見出し画像

ホンマくんの誕生会

小1のある日、同級生のホンマくんに”今日、ウチでおれの誕生会をやるから来ない?”と誘われた。僕以外にも10人くらい同級生が来るらしい。
誕生会は初めてだったけど、なんとなく”プレゼントは持って行かなくちゃ”と思いって、”おれいい事思いつくなー、ホンマくんもきっと喜ぶぞ!”と思った。
当時、僕のおこずかいは月に100円。ミニ四駆とかゲームとかは自分が誕生日の時とかには買ってもらえたけど、普段は駄菓子屋さんに行って10〜30円で買えるもので必死に悩んでいた。
まだおこずかいをもらったばかりだったのか、僕はその100円玉を握りしめ、駄菓子屋さんに向かった。そこで覚えたばかりの足し算をしながら、100円で買えるだけの駄菓子を買った。いつもは1つしか買わないけど、今日はたくさん買ったのでおばちゃんが透明なビニール袋をくれた。それに入れてもらったたくさんの駄菓子を誇らしげに握りしめ、ホンマくんの家に向かった。

ホンマくんの家に着くとみんな集まっていた。ゲームをしたり、お母さんが作った料理をみんなで食べた。最後にみんなでプレゼントを渡す時間になった。
ホンマくんの家に行く途中までは”きっとみんなプレゼントあげるなんて思いついてないぞ!思いついたおれ天才!”って思ってたんだけど、なんかみんなプレゼントらしい立派な箱や包みを持っている。みんな事前に聞いていたのだ。みんなから貰ったプレゼントをホンマくんが次々と開けていく。中にはキャラクターもののナプキン(給食の時に使うような)や文房具、ランチボックスなど立派なものばかりだ。それに比べ僕は透明なビニール袋に入った見え見えの駄菓子だけが唯一の武器だ。
だんだんと自分の番に近づいてくる。僕の記憶の中ではあれが”どうしよう、どうしよう”と思った初体験だ。(きっと性格的にもっと前にも思ってそうだけど)
しかし、武器はそれしかない。勇気を出してプレゼントを渡したら意外にもホンマくんはすごく喜んでくれた。みんなのプレゼントの方がよっぽど良いものだと思うけど、おそらく僕のプレゼントが1番ホンマくんのニーズに合っていたんだと思う。僕はホッと胸を撫で下ろした。

誕生会も終わり帰り支度をしていると、ホンマくんのお母さんが”今日来てくれたお礼に”と1人1人に鉛筆やノート、筆箱などがたくさん入った包みをくれた。中には写真立ても入っていて、後からその日みんなで撮った写真ももらったのでそれに入れて飾った。
僕は100円の資本金でたくさんの文房具と忘れられない思い出を手に入れた。