【ちょっと昔の世界一周】 #15 《分かり合う気持ち》
街歩き・散歩
どの言い方がいいのかは分からないのだが、旅をする前はこういったことをすることはなかった。
それが今や一日の大半を費やしている。
行く当てもなくぶらついていると立派な建物が見えた。
ラオスに入ってからよく見るようになったお寺のようだ。
仏教国であるタイでも見ていたのだが、そこまでの大きさはなくとも街の至る所にある印象があり、ここにもあったかといった気持ちで眺めていた。
塀の向こうには数人の袈裟を着た人たちの姿が見える。
見た目からするにまだまだ少年のようだ。
日本でいえば中学生ぐらいだろうか。
その中の一人がこちらに気づく。
目があったので挨拶をしてみた。
「サバイディー」
だいぶ自然に出てくるようになってきた私の挨拶を聞き、彼らの顔に笑顔が見える。
「サバイディー、ジャパニーズ?」
中学生ぐらいの年齢なら、仲間といれば外国人でも何でも向かっていける。
そんな感じだろうか。
塀越しに集まってくる。
サワンナケートで出会った子どもたちよりは大きいとはいえ、まだまだ好奇心の多いであろう年頃。
挨拶程度の会話だが彼らと分かり合えた感じがしてこちらも嬉しい気持ちになる。
少し話をしているとお寺の中から声が聞こえ、そちらに行かなければならないのか彼らは中に入っていった。
もう少し歩こうと思ったものの、前回のように迷うと面倒なので近場を見て歩くことにした。
ラオスで訪れた街は三ヶ所目だが、ここでもただ歩いているだけでいい意味で声をかけてくれる人たちがいた。
そういった人たちと少しずつだが話をすることで、言葉の意味を全て理解するわけではないのだが相手の話が分かる(合っているかは分からないが)ようになってきた。
そんなことを考えていたら先ほどの彼らではないが、私の中学時代を思い出した。
*****
あれは英語の授業の一コマ。
当時はリスニングよりも紙のテストで点が取れるような授業をする先生が何人かいたのだが、私のクラスの担当だった先生は書くことよりも話す・聞くことが大事と教え続けてくれていた。
授業では最低限のことは教えるが、本気で英語を使いたければ話せなくともまずは海外へ行け!と言っていた。
そこで好きな人・恋人ができれば絶対に話せるようになる。
*****
今の私はある意味そんな状況なのだろう。
出会う人たちと少しでも分かり合いたい
多分そんな気持ちで会話をしていたのだろう。
英語やラオ語が流暢に話せなくとも、お互いに相手と話そうという気持ちがあるからか通じ合っている。
人と関わるということの素晴らしさを感じることができた気がする。
ラオスという国は私に合っているのかもしれない。
以前も感じたこの感覚は大事にしていこうと決め、さらに歩いてみた。
気がつけば日も沈み始め、周囲が少し薄暗くなっている。
移動中に少し食べ物をつまんだだけで他に何も食べていなかったので、夕食になるものを探してみた。
ぱっと見て食堂のような雰囲気の建物は見当たらないが、飲み物を売っている店を見つけた。
何かしら食べ物もあるかと思い立ち寄ると飲み物の値段の横に【SANDWICH】の文字が見えた。
家族でのんびりとやっている店らしく、通りから二、三段階段を降りた開けた空間に一家が夕涼みをしながらお客さんの相手をしている。
サンドウィッチを頼むと女将さん?が座って待ってて。といった雰囲気で家族で輪になっているところの椅子を用意してくれた。
腰を下ろして待っているとそこの家の子どもが興味津々で手を伸ばしてきた。
挨拶しながら手を振ると私の顔をペシペシと叩き出す。
子供心に何となく自分たちとは違うということが分かったのか、顔の確認を始めた。
お母さんが止めようとしたが、OK!と言って触らせてあげながらサンドイッチを待った。
出てきたサンドイッチは値段の割に大きく具沢山。
持って帰ろうとすると、ここで食べていったらいい。みんなでと椅子を指差している。
せっかくならばと水も買いつつ食べ始める。
早速かじりつくと、美味しい!
ビエンチャンのサンドイッチ屋も美味しかったのだが、ここのはさらに美味しい。
こちらを見ている店の家族にGood!と言うとみんな、良かったという表情になる。
先ほどの子どもはというと近寄ってきて食べようとしたが、さすがにお母さんに止められ代わりにおやつをもらってご機嫌になっている。
ここでもジャパニーズか?どこへ行くんだ?といったお決まりの会話をしながら時間を過ごしていたが、今までとは少し違った感覚になった。
今までも確かに楽しい気持ちになったのだが、家族の時間を共に過ごさせてもらったからかこれまで以上にいい気持ちになれた。
食べ終わった後も少し話をしていると、すっかり日も落ちた。
そろそろ帰ろうと席を立つと
「Tomorrow Sandwich here ??」
と声をかけてきた。
「Yes !!」
そう答え、なんとも温かい気持ちになって宿へと帰っていった。
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