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児相がうちにやってくる

「泣き声が心配という連絡が児童相談所にありました」


仕事帰りポストを覗くと、児童相談所と印刷された封筒。
それがニュースでよく聞く「ジソウ」だと繋がったのは、封筒の中身を見た後だった。
「子供の泣き声が心配という連絡が児童相談所にありました。」の一言に、体は硬直し、頭は真っ白になった。

え、それは、虐待を疑っているということでしょうか・・・?


「泣き声」と言われ、思い当たる節がないはずがない


子供がいる家で、「泣き声」と言われて心当たりがない家庭なんてあるだろうか?
赤ちゃんや子供は泣くもの。
でも、私たち夫婦の間で「常識の範囲内」と思っていることは、果たして本当に、世の中の誰からみても「常識」と理解されるものだろうか。

長男は、朝先に出勤する私を玄関まで追ってきて大泣きする日がある。
初めての夜勤の夜は、乳離れしていない次男は壮絶に泣き明かしたらしい。
先日は、天邪鬼と化した長男に「泣いてもダメなこともあるんだよ」を伝えるために、諦めるまで泣かせておいたこともあった。
ここ最近は、夜間断乳するために、泣きじゃくりながら夜中に何度も目を覚ます次男を抱っこで揺らし続けている。
ワンオペの日は、一人なだめて一人は泣いててもらうなんて当たり前だ。

感情的に叱りつけたり、手をあげたりはしていない。
我が家でそれは、夫婦で注意しあい、フォローしあい、約束している。
それでも、子供を泣かせてまで仕事をすることに1mmも迷いがないと言ったら嘘になる。
1枚の紙切れは、その隙間を狙って入り込み、自分の子育てを根本から不安にさせた。


ご連絡いただき調査にご協力を・・・

と手紙には記載されていたが、住所、地図、交通手段は書いてあるが、電話番号が書いていない。
直接行く必要があるのだろうか?と迷いながら、検索して電話をする。
結果、電話で問題なかったのだが(笑)。

なかなか担当者と連絡がつかず、モヤモヤした時間を過ごす。
モヤモヤの正体は、自分の子育てが間違っているのではないかという迷いであり、誰かに見張られているような恐怖であり、子供を泣かせることへの不安だった。

ようやく繋がった電話で、普段の暮らしぶり、泣き声への心当たり、私や夫の仕事のサイクル、保育園のこと、子育ての不安などヒアリングされた。
全てありのまま話した。
「どんな通報内容なのか」を教えて欲しかったがそれは濁され、その通報が本当に我が家のことなのか白黒つかない気持ち悪さは続いた。


児相がうちにやってくる〜噂の家庭訪問〜

電話で日程を調整し、児童福祉司が二人我が家に来ることになった。
家族揃って在宅している時間にした。

不安がピークに達していることを告白すると夫は、目を見開いて、こちらが驚くほど驚いていた。
「え!?やましいこと一つもないのになんでそんなに凹んでるの?(笑)
 カメラつけられても泊まっていっても困ること全然ないじゃん!?(笑)」
「君、それ、冤罪で取り調べ受けて、無実の罪を認めそうになってるヤツよ・・・(笑)。しっかりしてよ(笑)」

散りばめられた(笑)に救われた。
本当にこの人と結婚してよかったと心底思った。

約束の時間ちょうどにやってきた担当者は、驚くほど普通だった。
うまく言えないけれど、「調査される」という威圧感は全く感じなかった。
保育園でよく会うお母さんと通りがかりに雑談するような、程よい距離感と親しみが同居していて、「潔白を証明したい」と緊張していた私は数日ぶりに肩の力が抜けた。
そして、急な来客にも人懐っこく「いらっしゃいませ〜」「なんのお仕事なの?子供の安全パトロールなの?」「敬礼!」とはしゃいでいる長男を見て、あぁ、私たち家族は間違ってないと確認できた。
例え、見えない誰かが心配したとしても、この姿に自信を持てばいい。

私がこれまでとても不安だったことを伝えると、電話では教えてもらえなかった「通報の詳細」についても少しだけ教えてくれた。
通報で「心配」とされた泣き声の時間は、我が家の生活スタイルでは子供が不在にしている時間だった。

みんなで子供を見守るということの代償

子供を守るために、結果「大丈夫だったね」ということが大半でも、ほんのわずかな危険信号も見落とさないことが大切なことはわかっている。
通報する側も、迷い悩みながら、勇気を振り絞って電話を取ったことだろう。
でもその陰で、白または限りなく白に近いグレーな家庭がいくつも不安に揺れているということは、私も全く想像もしていなかった。

我が家は結果として、頼れる夫を実感し、子供のまっすぐな瞳を信じるに至り、自分の子育ての姿勢を客観的に見直す機会を得た。
雨降って地固まったわけだ。
でも、命を守るための小さな揺らぎが、家族に傷を残したり、子育ての息苦しさを強くするケースも少なくないのではないだろうか。

誰だって、迷いながら子育てしている。(うちの夫以外)
子供を見守るのと同時に、その家族もみんなで見守る・・・に変えていきたい。


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