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朝が来るまで終わる事のないダンスを -Part 2 : パリピってなんだろう-

 かなり間を空けてしまいました。前回の内容を軽くおさらいしておくと、「基本的にムーブメントというものは、コア層<ライト層<ミーハー層という構図がそのまま拡大したもの」、「ムーブメント自体は歓迎する事かもしれないが、ライト層やミーハー層の動き方は場合によって元々の文化自体の意味を変えたり、消費財にしてしまう危険性を持っている」という事でした。そしてその一例として、2007年のマキシマム ザ ホルモンに起きた事を取り上げました。

 そして、Part 2ではEDMを取り巻く現状について書こうと思います。今回も事前にかなり下調べしているとはいえ、あくまで自分の生活範囲の話なので間違ってる部分があるかもしれません。ご了承下さい。

 さて、世間というものがどの範囲を示すのか、地方の無名大学に通う身としては分かるはずもないのですが、何となく、「EDM=パリピの聴く音楽」というイメージが氾濫しているように感じます。twitterの検索窓に「EDM」という単語を入れると、こんな結果が出てきます。

 ちなみに「パリピ」で検索しても四番目にサジェストされるので、これはもう相思相愛の関係と言っても良いでしょう。EDMといえばパリピ。パリピといえばEDM。(ちなみに「Avicii」で検索すると、真っ先に「キャンセル」がサジェストされます

 ところで、そんな「パリピ」って一体何なんでしょうか?

 パリピとは、Party Peopleの略。つまり、「パーティー好きな人達」のこと。2015年のギャル流行語大賞にも選ばれ、若者の間ですっかり定着した言葉です。僕も気付いたらよく使うようになっていました。先日、大手広告代理店で若者文化を研究している原田曜平さんが「パリピ経済」という新書を出版した事も話題になりましたね。そのダイジェスト版とも言うべき記事がこちら。

無視できない流行の発信源「パリピ」の生態 なぜ彼らがこれだけ影響力を持つのか? | さとり世代は日本を救うか? - 東洋経済オンライン

 個人的には、冒頭のエナジードリンクやオシャレ系ヘッドホンを筆頭にいくつか疑問符が浮かび上がる部分もあるのですが、正直都心に住んでないし貧乏なので「そうなのかもしれない」と言わざるを得ないです。DJの友達はいますけど、彼らは見た目はチャラいしお金も持ってるけどただの「超音楽好き」でそれを届けるためにパーティでDJをしていて、トレンドセッター感はそんなに無い。でも、とにかく、パリピはトレンドセッターであり、若者を率先する存在であると著者は定義しているわけですね。

 ただですね、基本的に現象っていうのは、本質がどんどん削がれて広がっていくものだと思うんですよ。まずは速度が違いますし、最先端のものがそもそも存在しない場合だってあるわけです。その結果なのかどうかは分かりませんが、(少なくとも地方では)「パリピ=なんか派手で騒ぐのが好きな人達」くらいの認識になるんですね。そして、少なくとも日本の大学生全員に「パリピってどんな感じ?」って聴いたら、その存在自体は知らなくてもイルマニアや、あっくんみたいなイメージになるんじゃないでしょうか。

 いや、根はいい人なんですよ。見た目は相当キテますけど。そして、今使われている「パリピ」って2つのパターンに分かれていて、一つは「友達同士でフェスやイベントに行く人達」で、もう一つは「馬鹿騒ぎ好きなウェイウェイ言ってる人達」だと思うんですね。前者を「ソフト系パリピ」、後者を「ハード系パリピ」としますね。名前は今付けました。見分け方は、前者が「イエーイ!」or「ウェーイ(笑)!」で、後者が「ウェーイwwww」です。これなら地方にも沢山います。冒頭の記事で語られている、所謂富裕層のイメージはまずないかなぁ。

 そして、恐らく人がイメージする「パリピ」ってほとんど後者なんですよ。何故なら、ソフト系パリピはあっくんやイルマニアを筆頭とする後者のパリピを知った上で、友達同士でイベントに行って楽しんで、「私達パリピじゃない?(笑)」って雰囲気になってSNSに投稿するので、基本的に後追い。つまりパリピのコスプレなんですね。前提が「ハード系パリピ」にある。

 一方で、一見すると「ハード系パリピ」に見える人達も実は二分されていて、「外向型パリピ」と「内向型パリピ」。個人的にイルマニアが大好きだったんですけど、彼らは自分たちも盛り上がりながら、周りの人も一緒に盛り上げようとしているわけですよね。つまり外向型。ただ一方で、めっちゃ盛り上がってるんだけど、友達か、発見した好みの女子にしか話しかけないような人達もいて、それは内向型なんですね。別にナンパが嫌だって話じゃないのでその辺は誤解しないでほしいんですけど。そして前者は根がいい人だからマナーも良かったりする。一方で後者はそもそも自己中心的でマナーが悪かったりする。「パリピ」の悪いイメージを作り上げてるのは一部の内向型パリピじゃないですかね。それが「マイルドヤンキー」だったり「DQN」だったりするのかは、別問題かなぁ。

 そして、イメージっていうのは、良いものよりも悪いものの方が広がりやすいんですよ。どれだけ川谷絵音が良い曲書こうが、一つのスキャンダルであれほどバッシングされる。同じように、「パリピ」に関しても、すっかり「内向型パリピ」の一部のおかげで、悪いイメージが定着しつつある。

 ソフトだろうがハードだろうが、パリピが現在のEDMブームに一役買っているのは事実だと思うんですよ。結局今のEDMブームって「今、最も盛り上がるのに適している手段=EDM」っていう事だと思うし、それは「友達と一緒に盛り上がりたい!」っていう需要に合っている。だからこそULTRA JAPANはそこに「ファッション性の高い空間と、ド派手なステージによる非日常性」を加える事で、更に欲望を掻き立て、出演者が発表される前から先行チケットが即完するようになったと思うんです。少なくとも「出演者が前提にあるムーブメント」だったらそんな事はあり得ない。TAICOCLUBや朝霧JAMのようなフェスが先行で売り切れるのも、あくまで「あの空間で間違いない音楽」っていうのがあるから売れるわけです。

 あくまで僕としては、今の「EDM=パリピが聴く音楽」は全く否定するつもりは無いんです。実際そうだと思うんです。ただ、その中には元々2014年にムーブメント化する前からEDMの事が好きで、ムーブメントになった時は感慨深かったのだけれど、次第に「EDM聴いてるの?パリピじゃんww」って言われるようになって、しまいには「EDM聴いてるやつ頭おかしいw」なんて言われるようになって、「EDMみたいなパリピ文化早く終わればいいのに」って言われて悲しむ人もいるんだって事が伝わればいいなぁと思うんですよね。

 つまり、今のEDMムーブメントにおけるコア層、ライト層、ミーハー層っていうのは、

 コア層=EDMが音楽的に好きな人達

 ライト層=EDMの現象が好きな人達

 ミーハー層=EDMの現象を傍目に見ている人達

 だと思うんですよ。日本でULTRA JAPANを仕掛けている人達はULTRA JAPANをカルチャーとして定着させたいと語っていますけど、だとしたらまず変わりつつあるミーハー層の考え方を変えないといけないんじゃないでしょうか。全てが終わる前に。ライト層に関しては、海外では完全に移行しつつある音楽性の変化が日本でも可能なのかどうか、これはやってみないと分からないですよね。Kygoとかが上手く売れてくれればいいんですけど。

 Zeddのライブレポートでも書きましたけど、僕がEDMムーブメントが日本に来て一番喜びを感じたのは、"Clarity"が数万人のフロアに投下された時に、人種も性別も年齢も属性も関係なく一体となって喜びを共有したあの瞬間なんですよ。本当凄かったんですから。初めてこの曲を聴いた時から3年も待ったんです。こんなに楽しい空間、安易に消費されたら困るんですよ。コア層が増えるポテンシャルはまだまだあると思うんですよ。

 厳密に言うとこの曲はいわゆるEDMでは無いんですけど、僕が一番大好きなEDMの曲に「We Are Your Friends」っていうのがあります。これは2006年に、当時のダンスミュージックシーンで衝撃的なブレイクを果たしたフランスのユニットのJusticeが、Simian(後のSimian Mobile Disco)というバンドの曲をリミックスしたものです。2016年現在でもかなり多くのDJがこの曲をセットに組み込んでいるアンセム中のアンセムです。去年のULTRA MUSIC FESTIVALの大トリを務めたSkrillexのセットや、今年のelectroxの大トリのAfrojackのセットにも投入されています。

 この曲の歌詞、もう超シンプルです。そしてそこに全てが詰まっています。

Because we are your friends.

You'll never be alone again.

Well come on.

[和訳]

僕たちは、君の友達なんだ

だから、もう二度と一人ぼっちにならなくていいんだよ

さあ、おいで

 一応Part3もあるんですけど、そこではEDMの音楽性にフォーカスを当てる予定です。

(余談)

 このシリーズを書こうと思ったのは、まさに今回紹介した「パリピ経済」と、それに伴って2012年頃から日本にEDMを紹介してきたTomo Hirataさんが自身のブログに反論めいた内容を投稿したのがきっかけなんですね。

EDM PRESS - 原田曜平さんの「パリピ経済」とEDMを考える

 その後、直接原田曜平さんと議論した内容がこちら。

EDM PRESS - 「パリピ経済」の原田曜平さんとTwitterでお話しました

 これを読んでいて物凄くモヤモヤしたんですよ。で、その原因の一つとして、双方の思い描いている「パリピ」がまず食い違っていて、更に僕の周りで使われている「パリピ」とも違うって事があるんじゃないかと思ったんですね。原田曜平さんにとっての「パリピ」は冒頭の記事の通りで、それは僕の環境で考えると、「コミュニケーション好きな富裕層」なんですよ。一方で恐らくTomo Hirataさんはパリピを限りなくマイルドヤンキー的な存在だと考えている。マナーの悪い、本質を理解しない、馬鹿騒ぎするだけして、ブームが去ると共に消えていくような存在。

 一方で、レイクのCMなどを通して、「パリピ」って言葉はさらにどんどん広がっていって、それこそイルマニアやあっくんのような存在から一般層に認知されていったのが、徐々に丸みを帯びていって、今では単なる「遊び好き」くらいの意味になり始めている。一方で、「パリピ」という言葉を聞いて出てくるイメージみたいなのは、徐々にテンプレ化しつつあって、いくつか例を挙げていくと、

僕のパリピのイメージwwwwwwwww / ☆イニ☆(じん)
(主にtwitter、YouTubeで若者を中心に人気の人物) (2016)

【おもしろパリピ】海でケンカ!?いやいや、ただのパリピだったww
(2015)

 前者についてはコメントを控えます両方のコメント欄についてもコメントを控えます。後者に関してはSNSを中心に若干バズりまして、映像中で披露されているダンスが「パリピダンス」と命名されてBGMに使われているW&Wの"Rave After Rave"と合わせて人気に。しかし、動きが単純すぎるからか独自の進化が発生し、一時期メルボルンシャッフルの簡易版みたいな感じになり、今では「難しくない振り付けで、見た目がかっこ良くて、みんなで踊れる」部分だけをキープして各方面(イベントサークル等)で様々な振り付けが見られるようになりました。詳しくはtwitterかInstagramで「パリピダンス」と調べて下さい。この「パリピダンス」に関しては、クラブを中心に激しい議論が行われております。僕は好きじゃないとだけ言っておきますね。

 つまり徐々に「パリピ」のイメージが"ネタとして"固まりつつある。ということは、恐らく先が長くない。来年には死語になっているんじゃないかという予感がします。

 日本におけるEDMブームで最も厳しい部分は、EDMのムーブメントとパリピのムーブメントがほぼ同時期に発生して、しかもリンクしてしまったことだと思うんですよ。これは完全に日本独自の現象ですからね。下手すれば「パリピ」が死語になると同時に「EDM」も死語になるんじゃないのかって凄い不安なんですよ。いや、死ぬなら死ぬで新しい言葉見つけるからそれでいいんですけどね。

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ノイ村

26歳の会社員。趣味で音楽の事を書いてます。第一回「rockin'on presents ONGAKU-BUN 音楽文大賞」入賞。 連絡先 : neu_mura@outlook.com

音楽の話をしよう。軽めに。

最近では1分で読めなくなってきている音楽コラム。
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