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なつのしじま #HOTELmoshica

この世のどこかにあるかもしれないし、なかったかもしれない"HOTEL moshica"。

とある湖畔にある三角屋根のこの場所を訪れた名もなき旅人たちの物語を、言葉とお菓子で表現しています。

言葉は みいこ@miiko_nnn、お菓子はわたし。ユニット名はそのホテルの名前を冠して"HOTEL moshica"と申します。

今までの活動の記録はこちらからどうぞ。



さて、8月の最後の日に京都の恵文社さんで行われたイベント「なつのしじま」に出展させていただきました。

お越しいただいたみなさま、呼んでいただいたsou.fil.さん円卓さん、出展者のみなさま、ありがとうございました。

会場では入り口の近くのテーブルに、お菓子とことばを、わたしたちの考える「なつのしじま」になぞらえて並べさせていただきました。
南三陸から届いたシーグラスが素敵な色合い。

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今回のHOTEL moshica、全体をまとめたおはなしから、
どうぞ、つまみぐいをするような気持ちで、お楽しみください。


湖畔にひっそり佇むHOTELmoshicaでは、
短い夏が終わりに近づいている。

「夏の静寂が待ち遠しい」

 ホテルの主が心の声をそのまま小さく読み上げた。
この季節になると、毎年きまってお菓子のオーダーを受ける
ふたりぶんの、とびきり美味しいお菓子を、と。

休暇の滞在も終盤に差し掛かり、
ほとんの宿泊客は日常生活に戻っていった。
静けさを思い出したかのようなHOTELmoshicaに
訪れたお客様は、小さな女の子。
ホテルの"主"にだけ見える、特別なお客様。

砂糖菓子のような甘い香りをまとって、やってくる。
ホテルの野草のなかで、ワンピースを
そよそよと風に遊ばせている。


なつのしじまにやってきた、ちいさなお客さまのために考えたメニューはこちら。
引用部分はみいこさんのことばです。


・カッサータ

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<宝石箱アイスケーキ>

 スプーンでひとすくい
甘くよみがえる
記憶の結晶

 宝石箱に散りばめた
永遠のきらめき

 懐かしさが溶けだす、3分間

 そこにあった冷たさは
どこへ消えてゆくの?

オレンジピール、ナッツ、チョコレートが入ったクリームチーズのムースを凍らせた、シチリアのアイスケーキ。

酸いも甘いも思い出をぜんぶ、凍らせてしまえば、永遠になるのかな。

・スフレチーズケーキ
・ラベンダーのチーズケーキ

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<泡沫チーズケーキ>

 うたかたの
泡より儚く
たゆたう姿

 まばゆい光を
覗き込むように
眼を細めて追いかけた
エーテル

 この世界のありかは
曖昧で
しろくて
うつくしい

細やかな空気がしゅわしゅわと混ぜ込まれた、うたかたのスフレチーズケーキ。
いつか、泡になって消えてしまうのかもしれない。

目には見えずとも、確かに存在するラベンダーの香りのチーズケーキ。
実態のない存在は今日もたゆたう。

・カシスとホワイトチョコのケーキ 
・ブルーベリーとサワークリームのケーキ

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<静かな夜色パウンドケーキ>

 西の空
零れた光に
ゆれた蝶々むすび

 東の空
野花たちは
夜の色を実らせて

 月の海辺のように
夏のしじまが満ちる場所
空っぽのいちばん奥深く

カシスのピューレとホワイトチョコを混ぜた、甘酸っぱいケーキと、
バターの代わりにサワークリームで軽さを出し、ブルーベリーのおもちゃみたいな甘さをアクセントにしたケーキ。

このふたつは夏に似合う味を考えて、そこに言葉と情景ををもらいました。


・チャイのクッキー
・レモンのクッキー
・マンゴーとココナッツのグラノーラ

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<蜃気楼クッキー&グラノーラ>

 星屑のまばたき
ふるえる響きは
ふたりの沈黙を飛びこえる

 サクサクサクッ

 いたずらな笑みを
映しだす窓はまるで
ミラージュ(蜃気楼)

夏が似合う味といえば、スパイス、レモン、ココナッツ。
どれも暑い国を連想させる味たち。

蜃気楼の中にゆらゆらと漂ってしまえば、輪郭は曖昧に、
そのまま、何処かへなくなって。


必要とされたときに、ひょっこり現れる気ままなHOTELとわたしたちです。
いつかまたどこかで、お会いできますように。

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