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女教師と男子生徒の異常な関係【おすすめ1巻完結漫画】幸せのひこうき雲


定期的に読み返したくなる漫画には以下のような共通点がある。
①読後感の良さ
 基本的に後味の悪い作品や重い作品は、
 読み返すのに気合いが必要。
②テンポの良さ
 これは展開の早さというよりはコマの流れや
 台詞に対して、リズムに乗って読み進めれる
 かが重要になってくる。
③クセの強さ
 最も重要なポイント。
 他の作品では得ることの出来ない唯一無二の
 魅力があることで必然的に繰り返し読む回数が
 増える。
 代わりの効かない作品と言える。

好きな作品、心に残る作品はたくさんあるが、
これらの条件を満たすとなると一筋縄ではいかない。

今回はそんな関門を突破した一癖も二癖もある作品から一冊を紹介したいと思う。

※ネタバレ含みます

幸せのひこうき雲(全1巻)/安達哲

あらすじ

両親の離婚問題で、田舎の祖母の家に預けられた少年・丸籐竜二(がんどう・りゅうじ)。ひっこみじあんな彼は、転校した学校でも仲間に溶け込めず、孤立していた。ある日、日直で残された教室で、担任の美人教師・西條美津子(さいじょう・みつこ)のスカートを覗(のぞ)いてしまう。「バラされたくなかったら言うことを聞きなさい」それから竜二の、美津子の性奴隷としての日々が始まった――。愛を求める少年の異常な体験を通して、人生の切り開き方を考えさせられる、安達哲の傑作!
             (Amazonより引用)


あらすじの通り、とっつきにくい内容である。
要するに、小学生の男の子がサディスティック女教師から性的虐待を受けるお話である。

ヤンマガ連載作とは言え、現代では到底描けないような性描写が満載のため、読み手を選ぶ作品だとは思う。

清々しさを感じさせる"狂気"

ミスコン優勝の経歴を持つ西條美津子は田舎の小学校に勤務しているが、かつて夢見たスター女優への思いを燻らせている。
そんな彼女の心の奥底には"注目を浴びたい"という欲望が潜んでいた。
それが男子生徒 丸藤少年への性的暴行という歪んだ形で溢れ出す。
彼女はその行為がいつしか事件として公になり、報道によって世間の注目を浴びることを渇望していたのだ。

歪みに歪んだ西條先生の作中の行動は狂気そのものだ。

・校内での性的行為の強要(途中、現場を校務員に見つかるも顔色ひとつ変えず性教育だと言い張る) 

・全裸で車に乗り、そのまま帰宅

・少年に自分のオシッコを直飲みさせ「ああ気持ちいいわ」(このセリフとバックにひこうき雲の浮かぶ青空を描いた1ページが秀逸)


ぶっ飛んでいる。
が、しかし、創作物であることを前提に誤解のないよう言わせてもらうと、これらの描写が妙に美しく、清々しいとまで感じる。

美人女教師だからか、描写に陰鬱さがないからなのか、不思議と嫌悪感がない。
物語終盤、この違和感の根底が明らかになる。



終わり良ければの最適解

物語終盤、西條先生の行為を嗅ぎつけた教師は警察と共に事実を丸藤少年に問い詰める。
しかし、少年は「先生はなにもしていない」と嘘をつく。
その後、西條先生は「なぜ嘘をついたのか」「イヤな先生がいなくなればうれしいでしょ」と少年に詰め寄る。

しかし少年は、

「うれしくない」

「先生が好きだから」

と、先生に抱きつく少年。

このたった1コマで、
嗜虐の限りを描き続けた物語に爽やかな風が吹いた。


読み進めていく中、どんな結末が待ち受けているのか、想像もつかなかった。が、内容が内容なだけにきっと誰も救われずじっとりと幕を閉じるのだろうとなんとなくイメージしていた。
それが見事に覆される。
この快感は他作品ではなかなか味わうことが出来ないだろう。

その後も物語は少しだけ進み、意外な展開とエピローグを残して完結。
異常な行為の数々を見せつけられていたとは思えないほどの、爽やかな読後感を得られる不思議な一作だ。


(ちなみに、同著者の「さくらの唄」も大好きな作品だが、これもまた怒涛の展開の果ての妙に気持ちの良い読後感が癖になる。)

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