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我々は上手くやれているのか? -サマソニと、2018年の「洋楽」シーン-

 今年のサマソニの動員が微妙だったことは、既に誰もが語る通りで、今回のnoteもそれを前提に書いていきます。実際の数字としては、合計で138000人とのことで、完売時が約20万人だと考えるとかなりしんどい数字でしたね。

 今回は三段階に掘り下げて考えていこうと思うのですが、長いので結論だけ先に書いておきます。

Step.1 フジやULTRAのように、サマソニをブランド化する→サマソニの構造自体が変わらない限り無理。Step.2 洋楽シーン自体をブランド化する→ガイド役が存在せず、探す時間も無いので厳しい。Step.3 ミュージシャンやファンがガイド役になる→これならまだ頑張れる?

1. 別に音楽だけが主役ではないフジロックとULTRA JAPAN

 冒頭に引用したnoteの記事にもある通り、サマソニは出るメンツが動員に直結するフェスです。正直なところ、東京公演にELLEGARDENとMr.Childrenをそれぞれ配置すれば完売近くまではいったんじゃないかというのが僕の推測ですが、それを言ったところで問題は何も解決しないのでこの話はここで終わります。要は、サマソニは「音楽が主役」なんです。

 フジロックやULTRA JAPANは必ずしもそうではないですよね。
 もし、フジロックの会場が新潟の山奥ではなく、サマソニと全く同じスタジアムと幕張メッセだったら?
 もし、ULTRA JAPANのステージセットからLEDを全て取り除いたら?
 多分動員が驚くほど下がるはずです。それは別に否定的な意味ではなくて、フジロックはあの場所で過ごす事、ULTRAはあの巨大なステージセット、それ自体が「フェスの体験の一つ」です。


 これは完全に余談ですが、去年、合コンの二次会カラオケでフジファブリックを歌ったんですけど、女の子から「えー、フジロックっぽい」と言われて不評だったんですね。それって要は、「フジロック」自体がブランド化していて、人によっては嫌悪感を示す場合もあるということ。今年のマキシマム ザ ホルモンもMCで「どうせお前ら、モヒート越しの空とかインスタにアップすんだろ!?」とネタにしていましたが、要は音楽好きの範囲を超えて、フジロックという概念は定着しているんです。ULTRA JAPANについては言わずもがなですよね。

 一方でサマソニについてはブランド化の面で言うと上手くいっているとはとても思えず、それはそもそものコンセプトが「都市型音楽フェス」という、利便性特化型だから。正直なところ、サマソニについては会場の魅力は皆無で、あれは実質「単独公演の寄せ集め」です。でも、「音楽が主役」という意味ではそれで全く問題がないはずだった。アクセスの利便性が高い環境で、多くのライブを楽しむ事が出来る。それ以上に求める事は、元々はそれほど無かったはずなんです。しかし、フジロックのブランド化と、ULTRA JAPANの強烈にインスタ映えするステージが、「それ以上の何か」を求めさせるようになったのです。

 しかし、かつてのように「洋楽を聴く行為」自体がブランド化していれば、上記の問題は解決されるはず。でも、今はそうではない。前提として、「洋楽」を聴く人は減っている。

 誤解を与えないように書いておくと、Ed Sheeranを聴く人や、Taylor Swiftを聴く人、Bruno Marsを聴く人、Justin Bieberを聴く人、Ariana Grandeを聴く人はTik Tokを見れば分かる通り、滅茶苦茶います。でも、「洋楽を聴く人」は減っている

2. ガイド不在の洋楽シーン

 今年のサマソニのヘッドライナーはノエルギャラガーとベックでした。オルタナからヒップホップからジャズからEDMまで、全ジャンルの最先端総動員状態だったラインナップにおいて、ヘッドライナーがこの2組だったのは、要は「現状の最大公約数は今なお90年代洋楽ロック」という事。ポイントは、その時代は「シーンを横断して聴くのが普通だった」こと。レッチリを聴く人はレディへも聴いてるし、そんな人はもちろんオアシスも聴いているし、UnderworldもNINも聴くし、若手のThe Strokesにも興味がある。だから、毎年フジやサマソニのメンツを楽しみにしている。恐らくそんな人々がこれまでの洋楽フェスの主要層だったはず。だからこそ、彼らがヘッドライナーになるのです。

 そもそも、ガイド役不在で、シーンを横断することは不可能です。では、一体何がガイド役だったのかというと、それはrockin'onやSNOOZER、CROSSBEATといった洋楽雑誌。あるいはタワーレコードやHMVといった外資系レコードショップです。表紙などをきっかけにして雑誌を手に取った人が、他のページを見て別のミュージシャンに関心を抱く。CDを買いに行った人が別のCDを試聴して、気に入ったので併せてレジに持っていく。そうやってシーンというものは作られていきました。

 ゼロ年代後半から10年代前半、米国ではKanye WestのMy Beatiful Dark Twisted Fantasyが地図を完全に塗り替え、大文字のロックが旧時代のものとなり、Vampire Weekendを筆頭としたインディ・ロックが過度に持ち上げられ、EDMが台頭し始めるという、現状に至るまでのかなり大きな動きが起きている時期でした。そしてそれは、日本の洋楽雑誌が軒並み廃刊か懐メロ方向に舵を切り、外資系レコードショップの閉店やアイドル推しが加速した時期と重なります。そもそもヒップホップの下地が無かった日本において、この動きは決して耐えられるものではなかったのです。

 結果として、海外の10年代前半の動きを真剣に追っていたのは、PitchforkやNMEといった海外メディアやSNSを駆使する熱心な音楽マニアに限られました。よりにもよってその時期に注目されたのがArcaやThe War on Drugsだったおかげで、いよいよこの時期の「日本における洋楽シーン」は崩壊します。ガイド役がいなくなり、ひたすら暗中模索の日々が続く。ただ、まだこの時期は「みんなのアンセム」として90年代の音楽が残っていました。

 ただ、今年の動員が示す通り、そろそろその時代に頼るのも限界が出てくる。例えば、"The Getaway"や"A Moon Shaped Pool"や"Death Magnetic"や"Revolution Radio"や"A Head Full of Dreams"が誰もが認めるキャリア最高傑作なら良いですけど、そう思われてはいないですよね?

 とはいえ、仮にガイド役がいたとしても厳しい時代であることに変わりはないでしょう。日本における"Shape of You"の知名度は相当なものだと思いますが、でもそれ以上にならない。何故なら、そこから広げようとは思わないから。"彼ら"は僕と違って忙しい。あまりにも処理すべき情報が多すぎて、もはやシーンを横断して音楽を聴いているような暇は無いんです。

3. ミュージシャンとファンが、シーンを作り上げる

 ここまで暗い話ばかり書いてきましたが、こんな時代だからこそのやり方というものは存在します。ガイド役が不在なら、ミュージシャン自身やファン自身がガイド役になればいい。時間がないなら、生活に割り込めばいい。

 現在、最も影響力のある音楽メディアは、他ならぬミュージシャン自身でしょう。Frank OceanがSuperorganismをフックアップしたり、Bruno MarsがCardi Bとコラボする時代。楽曲自体がメディアとなってファンが新たなミュージシャンを発見する事も出来ます。そして、それを広めるのは他ならぬファン自身。今年のフジでSuperorganismがレッドマーキーを超満員に埋めたのは、Frank Oceanをきっかけに音楽ファンがSNSで彼らをバズらせたからです。

 また、個人で頑張るのが辛ければ、最初から"シーン"として動けばいいという発想で、アジアの音楽の集合体とも言える88Risingが最初はYouTuberの音楽活動状態だったところから、LAでフェスを実現させるレベルまで大ブレイクを果たしたのも、今の時代を象徴していると言えるでしょう。彼らをバズらせたのも、またSNS上での動きです。大体日本のメディアでほとんど取り扱ってないHigher Brothersがサマソニで満員になったのは、もちろん海外からの客やフェスだからこそという要素もありますが、SNS上で音楽ファンが広げていった結果であるとも言えます。(まぁ単独はちょっと気が早かったですが..)

 今は、ミュージシャン自体がブランド化する時代です。そのために必要なのは音楽だけではなく、コンセプトやグラフィック、ライフスタイルに至るまで、カルチャーを乗りこなすということ。そしてそれをファンが普段の生活やSNSで自然に広げていく。

 BAD HOPやYENTOWNやKANDYTOWNが躍進を続けているのは、彼ら自身がファッションアイコンでもあり、音楽を主体にカルチャーを牽引する存在だから。BAD HOPの武道館公演がソールドアウトするのは、そんな時代の一つの象徴。ファンは、SupremeやOff-Whiteと同じような感覚で、ミュージシャンに接しているとも言えるでしょう。そんな様子を見たら、知らない人でも「BAD HOPって格好良いんだな」とブランドになっていくはずです。そういえばSuperorganismも今月のSWITCHでUNDERCOVERとコラボしてましたね。

 でも、実はそれだけでは不十分です。もし、ブランド自体が優れていても、それを身にまとうファンの質が低ければ、ブランドの価値は一気に崩壊していく。一方で、ファンの質が高ければ、価値は一気に上がっていく。音楽は、誰もがいつでもタダで聴けるものだからこそ、それを動かすのは実はとても難しい。

 正直、僕を含めて、音楽の事をよく書く人は一度考える必要があるのかもしれません。「果たして、自分は上手くやれているのか?」と。

 SNSが完全に普及した2018年において、あらゆるファンは同時に発信者でもある。あなたが投稿した何気ないSNSの投稿が、全く関係ない他人の行動や考えのきっかけになる。だからこそ、あなたや僕が支持する何かが"危うい"状態になった時には、他ならぬあなた自身や僕自身が行動を起こさなければならない

 その事を分かっていながら何も行動をせず、むしろ傷つけてしまうというなら、最大の加害者はあなたや僕になるでしょう。

 ミュージシャンだけではなく、あなたも僕も、もはやブランドなのですから。

 まぁ、結局のところ、「これ最高だな!」と思ったら、素直にシェアすれば良いんじゃないかなと思います。ただ、その発言に責任は持ちましょうね。

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26歳の会社員。趣味で音楽の事を書いてます。第一回「rockin'on presents ONGAKU-BUN 音楽文大賞」入賞。 連絡先 : neu_mura@outlook.com
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