12の財宝、3パイル&NO幹事NO女子会製作日誌と反省

突然ですが皆さんは、【12の財宝、3パイル&NO幹事NO女子会】というトランプで遊ぶゲームを知っていますか。
このゲームはB5用紙の半分に12の財宝~、もう半分にNO幹事~のルールが印刷されており、ご家庭にあるトランプさえあればブラフゲームと変則バッティングゲームがお手軽に遊べますよ、というゲームです。
残念ですがこのゲームは実際、ご存じない方が多数かと思われます。なぜなら令和1年5月に富山県で行われたイベント『みんなのボードゲーム広場』で10部、同月ゲームマーケット2019春で6部、それ以外で2部。世の中に18部しか出回ってないゲームだからです。一般的に、このような記事に取り上げるゲームは「ゲムマで完売した」とか「○○○個売れた」という強力な背景があるものが一般的と思われます。
しかしこのゲームに関して、私が思うところをつらつらと述べようと思います。

1.ゲームを作るきっかけ


 12の財宝、3パイル
あくる日仕事で上手くいかない事があってふと「無いものをあると言って、有るものを無いと言わねばならない、というのはゲームになるのではないか。」と思い始めたのがきっかけです。同時に出てきたイメージは立川志の輔師匠の落語のまくらで「日本人は『相手に対して悪いなぁ』と、良かれと思って事態が悪化する。」というのが有りました。これらのイメージが重なっています。
 NO幹事NO女子会
ツイッターとかをぼんやり見ていると男女問わず「○○会やりたい」という声を良く見かけるんですが、そういう人ってやはり男女問わず往々にして自ら幹事にはならない。このあたりの感覚が自分とは違うものを感じたので、「何か理由とかがあるのだろう、何かな」と思案した結果出来上がったゲームです。その際は「皆、面倒な幹事にはなりたくないけど、その会ではより強い立場に立ちたいのではないか」という推察になりました。いわゆる副キャプテンを狙ってるという仮説ですね。

2.なぜトランプで?なぜルールだけ?


どちらもまったく別のきっかけで思いついたゲームですね。この2つのゲームがなぜ1枚のB5用紙に刷られて世に出ることになったのでしょう。
まず自分はゲームを考える早い段階で「このゲームには何が必要か」を考えます。すると「12の財宝~」では10枚くらいの財宝カード、20枚くらいのハズレカードが必要です。「NO幹事~」では1~15くらいまで数字を振ってあるカードが4~5セットは必要だと思いました。普通に考えれば、それぞれ独立した箱も必要になるでしょう。
しかしそのころ私は【ホントにヤバイ時、私がすべき3番目のコト】の製作でカードやら箱やらの発注を既にしていたので、売れるかどうかも全く分からないゲーム3種に同じだけお金をかけて作ることは難しいと悟るに難くありません。個人でやっている以上、予算は限られます。
さらに、上記のゲームはプレイ時間にして10分~15分程度。カードには他の遊びやゲームに使いまわせる互換性もありません。要するにそのまま出すと「内容の割に値段が高い」と感じてしまう『商品』となってしまうことが懸念でした。
やろうとしていることがどう考えてもコスト的に合わない。そこで「いっそテストプレイで使ったトランプでそのまま遊べないだろうか」と考えてみました。すると意外と問題なく遊べるということに気がつきました。それにトランプであればどこの家庭にもあるし、今更あえて私から説明しなくても大体どういうものかわかります。
この二つのゲームをトランプで遊ぶゲームにすれば、いろいろ悩んでいた問題が解決していきました。コンポーネントが不要になるのでコストも大幅に安くなる。コストが安くなれば販売する人も、買う人も負担と不安も抑えられる。といった具合です。

3.箱に収まるために


こうしてこのゲームは「ルールだけ販売しますので、ご家庭のトランプで遊んでください」という形式になりました。コストがかからないので、その分トランプで遊びやすくする工夫をせねばこれもまた、割が合わないものになってしまいます。この問題を解決するアイデアは峰崎まめこさんからいただきました。このルールの文量ならB5サイズの用紙半分に十分収まるというものです。最初自分でもこのサイズで読めるのか不安でしたが実際出来上がったものを見てみて、支障なく読めたので安心しました。
さらにルールを半分に分けて記載したことは携帯できるトランプという遊びに合わせるには効果的でした。半分に折って、さらに蛇腹に折りたためばトランプの箱に入れて持ち運びできるという点です。あんまり複雑なルールではないのですが、持ち運びできる手軽さはきっと邪魔にならないだろうと考えました。

4.誤算


このゲームは、まず富山県で行われたイベント「みんなのボードゲーム広場」での販売が行われました。当初2部売れたら充分だろう、と思っていたのですがここで想定よりも販売されたので「ゲームマーケットだとこれよりも売れるだろう」と見通しを立てました。ここに誤算のひとつがありました。
そもそもこのゲームはルールだけを販売している形式なので、「どんなゲームなのか」というのが見た目に宣伝しにくい。概要を伝えたらそれがそのままルールを伝えることになってしまうのです。ゲーム自体はジレンマなどの面白さにある程度自信が有ったのですが、見に来た人に解ってもらうには試遊が必須だったのです。このことに気づくのはゲームマーケット当日でした。手にとってもらうものの、面白いと思える説明が出来ない。『3番目~』は遊ぶスペースがほとんど必要ないので試遊卓が無くても軽く遊ぶことが可能でしたが、このゲームは困難です。

5.伝えたいことを伝えられない


本作を通して、面白いと思ったものを作るだけではダメで、どうやって面白さを伝えるかを頭に入れておかないと面白さは充分に伝わらない。ということを痛感しました。一応置いておいても場所も取らないゲームですし、赤字にはならなかったのは良かったのですが、面白さを充分に伝えられないというもどかしさは、今後のゲーム製作に活かそうと思います。

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