恐らく彼らはこう思うはずだ。「ガッカリした」と。

 EDMに興味がない人にとっては、Calvin Harrisが数あるプロデューサーの中でも、圧倒的な作曲能力(AviciiやZeddが何人もの作曲家と組んで一曲を作るのに対して、彼は殆どの楽曲を彼一人で制作している)とプロデュース能力(Rihanna等)を兼ね備えた才能の持ち主であることも、そのライブが高額なギャラと彼自身の方針によって非常に貴重なものであるということも、どうでもいいものだ。彼がFlorence Welch(Florence + The Machine)やHurts、あるいはHaim、更にはFrank Oceanといったアーティストと組んでいようが、そういう情報は入ってこない。なぜならそれがEDMであり、自分とは関係のないものだからである。そして、個人的には無理やり「これがスタンダードなんだから聴け」とも思わない。とはいえ、「何故Calvin Harrisがヘッドライナーになるのか」を考える人がもう少し多くてもいいんじゃないかとは思ったりする。

 一方で、今回の第一弾ラインナップを見ていると、Calvin Harrisを中心に据えるには違和感を感じさせるような傾向が見られる。ヘッドライナーのみが異端で、サブヘッドライナー枠のほとんどがお馴染みのメンツになっているのだ。

 一つは、2003、2005、2007、2014年に顕著だった、90年代から脈々と受け継がれてきたUKロックの系譜。過去、必ず電子音主体のアクトをヘッドライナーに据えてきたSONIC MANIAのヘッドライナーを務めるのは、かつてOasisのボーカルを務めていたUK最強フロントマンのLiam Gallagher、そしてOasisの後継者であり、2014年にもヘッドライナーとしてEDM勢に真っ向から立ち向かい大絶賛を巻き起こしたKasabianだ。そして、Led Zeppelin直系の超豪快なロックンロールによって今最もUKロック界の期待を背負うロック・バンド、Royal Bloodが初登場にして本編の重要なスロット(恐らくソニック・ステージのヘッドライナー)で登場する。

 そして、もう一つは2000、2002、2004、2012年を筆頭に、ほぼ毎年のようにステージが用意されてきた、USポップ・パンク勢。昨年もThe Offspringが出演していたが、今回は昨年の快作を燃料に再び勢いがつき始めたSUM 41を筆頭に、Good CharlotteNew Found GloryPennywiseと出演経験も多い中堅どころが揃い踏み。そして、彼らの姿を見て育ち、彼らからアドバイスを受けながら活動し、持ち前のアイドル性で大ブレイクを果たした5 Seconds of Summerが初登場にしてサブヘッドライナーに大抜擢。正直、熱心に聴くタイプのバンドではないのだけど、10年代に日本武道館で単独公演を成功させた数少ない新人ロックバンドの彼らなら、その扱いも納得せざるを得ない。再び勢い付くこのシーン、新鮮味は薄いかもしれないけれど、夏フェスならではの安定した楽しさを提供してくれるはずだ。

 そして最後は開始時から常に少ないながらも存在感を放ち続けてきた、Daft Punkらの系譜を受け継ぐフレンチ・アクトだ。まずは以前にnoteでも扱ったJusticeが2013年のSONIC MANIAでのDJセット出演以来の登場を果たす。記載がないところを見ると、今回は待望のライブセットでの出演になるはずだ。SkrillexやZeddに多大な影響を与え、現在のEDMシーンを作るきっかけともなった彼らがULTRA MUSIC FESTIVALなどを含むツアーと共に遂に前線に復帰する。そして、冒頭の文章でヘッドライナー候補の一つだと示したPhoenixも、ソニック・ステージのヘッドライナーを見事なステージで務め上げた2014年以来の来日だ。彼らに関してはとにかくライブが素晴らしいから頼むから見てくれって感じだ。どこか捻くれた軽やかなフレンチ・ギターロックが異様な音圧で迫って来るようなライブは彼らにしか成し得ない。

 さて、EDM界でトップに君臨するCalvin Harrisを中心に、最新のポップアクトではなく、あくまで日本人の愛してやまないUKロック、盛り上がりの約束されたUSポップ・パンク、地力の安定したフレンチ・アクトが脇を固めている。2015年のポップ路線を突き詰めたラインナップを考えると、どうにも違和感を感じざるを得ない。若手に目を向けてみると現在ブレイク中のアクトがずらりと並んでいるのだけど、何せ2015年はアリアナにマックルモアにゼッドにイマドラまでいたのだ。そこと比べるとどうにもインパクトに欠ける。それぞれに注目すると、どれもライブを見るのが楽しみになるし、ワクワクする。個人的にRoyal Blood、Phoenix、Justice、Kasabian、そしてもちろんCalvin Harrisのライブは是が否でも見たいと思うし、十分豪華だと思える。とはいえ、「微妙」という人の気持ちも分からなくはない。個人的にはもっと突き抜けてほしい。このラインナップを見ていると、全く新しい挑戦となるCalvin Harrisとのコントラストが強く見えてしまう。つまり、今までの基準から抜け出せなくなってしまった日本の洋楽の受け止め方を強く感じてしまうのだ。やはり海外との差は広がっていくばかりなのだろうか...。

 しかし、これはあくまで第一弾ラインナップである。

 何よりも気になるのは、もう一組のヘッドライナーだ。冒頭でも述べたように、今のところ可能性があるのはMetallicaEd SheeranLinkin Parkだと思っている。とはいえ、このラインナップでのMetallicaはもはや浮くとかそういう次元ではない。Linkin Parkはギリギリいけるけれど、個人的に大学でコピーバンドをやっているとはいえ食傷気味だ。Ed Sheeranはいい感じだけど、久しく来日公演を行っていないおかげで動員が読めない。

 ところで前述した3つの要素は、ある意味では「確実に動員を見込める」ものだ。特にUK勢の動員力は高い。毎年聞いているような気がするが、「サマソニよりソニマニの方が豪華」なんて人もいるくらいだ。一方でCalvin HarrisはZeddほどの馴染み深さもなければ、Aviciiほどの希少感もない。それでも、EDM/ポップ好きの支持を考えると2009年のマイケミよりは動員は見込めるはずだ。

 つまり、今のサマソニは未知の核に対して、ありったけの常連を詰め込んで外堀が埋まっている状態だ。少なくとも崩壊することはない。そしてまだ何組かの重要なアクトが未発表のままになっているのだ。もしかしたら、絶対に来日しないだろうと半ば諦めていたアーティストが登場してしまうんじゃないか、なんて期待もしてしまったりする。

 来週の13日(月)に第59回グラミー賞の表彰式が行われる。もしかしたら、第二弾ラインナップ、そしてもう一組のヘッドライナーはこの中にいるかもしれない。参考までに、パフォーマンスを披露するアクトを書いておこう。

 Metallica、John Legend、The Weeknd (feat. Daft Punk)、A Tribe Called Quest、Anderson .Paak、Adele、Bruno Mars、Carrie Underwood、Keith Urban、Alicia Keys and Maren Morris、Chance the Rapper、Sturgill Simpson、Gary Clark Jr.

 まぁ、Linkin Parkだったらみんなで"Faint"合唱しようぜ!

[2/8訂正]

 冒頭で示したレディング/リーズフェスティバルのラインナップが昨年のものだったので、修正しました。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

8

ノイ村

26歳の会社員。趣味で音楽の事を書いてます。第一回「rockin'on presents ONGAKU-BUN 音楽文大賞」入賞。 連絡先 : neu_mura@outlook.com

SUMMER SONIC 2017

1つ のマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。