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◆八田亨さんの器について補足を幾つか。

 こんにちは、JIBITAののぶちかです。

 さて今回のnoteではまだ八田亨さんの器をお持ちでない方、そして土物の初心者の方に向けて、八田さんの器に関する補足記事を書かせて頂きます。

 と言いますのは、ファンの方や既にお持ちの方は良く御存知だと思われますが、初めて目にする方には少しびっくりする現象が八田さんの器にはあると思うからです(かく言う私もそうでした汗)。 

 本記事を御一読頂き、少しでも八田さんの器への御理解と土物に対する面白さを感じて下さる方が増えれば嬉しいです。

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穴や傷 

 八田さんの器や作品には表面にだけ穴が空いたものやヒビの様なものが散見されます。その理由は幾つかあるのですが、例えば化粧掛けや施釉時にできたピンホールがそのまま焼き上がる事や、

化粧掛けや施釉時にできたピンホール
化粧掛けや施釉時にできたピンホール
(周囲にも小さいピンホールが多数あるのが分かります)

土の中の鉄分等が高温で溶けて穴化する事などです。

土の中の鉄分等が高温で溶けて穴化
土の中の鉄分等が高温で溶けて穴化

 ちなみに上記2点が八田さんの器の穴の大きな原因となる訳ですが、中には土に混ざっている石粒などが焼成前の削り作業などが原因でポロっと取れて、取れた跡がそのまま穴として焼かれて穴化してしまうケースもあります。 

粘土に混ざっている小砂が取れて穴になったまま焼かれてできた穴
粘土に混ざっている小砂が取れて穴になったまま焼かれてできた穴
粘土に混ざっている小砂(小石)が取れて穴になったまま焼かれてできた穴

 更に、薪窯からの窯出し後の器はふりもの(ふりもん)などにより尖っていたりとてもガサついていたりする部分があるので、基本的には砥石ややすりなどで仕上げ磨きが必要となる場合がほとんどです。

 穴の種類にはその際に表面の突起などを磨いてできる穴(傷)もあります。

突起除去の為の仕上げ磨きにより表出した穴
突起除去の為の仕上げ磨きによる傷

 仕上げ磨きに関しては、「それをしなくても良い様に焼き上げるべきでは?」と思われる方もおられるかもしれません。それももちろん一理ありますが、薪窯ものに関しては長きに渡りそもそも仕上げ磨きを前提としている所もある為、この様な傷はむしろ1点1点丁寧に器の使い手に支障が出てしまう部分が無いかを確かめ、手入れが施された跡と見て頂ければと思います。

ヒビ

 次にヒビに移りますが、ヒビには使用に支障をきたす本物のヒビと、いわゆる「石はぜ」などに近い形(景色、意匠)での使用に支障が無いヒビがあります。

中に大き目の粗砂(小石)などがあり表面を割いてできたであろうヒビ
中に大き目の粗砂(小石)などがあり表面を割いてできたであろうヒビ

 八田さんは複数の原土をブレンドして独自に土を作られます。その際、豊かな土味、焼味を表現できる様に敢えて雑味のある土も混ぜるのですが、その中には小砂(小石)も混ざっています。その粒度が大きい小砂が器面近くや器面に表出した場合、ヒビの様な景色となる事があります(※ヒビの原因はそればかりではありませんが)。

 そしてこの場合のヒビに関しては、土物、そして薪窯ものとしての味としてどうか楽しんで頂きたいと切に思うのです。

 なぜなら茶道具の銘品の中には本物のヒビですら見所として捉えられ、重要文化財になっている花器すら存在します。
 伊賀の「からたち」などは、その最たる例です。

[重要文化財] 伊賀花入 銘 からたち

公益財団法人 荏原 畠山記念文化財団 畠山記念館 コレクション
                             より引用

畠山記念館

 ちなみに、

釉薬の下にのみ入った細かいヒビの正体とは?

 細かいヒビがある様に見えるこちら⇧はもう完全にヒビの類ではなく、素地に白い化粧土(土を水で溶いたもの)を塗った後、乾燥工程で化粧土だけがヒビ割れを起こしている状態となります。その上から釉薬を掛けてコーティングされた状態なので器面はツルツルしています。

最後に

 土物は一見不完全に見えるものも「侘び寂び」という美意識の中で尊ばれ、珍重されてきた焼物です。
 その様な背景からかJIBITAのお客様の中には「石はぜ」や「ヒビ」があるものから選び取られる方までおられるほどです。
 とは言え、予備知識が無いままにそういう状態を見ると驚いて不安になられる方もおられると思い、今回は八田さんを通じてしたためてみました。
 この記事から少しでも八田さんの器、そして土物への愛着が沸く方が増えれば幸いです。


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