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わたし的ミュージカル大賞2021

気がつけば、あっという間に年の瀬。2020年の年末がつい1ヶ月前くらいのことのように感じてしまうけれど、わたしの観劇録を眺めてみればしっかり1月から観た舞台の記憶があるので、どうやら本当に1年経ってしまったらしい。2020年の年末は1ヶ月前くらいのように感じるけど、1月の観劇は2年前くらいに観たくらいの記憶なのも不思議ですが。

ということで、2021年の観劇をまとめて、あれがよかった!再演したらこれを観てほしい!的なアレコレをまとめたいと思います。

言ってしまえば完全におたくの戯言なので、気にしないでね。

今年観たミュージカル作品

さて、まずわたしが今年何作品観たかというところから。iPhoneのメモ帳に毎月ぽちぽちと観た作品をメモしているのだけれど、数え間違い・漏れがなければ29作品のミュージカルを観劇していた。ひとくちに観たと言っても、いろんなパターンの作品があるのでとりあえずそこで分けてご紹介します。

世界初演or日本制作作品部門 3作品

  • イリュージョニスト

  • 17AGAIN

  • フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳

こちらの3作品は、興行的な公演が行われたのが世界初演(海外でクリエイター制作した作品を日本が最初に上演権を購入した)または日本発(日本の制作会社がクリエイターに依頼して制作した)作品になります。具体的には上の2作品が世界初演(イリュージョニストはフル演出ver.ができず、コンサート版上演)、最後の1作品が日本発作品です。

日本初演or新演出版部門 13作品

  • アリージャンス

  • BARUNUM

  • ウェイトレス

  • イン・ザ・ハイツ

  • メリリー・ウィー・ロール・アロング

  • ラスト5イヤーズ

  • アナと雪の女王

  • ジェイミー

  • ジャック・ザ・リッパー

  • ニュージーズ

  • オリバー!

  • グリース

  • October Sky

こちらの13作品は、海外ではすでに公演されていたり、日本でも昔上演されていた海外版権作品が、初めて日本で上演したor久しぶりに新演出で(制作会社も違ったりして)上演されたものです。どちらも体感では新作がやってきた!という気持ちなので、まとめました。

再演作品部門 13作品

  • パレード

  • 屋根の上のバイオリン弾き

  • ゴースト

  • スリル・ミー

  • ロミオ&ジュリエット(宝塚星組)

  • モーツァルト!

  • レ・ミゼラブル

  • マタ・ハリ

  • 王家の紋章

  • ドン・ジュアン

  • ソーホー・シンダーズ

  • ハウ・トゥー・サクシード

  • ストーリー・オブ・マイライフ

最後、同じ制作陣で数年以内にすでにやってる再演作品です。

この他にも、わたしが観られていないだけで素晴らしい作品が山ほどあったことと思いますが、今回は"わたし的"ミュージカル大賞ということで、この中からよかったものをご紹介していきたいと思います。有給も土日もお金も有限なので、本当は観たくて観られなかった作品がまだまだたくさんあるんですよ……。

総評

2020年2月頃からのコロナ禍の影響で、約2年ほどミュージカル(やその他演劇作品)はとても大変な時期が続いています。世の中ではなんとなく「もう大丈夫でしょ」という空気が流れていますが、1人かかったら公演が全部キャンセルになるかもという緊張感の中、劇場では検温・消毒などが続けられ、演者たちも打ち上げ等はしていない状況です。

それと同時に、元々はたまにミュージカルや舞台などを観ていた……くらいのライト層が中止になったり出かけにくい期間などで離れ気味になってしまったり、よく観劇する層であってもチケットを買い渋り気味になってしまったりしたのか、コロナ禍の前には見られた「評判がよかったから」と開幕後にチケットがどんどん売れるような動きが減り、空席が目立つ演目が増えたように感じています。

とても良かった、何度も号泣した作品の後方席がガラガラだったときはとても辛い……。

制作側も、「チケットが売れにくい」のを見越してなのか、以前より公演期間が短めの演目が増えたり、比較的上演権が安そう(これはこっちのイメージなので間違ってるかもしれない……)な演目が増えたりしているように感じています。違ったらごめんね。

真新しい、今の時代の価値観を描いた作品もある一方、この話をなんで今やろうと思ったんだろう?というような言ってしまえば古臭い雰囲気の作品も多くて、コロナ禍のいろんな苦労を勝手に感じています。違ったらごめんね。

初心者でも観やすい!!楽しい作品編

1位 17AGAIN

世界初演(パンフレットを読んだところ、正確には学生公演などは行われていたっぽいけど興行としては初)作品で、ザック・エフロンの映画をミュージカル化した作品です。

17歳、将来有望なバスケ選手だったマイクが将来を決める(スカウトが見に来ていた)試合の最中に彼女のスカーレットの妊娠を知り、バスケ選手の夢を捨てて彼女と結婚するが——時は流れて、35歳。リストラに遭い、メタボになり、すっかり冴えないおじさんになったマイクはついに離婚を言い渡されて家族と別居することになるが、ある日17歳の姿に戻ってしまう。自分が一番輝いていたときの姿で、幸せな今を取り戻すために奮闘する話。

ミュージカル初挑戦の竹内涼真さんが主演した作品です。世界初演の新作ということもあって、最初はチケットも苦戦していた印象ですが(最終的には多分そこそこ売れたのかな……?)、竹内涼真さんの好演が素晴らしかったです。歌が得意なのは知っていたけど、舞台初出演ながら、ミュージカル中心に活躍する俳優さんたちにも引けをとらない歌と圧倒的な華と座長として周囲を引っ張っていく姿と、0番(舞台の中心のことをこうやって言うので、転じて主演のことを指したりする)にふさわしい役者だ!と感じました。
妻・スカーレットを演じたソニンさん(カレーライスの女とE.E.JUMPしか知らない人に説明しておくと、彼女はミュージカル界で大活躍中)も素晴らしかった。ミュージカルほぼ初!みたいな若手の俳優さんも何人か参加していて、歌が不安定だったり頭を抱える場面はあったけど、どのキャストも役にとても合っていました。

コメディー映画が元の作品なので、内容もわかりやすくて楽しくて"良いエンターテインメント作品"で、17歳の姿を通して「何も見えていなかった35歳の男」が家族の再生に奮闘するちょっとホロっとくるシーンもあったりと、子どもから大人まで楽しめる作品だったんじゃないかな〜と感じました。
あと、性教育の重要さを知れる作品ですね。観たらわかる。

2位 ウェイトレス

日本初演作品で、こちらも同名の映画をもとに制作されたミュージカル。サラ・バレリスが音楽を手がけたことでも多分話題。ごめん、洋楽詳しくないからよく知らないんだ。日本では高畑充希さんが主演しました。声優の宮野真守さんも出演。

アメリカ南部の田舎町で、ダイナーでウェイトレスとして、大好きなパイを作って働きながら夫と2人で暮らすジュナ。ろくに働かない夫とのつまらない日々から抜け出したい!と思っている中、予期せぬ妊娠、産婦人科医のポマターと不倫をしてしまう。そんな中、パイ作りコンテストの開催を知り、その賞金で今の生活から抜け出すために新しいパイを作り始めるが——。

とても面白いし、誰でも楽しめるエンタメ作品だし、女性の生き方とかを描いてる作品だし、とすごくおすすめできる作品である一方、登場から5秒で観客に嫌われる夫のモラハラ・DV描写や結構生々しい雰囲気の不倫シーン(これ、高畑充希さんと宮野真守さんだからまだ楽しく観られたなって感じで、海外とかだとかなり際どくなりそう)と、うっかり有名な人が出てるし面白そうだから家族で観に行こっか♡って子どもを連れていくと大惨事になりそうな作品だったので、2位にしました。女に対して高圧的な男性が本当に苦手、観たくもない、みたいなレベルの人もおすすめできないかも。あと楽器を壊すのが許せないタイプも観たらダメです。(夫役がギターを壊すシーンがある)

海外だと、客席でパイを売ったりと劇場中にパイの甘い香りが充満していて、空間まるごと楽しめるそうですが、ロングラン公演をやらない(劇場全体を作品のために作り込みにくい)日本だとその辺は難しいんだろうなという印象。でも、舞台上では本当に粉振ってパイ生地作ってます。

あと、おばたのお兄さんが優勝。

3位 ハウ・トゥー・サクシード

こちらは2020年にNEWSの増田貴久さん主演で上演したものを再演したもの。ブロードウェイでは1960年代に初演され、日本でも宝塚などさまざまな主催で上演されている作品のようです。

窓ふきの仕事をしているフィンチは「HOW TO SUCCEED(努力しないで成功する方法)」という本を読んで、出世を目論んでワールド・ワイド・ウィケット社に入社する。入社後も、本に従ってとんとん拍子に出世をしていくが……。

年末近くに観た作品です。NEWSの増田貴久さんが主演で、ミュージカルとしては古めの作品ですが、ミュージカルを観たことない人が想像するTHE ミュージカル!な楽しい音楽と華やかなダンスシーン、わかりやすく楽しいストーリーのコメディー作品なので、初心者でも楽しみやすい作品だと感じました。

1960年代の作品なので、作品内の登場人物の価値観はいろいろ古臭さはありますが、作った時点でもその辺を皮肉った作品だろうと思うので楽しめました。


この部門に入れるか迷った作品としては、やっぱり「アナと雪の女王」ですね。こちらは劇団四季で上演していて、客足もそれなりだろうし、ロングランなのもあってテレビでも取り上げられる機会が多いし、わざわざわたしがおすすめしなくてもいいか……と思い入れませんでした。歓声を上げられない状況ではあるけれど、「Let it go」のラスト(1幕終わり)は思わずテンションが上がってしまいます。みんなもよく知っている作品ですが、アニメーションよりも一歩深まった描き方がされていると思います。あとオラフが可愛い。

不朽の名作編

レ・ミゼラブル

圧倒的名作ミュージカルです。1980年代に作られた作品で、日本でも1987年から大体2年に1回程度のペースで上演され続けている作品です。

パンを盗んだ罪で19年服役していたジャン・バルジャンの生涯を描いた作品

あらすじを説明しようと思ったけど、断念しました。話し出すと長くなるので……。司教に救われて仮出獄から逃げたバルジャンがコゼットを引き取ったりする前半〜フランス革命よりも少し(数十年)後の六月暴動が描かれてる後半って感じの内容です。まあ名作だしヒュー・ジャックマンで映画もやったので観たことある方も多いでしょう。

わたしは初めて観たのが2006年、そこから名古屋で上演するたびに観て、2013年以降は毎回何度も観ていて、思春期〜大人になるまで、繰り返し観続けても一切色褪せることのない名作中の名作ミュージカルです。

ヴィクトル・ユゴーの原作小説(文庫本で全5巻、とても長い)を3時間にまとめ、台詞はすべてメロディーに乗せられているという、「ミュージカルって突然歌うじゃん」というミュージカルをろくに観たことない人に言われがちなあの一言に「突然も何も全部歌ってるので……」と返せる安心設計。構成はプロローグ・第一部(ここまで1幕)・第二部って感じ。

ミュージカルがミュージカルたる所以が全て詰まっている、「ミュージカル化が上手すぎる」作品だと個人的には思っています!
理由としては、メロディーの使い方が素晴らしいところ。劇中のいろんなメロディーが繰り返し様々なシーンで使われていて、例えば冒頭の「囚人の歌」と第一部冒頭の「乞食たち」は虐げられて悲惨な日々を送っている人々を描いている……とか。プロローグのラストで主人公のバルジャンが歌う「バルジャンの独白」と第二部の終盤でバルジャンを追い続けていた警部・ジャベールが歌う「ジャベールの自殺」が全く同じメロディーだったりもします。どういう意図で同じメロディーかに気が付いた瞬間感動します。

メリリー・ウィー・ロール・アロング

レ・ミゼラブルと同年代に制作されたミュージカル。つい先日亡くなったミュージカル界の巨匠スティーヴン・ソンドハイム氏が作曲した、3人の男女の学生時代からの続く友人関係が如何にして壊れてしまったかを逆再生(40代→20代に向かってシーンの時代が遡っていく)で描くミュージカル。

ブロードウェイのミュージカル作曲家からプロデューサーに転身し大成功を収めたフランク。映画の成功を祝う彼のパーティーでは、親友で元作家のメアリーが飲んだくれていた。
全てを手に入れたフランクと、親友のメアリーとチャーリー。かつての大切な親友だった3人の関係がどうしてこうなるに至ったのかを逆再生で描いたミュージカル。

この作品は実際に制作されて上演された海外での初演時、大失敗に終わったそうです。当時、全て20代の若手や新人のフレッシュなキャストを集めて、この作品に臨んだそうですが、批評家の酷評が相次ぎ16回で終わったんだとか。日本でも8年前に宮本亜門氏演出で20代のキャストで上演されています。

冒頭がすごく暗いですがラストシーンは仲の良い3人の希望に満ち満ちた空気で終わり、2回目の観劇では彼らの過去をした上で最後を観ることになるので冒頭から涙がドバドバ出ます。大人が観るとどこまでもしんどいミュージカル。

偉大なる作曲家、スティーヴン・ソンドハイム氏に敬意を表して。R.I.P

屋根の上のバイオリン弾き

名作といえばこちらも外せません。名優・森繁久彌さんから受け継がれてきた50年以上上演され続ける名作です。

ウクライナ地方の小さな村「アナテフカ」で牛乳やを営むユダヤ人のテヴィエ一家。ユダヤ教の戒律を守って慎ましく幸せに暮らしていたが、ロシアでは次第に「ポグロム(ユダヤ人排斥)」がエスカレートしていく——。

現在は主演・市村正親さんが演じています。
ユダヤ人の価値観やルーツ、歴史などをある程度知らないと理解できないことも多い作品ですが、市村正親はやっぱりすごいし、しきたりソングはしばらく頭から離れません。
同時期にユダヤ人関連の作品も多くて、数年前に観たときよりもしんどさが深まっていた(こっちの問題)。


メリリー〜に関しては、不朽の名作枠もちょっと違う気もするんですが、すごくよかったので。実際に観劇する前は、ミュージカル「オリバー!」もこの枠に入るかと思っていましたが、こっちは正直作品として優れていたかと言われると「???」という感じだったので選外。市村正親さんと主役のオリバーや中心人物を演じた子役たちなど、役者さんは素晴らしかったです。

注釈付き作品編

ここでご紹介する2作品は、注釈付きというかなんというか、実際にアメリカで起こった事件を元にしたミュージカルです。特に2作目の方は「子どもを殺す」話で、生理的に観ていられない人も多いような作品ですが、ミュージカルとしての作りはどちらも素晴らしいのでご紹介だけ。

パレード

年始に3年ぶり?2度目の上演となった今作。南北戦争後のアメリカ南部で実際に起きた冤罪(だったと現在言われている)事件を元に描いたミュージカルです。レオ・フランク事件でググると元の事件が出てきますが、ショッキングな画像が検索で出てきてしまう事件なので、調べる際は要注意です。

アメリカ北部出身ユダヤ系アメリカ人であるレオ・フランクはジョージアで鉛筆工場の工場長として働いていた。戦没者追悼記念日のパレードの日、工場で働いていた女工の一人が工場内で殺され発見されてしまい、レオが犯人だと疑われてしまう。
レオの妻ルシールは、レオの無実を信じて彼の冤罪の証拠を探すのだった。

当時のアメリカ(南北戦争後)の世情や人種に対する価値観などが絡んで、工場で起きた殺人事件が冤罪事件へと発展するさま。大衆のおそろしさ。黒人への差別感情、ユダヤ人への差別感情、そして北部から南部への差別感情。観終わった後は言葉が出てこなくなる作品です。

パレードのシーンで淡々と降り積もっていくカラフルな美しい紙吹雪と、白い衣装を着た南部の人々——という場面全体のビジュアルが美しいのに、恐ろしくなってきます。

黒人の役柄シーンや歌はブラックミュージック系の音楽に切り替わるなど、人種の話を描いたミュージカルとしての音楽の使い方が巧みだなとも思います。

ちょうど、BLM運動が話題になった直後の上演でもあり、ものすごく考えた。

スリル・ミー

こちらも実際に起きた殺人事件を元に制作された2人芝居のミュージカル。ニーチェの超人思想に傾倒した幼馴染の学生2人が「スリルを楽しみたかった」という理由で犯罪にどんどん手を染めていく話。元となった事件はレオポルドとローブ事件でググると出てきます。

19歳の頃に犯した罪で34年服役していた"私"。
"彼"とともに起こした殺人事件について、刑務所の仮釈放審議会で問われた"私"は当時のできごとを語り始めるのだった。

男性2人とピアノ1本の演奏のみ、100分間の1幕ものでノンストップで描かれるミュージカルです。

先述の通り、実際の事件を元にした作品で、子どもを殺した犯人の青年2人を描いた作品なので、生理的に受け付けない方も多い作品です。

が、作品の構成や音楽などがすばらしく、私と彼を演じる役者や役者の組合せによっても全然違う印象になる濃厚な芝居を楽しめる作品なので、ファンも多い作品です。

今回は3つのペアで、10年前の日本初演からの復活ペア・前回公演からの続投ペア・オーディションで選ばれた新人ペアの3組でした。それぞれのペアに演出家の栗山民也氏から柱となるキーワードが用意されたそうで、順に「究極の愛」「資本主義の病」「生の暴走」。

個人的には「究極の愛」があまりにも良くて、今年初めて観られたペアだったけど本当に素晴らしかったです。

わたし的大賞

アリージャンス~忠誠

感動する!という意味ではぶっちぎりの1位です!
先程紹介したパレードも、今上演する意味をすごく感じるタイミングだったけど、こちらもそう。

サム・キムラの元にある日届いた訃報。それは50年前、喧嘩別れをした姉、ケイのものだった。
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約70年前、太平洋戦争で日系アメリカ人たちは強制収容所に入れられる。父と姉、祖父と共にハートマウンテン強制収容所に収容されたサムは「自分はアメリカで生まれ育ったアメリカ人だ」と軍隊に志願することで祖国への忠誠を示そうとする一方、姉ケイはアメリカへ反発する同じく日系人のフランキーと仲を深めていく。

ちょうどコロナ禍の中で、欧米でのアジア人ヘイトが高まってる・襲われる事件が起きた等の報道がされていた頃に上演されていました。学べるか~過去に~(CV.田代万里生)と思ってしまう。

太平洋戦争によって引き裂かれたキムラ一家を描いた作品で、海外での初演では老年のサムと祖父役を演じたジョージ・タケイ氏が実際に戦争で体験したことを元に脚本が作られています。スタートレックとか出てる人らしいよ。

老年のサムを日本版で演じたのが上條恒彦さん。ラストシーンの芝居が本当に良くて、何度も観ましたが毎回ドバドバ泣きました。マスクの中が事故。

日本で産まれ育つと、日本側の戦争の話はよく目にする機会があるけど、近いようで遠い日系人たちが暮らしている国と(日系一世にとっては)祖国が戦うとき、どんな目にあったか……はあまり知る機会がなかったので、観ながらダメージも食らったし、気持ちがすれ違っていく家族を観るのもしんどいし、でもラストシーンは美しくて号泣。

当時のアメリカ軍には、日系人を集めた442部隊というものが編成されてたそうなのですが、特に過酷な任務に送り出されて大量に命を落としたり帰還しても負傷していたりする傷ついた彼らと、戦争が終わったときに(このシーンも原爆が落ちたことがわかる演出からの…でしんどい)白人のアメリカ兵が歌うVictory Swingの明るく軽快に「勝ったね!お前らヒーローだよ!酷いことしたけど水に流してね!」みたいな歌詞(そして曲が4・4・2拍子)の対比がエグい。

老年のサムが姉の幻を観ているシーンがあるのだけど、生者と死者がひと目でわかる絶妙な照明バランスもすごかったな。

ストーリー、演出、役者とどれも素晴らしかった!
チケットはちょっと売れ行き難航してたのだけど、ぜひ再演もしてほしいしいろんな人に観てほしいなと感じる作品でした。

ミュージカルで、ユダヤ人や黒人に関する人種問題を描いた作品は結構多いんですが、特にユダヤ人への差別って日本で生きているとあまり意識しない部分で。正直ユダヤ人がどうして排斥されるのか、そもそも全然わからないんですよね。ハプスブルク系の歴史を描いた小説とかを読んでも、ものすごくユダヤを毛嫌いしている人とかが出てくるんですが、宗教の差が原因のようだけど、なんでそこまで……?と思ってしまったりして、そもそもの根本がいろんな作品を観てもちょっと調べてみても、いまいちよくわからないなぁと思っていて。もっとその辺の歴史や感覚をしらないと作品の中身をきちんと咀嚼できないなってことが多いんです。先に挙げたパレードとか、屋根の上のバイオリン弾きとかもそうなんですけど。

で、アリージャンスは日本にルーツを持っている日系人たちに向けられるもので、戦争のこと自体もある程度知っていることの「向こう側」の話なので、わからなかったりわかりにくい部分が少ないなぁと思うので、日本で生まれ育っているミュージカルや演劇をあまり観たことない人にとってもスッと内容を咀嚼できる話かなぁと思います。

あと、ミュージカルで重要な歌が本当に上手い。主役の姉弟ケイとサムを演じる濱田めぐみさんと海宝直人さんはそれぞれミュージカル界屈指の歌唱力を誇るおふたりなので、素晴らしかったです。1幕終盤でケイが歌うHigherが圧巻。

その他、話しておきたい作品

マタ・ハリ

フランスで第一次世界大戦中にスパイとして活動したと言われる踊り子の女性のお話です。再演。

フランス軍諜報部の大佐・ラドゥーが戦時下でも国を自由に行き来できることに目をつけ、マタハリの元へスパイとして働くように持ちかけてくる。断ろうとするマタだったが、弱みを握られ引き受けることになってしまう。その頃、偶然出会ったパイロット・アルマンと恋に落ちるがー。


大賞でもないし、おすすめでもないですが、好きな作品です。ワイルドホーンの壮大な楽曲が素晴らしくてお気に入り。

今年公演から参加した新マタ・ハリである愛希れいかさんのお芝居も素晴らしかったです。

ミュージカルの音楽の楽しみ方の一つでもあるリプライズの使い方が上手かったり、台詞の使い方も上手かったり。ラスト付近の衣装係アンナとのシーンからの演出も好き。

ストーリー・オブ・マイライフ

エマ・ワトソンのやってた若草物語(映画)じゃないよ。

幼馴染のトーマスとアルヴィンは幼い頃に「どちらか先に死んだ方の弔辞を書く」と約束した。
作家になったトーマスは、亡くなったアルヴィンの弔辞を書くために地元へと戻ってくるが、なかなか書くことができない。見かねたアルヴィン(頭の中の)が二人の思い出の物語を語っていく。


年の瀬に観た作品。男2人のミュージカルで、2人ともほぼ出ずっぱり!なハードな作品。

スリルミーもそうなんですが、少人数カンパニーの作品って、役者の解釈や芝居でかなり作品の方向性が変わったりするのですが、回数観た人によれば回によってもかなり変わってたそうで。

わたしが観た回は、とても優しくて、泣きそうになりながら観てました。チケ難だったので泣いてる場合じゃないのよ。
なんて言えばいいかな、人生って辛いこともままならないこともたくさんあるけど、素晴らしいよね、と思いました。ラストの「これが全部」の曲のアルヴィンが優しくて、トーマスとのお別れで涙を流してたのが印象的でした。

イリュージョニスト

もっと観たいし早くフル演出ください!!!

フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳

楽しいです。
ミュージカルファンでも原作ファンでもそれなりに評価に差がありますが、年始にぴったりの作品だと思うのでよかったら。でも原作ファンで初めてミュージカル観た!って人が楽しんでるのをちらほら見かけるので、楽しいんじゃないかな。主演の大貫勇輔さんのアクションがすごい。あと、リン役の子役ちゃんの歌が激烈に上手くてみんな泣く。

大阪公演は1/8,9?とかで、名古屋公演は1/15,16。あとは1/4まで配信のアーカイブあるし、今日(12/31)中に配信チケット買えばGo Toで安い。


王家の紋章

少女になった気持ちで楽しみました。

カンパニーの皆さんがどうか穏やかに過ごせることを祈っています。ずーっと大好き。

まとめ

最後は駆け足で書きましたが、1年の観劇まとめでした!たくさんみたね!

自分の好みよりもミュージカル観たことない人におすすめ!を中心に書いたのですが。

コロナ禍を通して、エンタメなんて吹けば飛ぶということがわかってしまったけれど、それでもエンタメを楽しんで味わう権利はいつの時代もどこでも誰でも持っているものです。そしてときにはわたしたちに大切なことを教えてくれたり、悲しいことがあるときにはわたしたちの心を引き上げてくれたりする、とっても大切なものです。

2022年の皆様のエンタメライフがより良くなるようお祈りしております。

それでは、よい年末年始をお過ごしくださいませ!

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