真実の雷鳴が響く。 -トランプ大統領前夜にGorillazが放った4年ぶりの新曲、"Hallelujah Money"を和訳してみた-

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


 アメリカから帰国してもなお、トラウマのように脳裏にこびりついて離れない一日がある。ドナルド・トランプが大統領選に勝利した翌日のことだ。

 ホームステイ先のバングラデシュ人のお母さんに、いつものように車で大学まで送ってもらう途中の沈み込んだ空気。「あの男以外なら誰でも良かった...。なのに何故...。」と呟きながら、僅かな気力でハンドルを握っていたあの表情。

 大学に着いてみると、既に僕よりも先に到着していたアメリカ人の同僚が、ホワイトボードに「Make America Racist Again」と書き殴っていた。表情は怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えて、僕がいつものように「Good Morning」と声をかけると、「Goodじゃないよ...」と返されてしまった。

 別の同僚は戸惑いながらも自分の心情を、やたらと長い文章と共にFacebook上にポストして、それをみんながシェアしていて、しばらくすると自分のFacebookの画面は見ず知らずの他人の意見で埋まっていた。これで天気が晴れていればせめてもの救いだったのだけど、残念ながらその日は一日中曇りだった。

 みんなでランチタイム中に彼の問題点を指摘して、公開討論会の翌日はいかに酷かったかを共有して、彼のモノマネをして笑いあって、よく分からなかった僕が「でもなんでトランプは人気があるの?」と聞いたら「Uneducated White Peopleが支持してるのさ」と返してくるような日々を一年くらい続けていたのだ。落ち込むのも無理はない。


 さて、ニューヨークはこんな感じだったけれど、少なくともドナルド・トランプは、ニュースを見ればわかる通り大統領になっている。彼は選挙に勝ったのだ。とはいえ、それがアメリカの総意だとか、これが真実なんだとか、それはそれでまた話が違ってくる。何せ総得票数でいえばヒラリー・クリントンが勝っているわけで、ちょうどアメリカが半分に分かれている感じだ。TIME誌が昨年のパーソン・オブ・ザ・イヤーにドナルド・トランプを選出したけれど、その表紙には「President of Divided States of America(分断されたアメリカの大統領)」と書かれていた。

 アメリカは、アートと政治が比較的密接に繋がっているタイプの国である。大統領選の渦中で、様々な音楽家が様々な意見を発信していた。選挙の日に無料でコンサートを開き、そのまま観客と共に投票所まで向かっていったChance the Rapperという例もあれば、ヒラリー・クリントンを最初から最後まで全面的に支援していたKaty PerryやLady Gagaという例もある。あるいは、選挙が終わった後とはいえ、コンサート中に「投票はしなかったが、もし入れるとしたらトランプに入れていた」と発言して、更には実際に会いにいったKanye Westなんて例もある。誰が何を言おうと自由だ。それも含めてアートなのだから。



 さて、僕が大好きなカートゥーン・バンドのGorillazが、2017年、遂に約7年ぶりに新作を発表します。Gorillazに関してはここでは詳しくは書きませんが、この曲は知ってる!という方は多いのではないでしょうか。

 そう、iPodが爆発的な大ヒットを記録していた2005年。その時期のコマーシャルに起用されていたのが、Gorillazの"Feel Good Inc."です。今聴いても完璧な楽曲、そして完璧なMVですね。

 そんな彼ら、3rdアルバムが発表された2010年以来、表立ったリリースは数枚のシングルを除いてありませんが、中の人の活動が落ち着いてきたからか、いよいよGorillazが本格的に再始動することに。The xxやArcade Fireらと並んで、2017年最重要作品の一つとも言われています。

 そして、ドナルド・トランプが大統領に就任する前日、突然4年ぶりの新曲が発表されたのです。タイトルは、「Hallelujah Money」。


 この楽曲はアルバムからの先行シングルではなく、あくまで独立した楽曲とのこと。何かを不安がっている人にとっては朗報かもしれません。

 さぁ、遂に戻ってきたGorillaz。彼らはこのタイミングで何を歌うのでしょうか。Geniusを参考にしながら和訳してみました。誤訳があったら申し訳ありません。お楽しみください。トランプ・タワーの中で、何が歌われているのでしょうか。


Here is our tree

That primitively grows

ここに、健やかに育つ我々の木がある。

When we go to bed

Scare crows from the Far a-East

Come to eat its tender fruits

我々が眠る時、極東からやってきた案山子たちが、その柔らかな果実を食べに来る。

(訳注:中国を筆頭とした極東の国々がアメリカの経済に悪影響を与えているということ)

I have thought that the

Best way to protect our tree

Is by building walls

私は考えた。我々の木を守るためには、壁を作るのが一番であると。

(訳注:メキシコとの国境に壁を作ること)

Walls like unicorns in full glory and galore

栄光と豊かさに満ちた、ユニコーンのような壁だ。

(訳注:ユニコーンは実在しない動物)

Even stronger than the walls of Jericho

その壁は、エリコの壁よりも強いのだ。

(訳注:エリコの壁とは、聖書に書かれているエリコという街の城壁で、歴史上初めて出てくる防壁のこと。)

But glad then my friend

Out in the field we shall reap a better day

私の友に感謝しよう。

その場所の外側で、我々は良い日々を刈り取ろうじゃないか。

What we have always dreamt of having

Are now for the starving

我々がずっと手に入れることを夢見ていたものは、

今では飢えた人々のためにある。

It is love

That is the root of all evil

Not our tree

それは愛だ。

全ての悪の根源だ。

そして、それは我々の木の根本には無いのだ。

And thank you my friend

For trusting me

私の友に感謝しよう。

私を信じてくれたことを。


Hallelujah Money

ハレルヤ、マネー


How will we know

When the morning comes

We are still human.

これから僕たちはどうやって知るんだろう?

いつ朝がやってくるのか。

僕たちはまだ人間なんだ。

How will we know?

How will we dream?

How will we love?

How will we know?

これから、どうやって知るんだろう?

どうやって夢を見るんだろう?

どうやって愛するんだろう?

どうやって知るんだろう?


Don’t worry my friend

If this be the end

Then so shall it be

Until we say so

Nothing will move

心配するな、友よ。

もしこれが終わりだというのなら、

そうなるのかもしれない。

しかし、我々がそれを認めるまでは、

何も変わることはないのだ。

Ah, don't worry

It's not against our morals

あぁ、心配することはない。

我々の道徳に反してなどいないのだから。

It's legally tender

Touch my friend

これは"legally tender"なんだ。

私の友達に触るがいいさ。

(訳注:"legal tender"を直訳すると「貨幣」で、前段の流れで意味が通じるが、"合法的な幼さ"とも訳すことが出来る。つまり、お金と13歳少女への性的暴行疑惑を筆頭としたトランプの性的暴行問題のダブルミーニング。つまり「友達」が誰なのか、何なのか...)

What the whole world

And whole beasts of nations desire

全世界中が、

そして、全ての国家の野獣たちが欲しているもの。

Power

それは力だ。


When the morning comes

We are still human

朝が来ても、僕たちはまだ人間だ。

How will we know?

How will we dream?

How will we love?

How will we know?

これから、どうやって僕たちは知るんだろう?

どうやって夢を見るんだろう?

どうやって愛するんだろう?

どうやって知るんだろう?


Hallelujah Money

ハレルヤ、マネー

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4

ノイ村

音楽の話をしよう。軽めに。

最近では1分で読めなくなってきている音楽コラム。

コメント2件

トランプ支持層にも様々な人々がいるのでしょうがもっともわかりやすく真実に近い括り方は Uneducated White People が適しているのだろうと感じます。ミュージシャンたちも意思表示に躊躇のない、その上でこういう結果を生むアメリカという国をつくづく不思議な国だと思います。今年もさまざまな音楽、楽しみにしております。
>tokoさん
とにかくアメリカという国は巨大なんですよね。だからこそ、何がマジョリティで何がマイノリティなのか分からなくなっていたんですよね。すると、どうしてもエンターテイメントが分かりやすいものとして見えてくるので、外側からはそれがアメリカの意思のように見えてきます。ただ、実際はそうではなくて、もっと入り組んでいたみたいな感じなのかなぁと思っています。
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