わん!ワン!Ruff-Ruff!『HUMANITY』で犬になって、人間の行列を光の中へ導け!
突然だが、「犬」という漢字の成り立ちを知っているだろうか。「大の字で寝ている人間」に、寄り添うように「右上の点」があり、この点が犬を表している。昔から人間と距離が近い動物として存在していたことが、非常によくわかる文字だ。はい。
……と、思ってたけど、実は犬を横から見た象形文字なんだとか。嘘だろ、おい。まぁ、そんなことは置いておいて。今日は、そんな「犬」が一生懸命動き回るパズルゲーム。
いぬ〜〜〜〜
『HUMANITY』は犬がよく吠えるゲーム
\ ヨ ン ッ /
『HUMANITY』は2023年5月16日にPlayStation、Steamでリリースされたアクションパズルゲーム。プレイヤーは犬になり、ゲートから随時出てくる人間たちをゴールに導いていくというシンプルなゲーム。プレイヤーは人間たちの行動を指示することができる「マーカー」を道中に配置することができ、「右に曲がれ」「ジャンプしろ」などの指示に従って人間たちはその通りに行動してくれる。例えそれがステージ外や着地できない高さから落下することになる指示だとしても。
PSPlusではリリースと同日に「Day1配信タイトル」としてプレイが可能となっていたため、触れた方も多いかもしれない。以前にも『Stray』がDay1となっていたが、動物モノが強いのかな。ちなみに本作の犬の犬種は柴犬。
本作は映像ディレクターでもある中村勇吾氏が作成した『HUMANITY』のデモ映像を見た水口哲也氏が惚れ込んで声を掛けたことがきっかけでゲーム作品として製作された作品。2人の相性は非常に良く、水口氏のエッセンスが効いたモノになっている。過去に水口氏が携わっていた『Lumines』や『Tetris Effect』といった作品が刺さったユーザーであれば気に入るテイストに仕上がっていると思う。
最近の作品としてはほどよいボリューム感
本作は「SEQUENCE」という大きなくくりの中に10前後のステージがまとまっている。各ステージには「金ピカの人間」である「GOLDY」が存在し、規定数集めると最終ステージが解放される仕組みで、最終ステージをクリアすると次のSEQUENCEが解放される。各SEQUENCEはだいたい2時間程度でクリアすることができる。ただ、ステージによっては30分以上悩むレベルのパズルが用意されており、油断はできない。放置してる時間も多少あるが、私はクリアまで23時間くらいだった。たぶん普通よりかかりすぎ。
ステージの難易度調整が良い
本作は様々な指示を出せるような仕組みだが、1ステージで出すことができる指示の種類はそのステージを攻略するのに必要なものだけになっている。「想定外の方法でクリアをさせないため」という側面が強い仕様だとは思うが、この制限のおかげで考えられるパターンがかなり絞り込まれるので、パズルが得意じゃない自分でもポンポンとクリアすることが可能だった。もちろん、「こんなの設計ミスだろ……」と思わされるような難解なステージもあったけど、パズルゲームという性質上、個人差は激しそう。
パズルの難易度の急上昇と救済機能
チュートリアル的なステージとなる「プロローグ」や「SEQUENCE 1:」は難易度としては初級者向けという感じだが、「SEQUENCE 2:」になった途端にパズルの難易度が急上昇する。「後半になるまで、簡単なパズルを延々とプレイさせられる」という体験やストレスを排除するためなのか、しっかりと歯ごたえのあるステージが用意され、嫌でもパズル力の向上を促される。
個人的には、この単刀直入なやり方は好印象だったが、人によっては難易度の急上昇により、序盤でいきなり手詰まりになって進めなくなってしまうこともなくはないだろう。そこで救済的な立ち位置にある機能が「ヒント」だ。名前の通りステージをクリアするためのヒントをくれる機能だが、30秒ほどの動画で動き方を教えてくれるので、視覚的にもわかりやすくて良い機能だと思った。
強烈なビジュアルのパワー
本作の魅力はやはり、ぞろぞろと歩き続ける人間のビジュアルだろう。発表時のPVでもインパクトがあったが、無限に出続け、ステージ上を歩き続ける姿は見ていて気持ちが良い。特に、スタート地点からゴールまで一本の道が作れた場合に見ることができる、規律正しくゴールまで歩き続ける姿は「THE 日本人」と言わんばかりの統率具合で壮観だ。
ゲーム開発の技術面には明るくないのですが、本作の人間たちは「フィジックス物理演算」が活用されているとのことで、人が一か所に集まりすぎると溢れて横からはみ出たり、指示のマーカーを通れなくてあらぬ方向へ歩き続けたりすることがあり、意外なところから攻略ができたり、逆に大失敗に繋がったりと、想定外の動きをするのも面白い。
アクション要素が、意外と強め?
ステージの中には、行列の動きを何度も変えるパターンがある。「最初は左折のマーカーを設定して、役目が終わったらそのマーカーを消して今度は右折のマーカーに切り替える」というようなものだ。それを各所で行うので、あっちこっち飛び回って行列を操作しなければならない。ステージ中を動き回ることになるが、ステージによっては見づらかったり、足場が遠かったりする場合があり、何度もステージ外に落下してしまって間に合わないこともあった。また、後半はパズルとは違った趣向のステージも登場し、アクション要素がより強くなる。個人的にはすごく好きだったのですが、人によっては「こんなのやりたかったんじゃないんだけど……」となりかねない部分かなと思った。
好みが分かれそうなBGM
本作のBGMは独特なもので、電子音楽やピアノを基調とした神秘的なものが多い。作曲者はJEMAPUR氏で、こういった曲調が得意な方。本作の「人間性」というテーマに合わせて、ボーカルアーティストである細井美裕氏の声をサンプリングして作られているものが多いらしい。無機質で、不思議な空間が描かれる本作の雰囲気に非常にマッチしており、良い意味で思考の邪魔をしないBGMになっている。
個人的に好きなのは『Melt』。他の曲と比較して鳴らしてる音の数が多く、ピアノの高音が忙しなく鳴り響く曲調には緊張感を覚えたが、キレイなメロディラインが非常に好みだった。
途中でミスったら、最初からやり直しになる辛さ
ステージによっては何度も失敗、苦悩、試行錯誤を経てクリアすることになるが、本作ではパズルゲームでよくある「一手戻す」に近い機能が存在しないため、オブジェクトを予定外のところに1マス動かし間違えてしまったり、誘導をミスってしまうと、数分かけてやってきたものを初めからやり直さなければならなくなる。行動を指示するマーカーを残してリトライすることはできるが、途中で行列の動きを変える必要があるステージでは結局やり直す部分が多くなってしまうので、一部ステージではしんどい思いをした。NintendoSwitchのFCやSFC、レースゲームなどで見かける機能で「時間を巻き戻す」みたいなものがあったら良かったなぁ、と思った。
魅せ方が素晴らしい、最強の雰囲気ゲー
過去に、水口哲也氏の作品で気に入るものがあったなら、本作もきっと気に入ることでしょう。関わり方的に仕方ないのですが、残念ながら「音とゲームの融合」という強みは本作に組み込まれてはいないが、スタイリッシュで洗練されたビジュアルやゲームデザインには遺伝子が残っているように感じた。少しずつできることやステージのギミックが増えていき、それに合わせて徐々に物語が真相に近づいてく様子。終盤のボス戦のようなステージも、個人的には非常に面白かった。後半では一筋縄ではいかないものも多く、歯ごたえのあるゲーム体験ができた。パズル慣れしてない人でも手を出しやすい難易度ではあると思うので、苦手意識があるかたも一度触れてみてはいかがだろうか。
オリジナルステージ作ったよ!
クリア後、せっかくだし「STAGE CREATOR」でオリジナルステージでも作ってみようかなと数時間かけて作ってみた。最初に頭にあったのは「のぶぶ」の部分の形だけで、攻略ルートとかは全く考えてなかったのですが、どうにかネタだけじゃない、中難易度くらいのステージが作れたと思う。もう少しやりたいことはあったんだけど、「STAGE CREATOR」自体がまだβ版ということもあって、今はこんなところで。よかったら挑戦してみてください。
クリア時のSTATS
「STATS」はゲーム中の細かい累計データを見ることができる機能だ。私はこういうデータを見るのが大好きなので大変嬉しい。一部ネタバレになる項目もあるため、未クリアの場合はクリア後にまた見に来て欲しい。
それでは。
おわり。
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