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2024.2.4「友達にはならない」

うるうアドベントカレンダー16日目。
今日は2024年2月4日。
4年前の今日は、うるう新潟公演1日目です。

私に友達は、いらない。

マジルに友達になろうと言われ、ヨイチはタビュレーティングマシンを動かしながらこう言います。


ヨイチが森にやってきたマジルに対して、なんども「友達にはならない」と突き返す場面。
チェロのピチカートのリズムに乗せて、それは何日にもわたって続いているようです。

この場面ではヨイチがマジルの誘いを断りながら、森での生活を送る様子が描かれています。
ここでは、ヨイチがどのように日々を過ごしているかについて取り上げてみたいと思います。

日記

最初に「友達にはならない」と断る時、ヨイチは何か書きものをしています。
大きな本に羽根のペンを使って、何かを書きこんでいます。マジルと出会った日、彼が「ま、じ、る」と口を動かしながらその名前を書き込んでいた日記です。

過去の日記と比べてみよう。
ええと、4年前、8年前、12年前。
この頃は、どうだったかなあ。

過去のオリンピックの記録を見返そうとして、ヨイチは昔の日記を取り出しています。40年後にも同じように日記を取り出しているところを見ると、彼は長年にわたって日記を書き続けているようです。

森の中での生活は、時間の流れがわからなくなることも多いでしょう。季節のめぐりは目に見えても、今日が何月何日なのか、「数を数えない」森の中ではわからなくなってしまうことも多いはずです。
そうした日々を生きていく上で、日記はヨイチにとってかかせない習慣なのではないかと想像されます。
目にした周囲の変化や感情の機微を少しでも日記に残しておくことは、人よりも4倍の長さを生き続ける彼にとって、時間の流れをとらえる上で大きな意味を持っているのではないでしょうか。

縫いもの

マジルが何度もやってくるとき、ヨイチは縫い物をしていたり、洗濯ものを干していたりします。
「ズボンのあまり布」の話にもあるように、ヨイチは昔から自分のための服を手に入れられずに、あまった布をもらってきて衣服を縫っていたようです。

ヨイチの衣装は、初演・再演と再々演で変化しました。

『うるう』の衣装が展示された展覧会

初演~再演の衣装が展示されていた2019年の展覧会の時の衣装のメモを、以下に引用します。

・縫い方があえて雑にしてあり、布地がほつれている。
・マフラー:毛皮が一部入っていた。
・ブラウス:左右のポケットもボタンも全て違うデザイン。右ポケットは後から付けたような、別の布地でほつれている。腰辺りに糸で×が縫われている。
・サスペンダー:ボタンは金属製が1つ、金属製のものが3つ。留め具はなめした皮で、左右のボタンが違う。
・ズボン:布は全体的に冬物っぽいが、ジーンズの布も入っている。真ん中のボタンには椿のような彫の入った、昔ながらの雰囲気のもの。
・靴下:横縞模様で、右に赤が入っているけれど左はもっとくすんだ色合いで、それぞれ配色が違う。
・靴:右が黒、左が赤、どちらも傷がついている。

再再演でも同じように、左右のボタンや靴が異なっていたり、色々な種類の布を繋ぎ合わせて作られている様子が見て取れました。(私は再再演の映像を見ることができないままこれを書いているので、確認できませんが..….)
森のなかで新しい服を手に入れることは難しいはずです。拾ってきたいろいろなものを生かして衣服を作ることは、彼にとって日々の生活の一部になっているのでしょう。

ラジオ

さあ最終コーナーを回って直線コースに入りました。
日本は先頭集団に、入っているぞ。

ヨイチはラジオを聴くのが習慣となっているようです。
森の中で唯一外の世界とつながる手段として、ラジオは彼にとって重要な存在であるはずです。社会で起きているニュースも、このラジオひとつから手に入れているのでしょう。

ヨイチの生活は一人で事足りるように閉じています。生きていくために必要な食べ物は、野菜の栽培とウサギやキツネの狩猟によってまかなえています。
衣服を自分で縫い、洗濯ものを干し、その日にあったことを日記に残す。外の世界から見れば恐ろしいほどの孤独を抱えているように見えても、彼の日常は一見私たちと同じように、淡々と過ぎて行っているようです。
私たちの4倍もの長さを生きているのですから、一般的な人間の生活以上に、日々の習慣がルーティーンのようになっているのかもしれません。

ヨイチの昔話は、そのほとんどが人間社会に生きていたころのものばかりです。人との関わりを絶ち森で生きている今は、当時とは時間の流れ方もまったく違って感じられているはずです。
外界との繋がりがラジオだけであった彼の日々にとって、マジルの登場は大きな衝撃であったことでしょう。
ヨイチが「友達にはならない」と断るだけの会話であっても、彼の日々は確実にそれまでとは違った思い出へと変わっています。

【うるう日記】2020.2.4 新潟公演1日目

新潟に向かう途中のバスが途中下車した場所の景色に圧倒されていました。

りゅーとぴあの目の前の河原には美しい夕焼けが広がっていました。



音響がよく響く。ブリーゼに近い? 声はそのまま響いているように聞こえる。
ヨイチが子供のように見える時が多かった。
 
・「ウサギか? キツネか?」すごく嬉しそう。
・「いつもひとつたりない」 最後の一つ、ヨイチが叩かずにすっと消える。それもせつない。
・「あまる!」それほどリズムに乗せずに歌う。後ろに行くときに指を鳴らした
・穴 下は狭いので落ちず、横になり「休んでいるわけではない、ちょっと深くて高くてびっくりしただけだ」
・「…私か」強い感情。そのあとのチェロもきしむような音
・待つ時、腰かけて横を向いてうなだれる姿が良かった。
・ふくろうオバケの帽子をかぶって「うるうー!」と叫ぶとき、やっぱりマジルの反応を見ている。「どうした?」の後も色々言っている。
・抱き締められる前、あっ、という表情。
・最後、マジルが立ってから明らかに息が荒く、目を見開いている。
・グランダールボ、白線の輪郭がなくなり、ぼかしたような姿になった。

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