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【ちょっと昔の世界一周】 #14 《勘は進化していく》

荷物入れに収納されたバックパックが取りづらい位置に押し込まれたのを確認して、私はバスに乗り込んだ。

これまでの旅の中でも、最もと言っていいほどのいい経験をつむことのできたサワンナケートを離れ、私はパークセー行きのバスに乗っている。

昨日確認した通り、宿の時刻表よりも早い時間のバスに乗ることができた。

予定通り着けば昼過ぎにはパークセーに到着する。

『今度もいい宿を見つけられるといいな...』

そんなことを考えながら移り行くラオスの景色を眺めていた。

*****

今回のバスも地元の人向けで旅行者は少ない。
というよりも私しか乗っていないようだ。

多分だが、宿の時刻表に書いてあったバスには旅行者が多いのであろう。

そこに記されていた料金よりも安く乗ることができたということは、観光客用ではなく地元の人向け。

グレードは多分劣るだろうが、特に問題があるわけではない。

むしろとても落ち着く。

例によって休憩を挟みながらバスは順調に進んでいく。

休憩所はもちろん、信号待ちの僅かな時間でも窓越しに物売が声をかけている。

そのやりとりを見ているとあっという間に時間が過ぎていく。

そろそろ到着時間になりそうな頃、外の景色に建物が増えてきた。

『そろそろ着くかな?』

そんなことを考えていると大きな通りに出た。

建物も人も増えた気がする。

すると、信号も何もないところでバスが止まった。

「パークセー、パークセー!!」

運転手の声が響く。

近くに乗っていた人が着いたよ。という感じで教えてくれた。

乗客の流れにのって降りると、そこはただの道沿い。
ターミナルでもなんでもない。

荷物を受け取って走り去るバスを見送り、周囲を見渡すといたって普通の街中。

ターミナルに着いたらトゥクトゥクや客引きにでも話を聞いて宿を探そうと考えていたが、あまりに街中すぎてそういった感じの人もいない。

どうしたものか?と改めて見渡すと、壁に地名がたくさん書かれた建物が見える。

想像するに旅行会社であろう。

カオサンで出会った旅人やタカダさんから【宿探しで当てがなければ、旅行会社に行け!】と教えてもらっていた。

道を渡り中に入ると、狭い空間にソファが一つと小さなデスク。
その奥に一人の若者が暇そうに外を眺めて座っていた。

若者といっても私と同じくらいだろうか。

「サバイディー」

挨拶すると笑顔で挨拶を返してくれた。

「宿を探している。それも安い宿を!」

とりあえず通じたのだろう。

旅行者用といった感じの地図を出し、何ヶ所か丸をつけてくれた。

「コープチャイ!(ありがとう)」

そう言って外に出て宿探しを始めた。

4カ所目の滞在地にして、初めて本当の意味で一人で宿を探す。
こう考えるといい出会いが続いていたのだろう。

まず初めに旅行会社に近い宿を目指す。

というよりも数歩進んだだけでそれらしい看板が見えてきた。

大通りから少し入ったにもかかわらず、周囲の看板よりも大きくきらびやかな看板。

先ほど教えてもらった時に、少し値がはると言われていた通りの雰囲気の宿。

なんだかんだ単独宿探しは初めて。
声をかけるのも多少の緊張があったのだが、受付にいる人に

「Do you have a room ??」

タカダさんの真似をして言ってみると意外と緊張もなくなってきた。

数部屋空いているとのことで見せてもらいことにして、後について行く。
外見だけでなく、中も綺麗な様子である。

とはいえここはラオス。
さらに首都ではないということもあり80,000キープでシャワー、トイレ付き。

理想的な宿なのだが、何故かOKとは言えなかった。

何が。とは言えないのだが他の宿も見てみることにした。

次に向かったのはそこから一ブロック程歩いた所にある宿。

先程とは違って周囲の景色と馴染んだ看板。
ドアを開け中に入ると受付にいたお婆さんがこちらに気づいた。

挨拶をしてさっきのように値段を聞き部屋を見せてもらう。

こちらもシャワー、トイレ付き。さらに多少ヘタレてはいるがベットも広々としている。

値段も50,000キープとお手頃。

唯一の問題点はトイレが手動ウォシュレットだったが、今やそれも慣れたもの。

案内してくれているお婆さんもいい人そうだし、なんとなく私の【旅人の勘】がここでOKといっている。

そのまま荷物を部屋に置かせてもらい、チェックインをしに受付へ行く。

いつものように名前を書いていたが、今回はパスポートを確認せずとも番号を書けるようになっていた。

『少しは成長してるのかな?』

そんなことを考えながら鍵を受け取り部屋に戻る。

バスを降りてから30分もせず、無事に宿を見つけることができた。

もちろん運もあるが、少しずつとはいえ旅人としての経験値を手に入れレベルアップしているのかもしれない。

荷物の整理をしながらこの後の予定を考えた。

パークセーに来た理由は世界遺産の遺跡【ワットプー】へ行く為。

ワットプーを見に行くには、ここパークセーから遺跡の近くの街【チャムパーサック】へ向かう。

チャムパーサックへはバスなどに乗っていけば行けるようだが、旅行会社からチャムパーサックへのツアー(ツアーとはいえ片道は案内しますというもの)に参加すると簡単とは調べていた。

そうと決まれば話は早い。

せっかくなら先程の旅行会社へ行って申し込み、その後は街歩きでもしようと思い宿をあとにした。

*****

建物の中に入ると店の若者がさっきと同じように暇そうに座っている。

荷物の少なくなった私に気づき、宿を見つけられたとわかってくれたようで、よかったね。という感じで挨拶をしてくれる。

ここで世間話でも、、、というだけの英語力のない私はさっそくチャムパーサックへの行き方を聞いてみる。

とりあえず目的地を伝えれば間違いないと信じ、地名を伝えることに全力を注ぐ。

どうやら伝わったようで

「チャムパーサック、ワットプー?OK!」

と確認をし準備を進めてくれる。

話を聞くと直行便という訳ではなく、さらに南部の街に行くバスの乗り場に行く途中にあるチャムパーサック行きのバス乗り場まで乗せて行ってくれるらしい。

チャムパーサックへ行くには、そこからメコン川を渡らなければいけない。
そこでバスごと船に乗って川を渡りチャムパーサックの街中まで乗せて行ってくれる。

そこまでの一連の流れの料金を支払う。

宿はバスの到着地点にいくつかあるし、そこまで高くないから問題ないと言われ一安心。

いい旅行会社を見つけたものだ。と一人満足して店を出た。

やはり、私の勘は少しずつ進化しているようだ。

出発は明後日。

『ここでもサワンナケートのように〝いい経験〟ができそうだ』

その〝勘〟を信じ街を歩くことにした。

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