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リフティングのお時間

ポーン、ポーン

僕は落ちてくるボールをただただ蹴り上げる。
落ちてくるボールを蹴り始めた時、僕の頭にはいろんなことが浮かんでいた。あの子はなんでこの前あんなことを言ったんだろうとか、あの子はひょっとして僕のことすきなんじゃないかとか帰ったら宿題しなきゃなとか今日のご飯はなんだろなとか。でもそのたびにボールが僕の体から離れてしまいそうになるものだから、僕はリフティングに集中せざるを得なかった。

ポーン、ポーン

落ちたボールを蹴り上げる。
ただただ蹴り上げる。
蹴り上げた数を数えてみる。1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,,,,
ボールは0に見える。僕のボールは青色の六角形と黒の五角形でできていたから、W2.0といったところかな。五角形が12枚、六角形が20枚,,,合計32枚の図形でこのサッカーボールはできている。なんで五角形と六角形でつくる必要があるんだろう?あ、危ない。落としそうだった。

ポーン、ポーン

僕がどれだけこのボールを蹴り上げようともボールは必ず落ちてくる。この先ご飯が待っているから僕はあともう少ししたらリフティングを止めなくちゃいけない。
僕はボールのために足をちょっとあげなくちゃいけない。
けど、僕はなんでボールが落ちることを知っているんだろう?
当たり前と言えば当たり前だ。ボールが落ちてこなきゃ僕もプカプカ浮かぶことになる。それに今までボールがプカプカ浮かぶことなんて一度もなかった。だから、ボールが落ちてくるって知ってるんだろう。

ポーン、ポーン

あ、そろそろ日が落ちてきた。あぁ、でもやっぱりやめたくないな~。
このまま永遠にリフティングしていたい。ボールに地面を知ってほしくない。ただリフティングすることに没頭していたい。
今日の風は強くない。だからちゃんとボールを蹴り上げてやればちゃんとボールは真上に向かう。それで真下に落ちてくる。その繰り替えし。そこに意味はない。意味なんかなくたっていい。みんな一生懸命何かをするけどさ、意味なんてないでしょ。けど、僕はリフティングをする。何度も言うけど意味なんていらない。ただただ永遠にリフティングをしていたい。

ポーン、ポーン

ポ—————————————————————————ン

そろそろご飯だからさすがに帰らなきゃと思った僕は最後にボールを高く高く蹴り上げた。

本当は真上に蹴り上げるつもりだったけど、力加減を間違えてあらぬ方向にボールを蹴ってしまい、高く高く上がったそのボールは富士山の標高を超え、大気圏を突破し、ものすごいスピードで等速直線運動をして人工衛星に直撃した。




数秒後、真っ赤に燃える流星を見て僕は思った。

天まで届け、僕のボール。



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