まきちゃん
いまどきめずらしい、ソバージュのロングヘア。いつも部屋着みたいな格好して、紫とかピンクとか所々に取り入れていて、派手なんだか地味なんだか分からない服装をしている。
ほっそい手足に、マイクを通しても聞き取れないようなちっさな声。
この人はどうして先生になったんだろう。どうしてわざわざ人前に立つこの仕事を選んだのだろう。いつも何を楽しみに生きているんだろう。
まきちゃんは、頼りない。
まきちゃんは、弱々しい。
まきちゃんは、退屈。
ねえ、人生楽しい?
いつも何かに怯えているような目をしているけど、やっぱり人が怖いの?
あなたが英語の担当してくれた時から、もう2年経つけど、あなたは何一つ変わってなさそうね。
きっとそうして10年、20年とやってきたのでしょうね。
就活を来年に控えた今、いかに自分に自信をつけるか、自分をレベルアップさせるか、今までの自分からどう変わっていくかを考えることに追われている。
わたしはこんなに追われているのに、
あなたは今年も来年も、多分その先も変わらないでいようとしているでしょう。
あなたのことは決して羨ましくなんてないけど、あなたみたいになりたいとは思わないけど、
ちょっと安心するの。こういう人もいるのね、良かった。
いや、ちがう。
こういう人がほとんどじゃないか。半年や1、2年じゃあ変わらない。
過去の自分から、さほど離れた場所にはいないんだ。
頑張って我慢して必死になってもね。
まきちゃん、
まきちゃんは、本当は人一倍努力してるのかも。
人一倍、辛い思いをしたり涙を流したりやりきれない怒りを感じてきたのかも。
まきちゃん、わたしはこわいです。
根本的にはほとんど成長していない自分と向き合うのが。
結局は、人と同じルートしか辿れないまま終わるのが。
自分の弱さや声の小ささ、自信のない表情を受け止めてそれでもありのまま生きている、そんなまきちゃんが本当は誰よりも強い。