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世界の変え方について

こんにちは、新人VTuberの名梨ナイです。
14歳です。普段は旅のようなことをしています。
今回は世界の変え方について、見て聴いたことを書きます。


よく聴くんです、いや、言われる。
世界を変えようとするんじゃなくて、自分が変わるべきだって。
多少はそう思います。
でも「多少」ですよ、だって、世界って嫌でも変わって行くでしょう。

そう言ったのは、旅の成り行きで出会った女の人で、その人はわたし、名梨ナイと道の先まで一緒に進むことになっていたのだった。

わたしは、いつも通りお仕事で、キャラバンからいつも通り荷物を預かって、今日は一人で、届けることになっていた。
(この荷物、というものがなんなのか、なんのために運んでいるのかは名梨ナイにもよくわかっていない)

なのでこの予想外の同行者は嬉しかった。
やはり、道すがら話す相手がいるというのはそれはそれで良さがある。
彼女はおしゃべりで、大変楽しく話していたのだが、ふとした拍子に静かに静かに、語り出したのだった。

「まあ、よく聴きますけども」とナイは相槌を打って見せた。
でも一体全体、何の話なのか、とんと理解は出来ていなかった。

「ああ、私はね、世界を変えたいんですよ」とその人は付け足した。

それは、自分次第で世界は変わる、のではないだろうか? と思ったけど、たぶんこの人が言いたいのはそうではないと思った。
女の人は少し考えていた、たぶんわたしにどうしたら伝わるのか、考えてくれていた。
なのでわたしにとって、この沈黙は気まずいものにはならなかった。

「例えばですが、とある村が差別されていてその村出身の人間が自分の希望した職種への就職や、進学が出来なかったとしたら、それは差別をなくすべきです。村の人たちが気持ちを変えたからと言って、事実が残るわけですからね」

なんか比喩が出てくるのかと思ったらめちゃめちゃ単純だった。

「なるほど」と頷いて見せた。

「私はね、腹が立つんです。先程のは《例え》ですけれど、んー……私が怒っているのは、上手く言えないんですが、そう、なんて言うのかな、この、気の持ちよう、みたいな、誤魔化されるような……」

「村の差別を誤魔化したがってる人がいるって事ですか?」

「そう、それです! これは別に差別だけではなくて、例えば病気の人は適切な治療が受けられた方がいいし、いじめとかもない方がいいです。
現実なんて全然気持ちで変わるわけがないのに、事実は残るのに、なんで誤魔化されなきゃいけないのかなって思うんですよ。
それにそういう事言う奴って殆ど当事者じゃないか、なんか乗り越え終わっちゃった人なんですよね」

「ほほう……」これはいかんスイッチを押したかな、と思いつつ、少し話を聞いてみることにした。

曰く彼女は、とある世界の仕組みを変える人だった、なんてこったそれは神様か? と言うと彼女は首を振った。

「私は私の手の届く範囲でしか、結局変えられませんでした、変えたのかも怪しいですね、裏目に出ることだってある」

やっぱりさっぱりよくわからなかった。

「でもね、やらないと死ぬ人間もいますから、常に考えて考えて考えて、次の手を打たないといけないんです。絶対になくなるものではないですから」

それは結局なんなんですか?と聞いてみた。
坂道は陽が照っていて、次の木陰にはまだ少しかかりそうで、彼女は首筋から汗を流していた。

「……全ての子どもは健やかに生きるべきです。なるべく、幸せに」
彼女は少し苦しそうに言った。

暑くて息が上がっているせいなのかもしれなかった。
じりじりと、道の終わりが少し滲んで見えていた。

今日はここまで。
2022年6月12日 名梨ナイ

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