非財務情報の重要性について考えてみます
近年、投資家やステークホルダーが企業を評価するにあたって、「財務情報」だけではなく、「非財務情報」が重視されるようになっています。
この記事では・・・
そもそも非財務情報とは
非財務情報の具体例としては、以下のようなものがあります。
経営理念や経営計画:企業のビジョンやミッション、目標や戦略などを示す情報です。
リスク情報:企業経営に影響を与える可能性のある不確実のことです。例えば、市場環境の変化、競合他社の動向、法令遵守やコンプライアンス、災害や事故、内部統制や情報セキュリティなどが挙げられます。
ESG情報:環境・社会・企業統治に関する情報です。気候変動や人権、コーポレートガバナンスなどの課題に対する企業の取り組みやパフォーマンスを示す情報です。
人的資本:従業員やパートナーなど、企業に関わる人々の能力やモチベーション、健康、多様性などを示す情報です。
知的財産:特許や商標、ノウハウなど、企業が創出した独自の知識や技術を示す情報です。
ブランド:企業や商品・サービスのイメージや評判、認知度などを示す情報です。
これらの非財務情報は、企業の持続可能性や競争力に関わる重要な要素です。
投資家やステークホルダーは、これらの情報を参考にして、企業の将来性やリスクを判断します。そのため、非財務情報の開示は、企業にとって必要不可欠なことです。
なぜ、非財務情報が重視されるのか?
それは企業を取り巻く経営環境が目まぐるしく変化する中、財務情報だけでは企業価値を予測するのに限界があるからです。
5年後にどのようなリスクがあるか?財務情報では表すことができません。これを担うのは、企業が認識するリスク情報(非財務情報)です。
経済や社会の不確実性が高まる中、これと連動して、投資家やステークホルダーの関心が非財務情報に集まるのは自然な流れです。
環境、社会、ガバナンスを重視する企業に投資するESG投資の拡大も追い風になっています。金融危機をきっかけに短期的な利益主義に対する反省が広がり、より長期的な成長に着目した投資の重要性が再確認されるようになりました。
しかし財務情報だけでは長期予測は難しいため、より広い視点で企業の力を測る指標として、ESG情報が求められています。
非財務情報と企業価値に関係はあるのか?
非財務情報の充実が企業価値に及ぼす影響について考えてみましょう。
何をもって企業価値とするかは、さまざまな考え方があります。
ここでは、分かりやすく、PBR(株価純資産倍率)を基準に考えてみましょう。
PBRが1倍であれば、会計上の価値(財務資本)と企業価値は同等だと見なすことができます。
PBRが1倍を超えている企業は、財務資本よりも高い評価を受けていると言えます。この差額は「非財務資本」であり、非財務情報によって形成されていると考えることができます。
PwCによれば、優れた非財務情報を開示している企業と同じ業界平均とのPBRを比較したところ、開示の質とPBRには正の相関があるとしています。
また、ESG経営の日本の先駆けとも呼ばれる、医薬品メーカーのエーザイでは、ESGのKPIとPBRに正の相関があることを示し、非財務情報と企業価値の相関関係・定量効果を実証しました。
デロイト トーマツグループが開発したESGデータと企業価値の相関分析モデルでも、ESGスコアが高い企業ほどPBRが高くなる傾向があることが示されています。
これからの企業に求められることは何か?
非財務情報の開示は、単に情報を提供するだけでなく、その情報がどのように自社の企業価値につながっているかを分析し、経営の意思決定に活かすことが重要です。
また、非財務情報の開示にあたっては、標準化や義務化に向けた動きが活発化しており、適時・適切な開示のためのプロセスの構築や内部統制の強化も必要です。
さらに、非財務情報は、ステークホルダーとのコミュニケーションや信頼関係を構築するための手段でもあります。フィードバックや対話を促進することで、新たな価値や課題を発見することが重要になってきます。
まとめ
非財務情報は、投資家やステークホルダーが企業の経営戦略や経営課題、社会的および環境的なパフォーマンス、将来の成長性の確度などを理解する上で必要な情報です。
ESGをはじめとする社会的課題への対応は企業の存続や競争力に直結します。人材や知的財産やブランドなど、目に見えない資産を示す指標でもあり、これらの資産は、イノベーションや付加価値創造に欠かせないものです。
さらに、非財務情報の開示を通じて、ステークホルダーと対話や協働を行うことで、企業の持続可能性や競争力を訴求することができるばかりか、社会的課題の解決や持続可能な社会の実現に貢献することができます。
これからの企業は、非財務情報の開示や活用に積極的に取り組む必要があります。
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