【ちょっと昔の世界一周】 #8 《初めての宿探し》
ラオス
フランスの植民地から独立し、その後の内戦により一党独裁・社会主義国家なのだが、近隣の国の影響・国民性もあり仏教が浸透している。
【世界一何もない首都】
というなんとも言い難い呼ばれ方をしている〝ビエンチャン〟が首都である。
私がなぜ旅のルートとしてラオスを選んだかというと、話は世界一周を決め色々と調べていた時期に遡る。
*****
当時、海外どころか国内ね旅もさほどしたことがなかった。
そんな私が世界一周を決めルートを考え始めた時に最初に考えたのが西回り・東回りのどちらで行くか。
本やネットで調べ最終的に西回り、それもタイから始めるのが自分にとってはいいのではないかと決めた。
その時によく見ていたある人のブログ。
数年前からブログが流行し始め、芸能人やアスリートだけではなくいわゆる一般人でも気軽に自己表現がしやすくなったいた。
そのブログは女性の方が1人で世界一周する様子をまとめたもの。
私が使う予定の世界一周航空券を使い、タイをスタートに西回りで行く旅。
そこで書かれたラオスの様子がとても気に入り、私も訪れてみたくなった。
だが、いざラオスに行ったとして何があるのだろう?
そう思い観光地を調べていると【ワットプー】という遺跡があるようだ。
あまり歴史に興味はなかったが、ワットプーはクメール文明の遺跡という説明を見てカンボジアのアンコールワットを想像した。
アジアでも有数の観光地であり、素晴らしいと言われている【アンコールワット】だが正直行きたいとは思わなかった。
アンコールワットですら惹かれないのである。
旅の間、遺跡を巡るといったことは考えてはいなかった。
そんな私だが、ラオスには行ってみたい。
そしてせっかくラオスを訪れるのならワットプーという遺跡を見てみたい。
*****
そう考え決めたラオスに着いた。
さらに北へ向かって行くバスの姿が見えなくなる頃、先輩が私に声をかけた。
「そういえば、泊まるとこって決めてるの?」
そう言われて首を横に振った。
「決めてないんですよ。出発前に(旅行会社で)地球の◯い方で何個か調べたぐらいで...」
「俺も前泊まった宿が空いてればと思ったけど、他のとこも見てみたいから一緒に探そっか!」
そう言われ、とても安心した。
これから何度もやっていくであろう〝宿探し〟
バンコクではすでに予約をしていたので今回が初めてである。
運良く旅慣れしている人と一緒に探すことができる。
『そうしましょう!』
と返事をしようとしたところで、先輩がさらに一言。
「初海外でいきなり言われると怪しむかもしれないけど、値段によってはシェアしない?その方が安く済むし」
確かに...ここまで一緒だったからといっていい人とは限らない。
私や先輩のようにいわゆる〝バックパッカー〟といわれるスタイルで旅をしている人たちにとって、安くて快適な宿に泊まれるならばそうしたいもの。
安さを求めればドミトリー(一部屋に数人分のベットがある部屋)が1番だろう。
だが、快適さや安全性を考えればドミトリーよりは個室だろう。
そんな時に部屋をシェアするのはいい考え。
だが、お金や貴重品と盗られる可能性もあれば、男同士だからといって油断はできない。
旅で起こる色々な話を先程までたくさん聞いていた。
だが、その時はその時。
それは私の人を見る目がなかっただけのこと。
幸い旅は始まったばかり。
〝すごろく〟でいえば2回ぐらいサイコロを振って〝ふり出しに戻る〟のマスに止まったようなものである。
それに、私の勘では先輩はそんな感じのことをする人ではない気がする。
自分の勘を信じ、改めて答える。
「そうしましょう!」
こうして、先輩と2人での宿探しが始まった。
*****
話はまとまったが、調べておいた宿の名前と住所のメモを出すも何処だか分からない。
すると先輩がカバンからカメラを取り出した。
「ビエンチャンの地図、写真に撮っといたからこれで探すか。ガイドブック持ち歩くの面倒だし、撮っとけば拡大もできるから便利だよ」
さすがである。
男2人で小さいカメラの液晶を見ながら宿を探し、私のメモの中で値段と設備的に良さそうな宿の場所を見つけだし歩き始めた。
「そうだ、名前言ってなかったね。俺は〝タカダ〟よろしく!」
そう言われてみれば、自分の中で先輩・師匠と呼んでいたが名前を聞いていなかった。
バスに乗る前から考えれば半日以上一緒にいる。
さらに宿もシェアしようと話をしているにも関わらず、名前すら知らなかった。
これも旅なんだろう...
そんなことを考えながら、こちらも自己紹介をした。
「〝ひろ〟です。よろしくお願いします!」
互いに名前を伝え、何度かビエンチャンを訪れたことがあるタカダさんに付いて行く。
少し歩くと目的の宿が見えてきた。
入口のドアを開けると靴・サンダルといった履き物がたくさん脱ぎ捨ててある。
中には揃えて置いてある物もあるが、子どもの頃に外で思いっきり遊び、おやつタイムに家の中にみんなで駆け込んで行った時のような状態。
けっこう泊まってる人いるな。そう思っている私をよそにタカダさんは靴を脱ぎ受付(フロント)らしき所に向かっている。
私も靴を脱ぎ横に行く。
「Do you have a room ??」
タカダさんが受付の男性(スタッフ)に話しかける。
YES!と答え、お前もか?といった表情でこちらを見る。
「1ルーム、2パーソン。OK ?」
タカダさんの説明で理解してくれたスタッフが部屋に案内してくれる。
「タカダさん、英語問題ないんですね!」
と言うとこう返してきた。
「いやいやいや(笑)。この格好ならだいたいどこ行っても〝Do you have a room ?〟で安い部屋紹介してくれるよ!」
確かにそうである。
宿のスタッフもプロ。
毎日のように旅行者の相手をしている。
一目見ただけでだいたい言われることが想像できるだろう。
そうして案内された部屋に着くとそれなりの広さにベットが2つ。
なかなか快適そうな部屋である。
値段は一部屋80,000キープとのこと。
2人で割れば1人40,000キープ(480円程)になる。
「いい部屋じゃん!40,000なら俺はいいけど、ひろくんは?」
「俺もOKです!」
2人とも納得しスタッフに返事をしようとした時、タカダさんが質問をした。
「バスルーム?」
スタッフの男性はこっちだ!という雰囲気で廊下を進んでいく。
突き当たりにドアがある。
ドアを開けると、シャワーとトイレがあった。
「結構ちゃんとしたシャワーじゃん!シェアだからこの値段でこれはいいわ!」
タカダさん、ますます乗り気になる。
ここで改めてスタッフにOKを伝え、受付に戻り宿泊の手続きを開始する。
手続きとはいえたいしたものではなく、チェックアウト時に何泊したかが分かるように日付に書き、名前とパスポート番号を書くだけ。
ここでもタカダさんは番号をスラスラと書いていく。
2人とも書き終わるとスタッフが鍵を渡してくれて無事に宿探し終了。
荷物を運び一安心。
2人とも各々のベットで大の字に寝転んだ。
眠れたとはいえ、昨夜はバスの中。
やはり体を伸ばすと気持ちがいい。
横になるっていいな...そんなことを考えていると、タカダさんが起き上がりバックパックをガサガサし始めた。
そこから出てきたのは芯を抜いたトイレットペーパー。
そして一言。
「トイレ行ってくるわ」
そう言って部屋を出ていった。
日本にいる時は話にきいても想像できなかったが、実際に海外に来て本当なんだと思ったことがトイレ事情。
バンコクの宿はそれなりの価格だったので紙を流せたが、散歩中に立ち寄ったトイレは流すと詰まるのでトイレ横にゴミ箱が置いてあった。
さらにトイレットペーパーが備え付けてあることはほぼないので、自分で持ち歩く必要がある。
私も突然の時に備え何巻分かを持ち歩いていたが、芯を抜けば少しはコンパクトになる。
これも経験だな。
そうしているとタカダさんが戻ってきた。
そして、、、
「ここ手洗いのトイレだったわ〜。たまにこのタイプだとサッパリするんだよね!」
と話し始めた。
手洗い...
これも話には聞いていた。
簡単に言えば、手動ウォッシュレット。
便器横に置いてある大きいタンク・バケツに入っている水をタライですくい、それで洗う。
用を足した後もレバーを捻って水を流すのではなく、タライですくった水を便器に流し入れきれいにする。
そうなんだ…と思っているとコツを説明してくれた。
コツといっても洗い終わった後にすぐにパンツ・ズボンをあげると意外と濡れるから、乾燥タイムを忘れずに!といった感じ。
これも経験だな…
そんなことを話していると
「そういえば腹減らない?」
とタカダさんが呟いた。
思えば出発前にパッタイを食べてから何も食べていない。
「前に来た時に美味しいサンドイッチ屋さんがあったから、そこ行ってみるか!」
そうしましょう!と答え、朝食を食べに出かけることに。
以前の記憶を頼りながら目的のサンドイッチ屋に到着。
味もなかなかいい。
「ラオスってフランスの植民地だったから、その時にこっちに来てたフランス人の影響でパンが美味しいみたいだよ」
そんな話からこれからどうする・どこへ行くという話になる。
私は南部にあるワットプーが目的だから、少しずつ南下します。と答える。
タカダさんは?と聞いてみるとこんな答えが
「俺はしばらくここ(ビエンチャン)にいるよ。タイのビザ切れそうだったし、ちょっとこっちで仕入れたいのあって来ただけだから」
ビザが切れる前に一度隣国に行き再び戻る。
日本人は基本的にビザを取らなくても入国ができる国が多いとはいえ、期日は決まっている。
オーバーステイになる前に同じようにノービザで行ける所に行くといいということも聞いたことがあった。
タカダさんも一時的にタイを出国する為にラオス行きを決めたようだ。
お互いに予定を話す頃にはサンドイッチは無くなっていた。
「俺はとりあえず欲しいの探しながら宿に戻るけど、どうする?」
一緒に戻ろうか。とも考えたがせっかく外に出たのだ、ブラブラ街歩きでもしようかと思い、別行動をすることに。
戻ったら昼寝してるわ。というタカダさんに鍵を預け私はビエンチャンの街を歩き出した。
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