遺言書を作成する際の検討事項


 遺言書を作成したいと思われたときに、注意していただいた方がよいかなという点を挙げていきたいと思います。

1 遺言で何をしたいのか。


 遺言書を残したい目的がそもそもどこにあるのか、ある特定の財産を誰かに引き継がせたいのか、全部の財産を一人の方に引き継がせたいのか、福祉団体等に寄付をしたいのか、子供たちが仲違いすることなく過ごしてほしいのか、いろいろな想いがあると思います。

 遺言で定めることができる事項(=法的な効力が生じる事項、法定遺言事項)は、法律で規定されています。これら以外の事項を遺言書に記載したとしても、法的な効力はなく、遺言者の気持ち、想いが残されたのみということになります。

 遺言をしておきたいことが、これらの法定遺言事項に含まれているのか、そうでないのか、何を遺言したいのかを明確にする必要があります。

 主な法定遺言事項は、信託の設定、認知、推定相続人の廃除、推定相続人の廃除の取消し、祭祀主宰者の指定、遺産分割方法の指定または遺産分割方法の指定を第三者に委託、遺産分割を一定期間禁止、遺贈、生命保険金の受取人の指定、遺言執行者の指定などです。


2 法定相続人は誰か(何人か)


 法定相続人となる人たちが誰になるのか、確認しておく必要があるでしょう。法定相続人に最低限確保されている遺留分の問題により、遺言者が亡くなった後相続人間に紛争が発生するかもしれませんし、思わぬ相続税の負担を遺言により財産を受け継いだ人(受贈者)にかけることになるかもしれません。

3 財産は何か

 遺贈など財産に関する遺言を残したい場合に、相続財産(遺産)となる財産は何があるのか、全体としてどの程度になると予想されるのかを確認することも必要でしょう。さきほど述べた遺留分や相続税の関係でも配慮が必要になる可能性があります。


4 誰に、何を、譲りたいのか

 当たり前ですが、これがいちばん重要な話ですが、どうしていいかわからない、という方もいらっしゃいます。


5 遺言執行者を選んでおくか

 遺言者が亡くなり、相続が開始したのちに、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理やその他遺言の執行に必要な一切の権利義務を有する遺言執行者を遺言書の中で選んでおくこともできます。銀行や法務局での手続など遺言執行者が行い、受贈者に引き継ぎます。相続人の中から選ぶこともありますし、遺言作成に関わった弁護士に依頼するというやり方もあります。


6 自筆証書遺言か公正証書遺言か

 自筆証書遺言であれば、形式さえ整えれば作成することができ、簡単に、費用もかからず作成することができます。

 しかし、法律で求められている形式(全文を自筆、年月日、署名、押印など)が整っていなければ、法律上の遺言としては無効となってしまいますし、書かれている内容が法律上不十分な文言となっていた場合、意図した内容が実現できないこともあります。

 また、令和2年7月から施行された法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度を利用したり、弁護士に預けるならばともかく、自宅等で保管しておいた場合、相続人に発見されなかったり、紛失してしまったり、発見した相続人に隠蔽されたり、改ざんされたりする可能性もあります。

 費用はかかりますが、上記の何を誰に受け継がせたいのかということが明確であれば、公証役場で公証人に遺言をしたい事項を伝え、公正証書遺言を作成するという選択肢もあります。遺言書が公証役場でも保管、データベース化されますし、家庭裁判所での検認の手続も不要です。

7 弁護士を依頼するか否か

 これも費用面をどう見るか、という問題になります。弁護士に依頼すると、弁護士は、法定相続人となる方の確認するために戸籍謄本などを取り寄せの作業をします。打ち合わせをして、どの財産をどなたに譲るのか、遺留分等の問題を考慮したアドバイスをしながら遺言事項を検討していくことになります。また、公正証書にする場合には、公証役場との橋渡しをし、公証人との打ち合わせも行います。自筆証書遺言の場合も遺言の保管を依頼することもできます。さらに、遺言執行者の依頼をすることも可能です。

 細かい作業と遺言事項を法的に問題が少ない形で作成するためのアドバイスなどを受けられるというメリットとコストをどうとらえるか考えたうえで依頼をされるとよいと思います。

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