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NPO しんぐるまざあず・ふぉーらむ 事業報告書令和2年度と令和3年度の正味財産について


はじめに

先日ニュースでも報じられた「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の元職員の会計不正が発覚した件について

Twitterにて事業報告書を読み解いてきましたが、色々首を傾げる点が多かったので、前回に引き続きnoteにまとめたいと思います。

事業報告書

しんぐるまざあず・ふぉーらむの事業報告書は東京都のNPOサイトに掲示されています。

令和3年度の事業報告書令和5年6月30に差し替っていますので、差替え前の事業報告書と共に説明をしております。
そのため、例えば以下のように3枚の貸借対照表で比較することとなります。(左:令和2年度、中:令和3年度(差替前)、右:令和3年度(差替後))

令和2年度、令和3年度(差替前・差替後)貸借対照表

それでは、令和2年度と令和3年度の差替前・差替後でどう変更になったかを正味財産を中心に確認していきたいと思います。

令和3年度(差替前)の活動計算書と貸借対照表のズレ

令和3年度内の比較

まず、令和3年度の活動計算書と貸借対照表の間で、前期繰越指定正味財産額・前期繰越一般正味財産額にズレがありました。

令和3年度活動計算書・貸借対照表

前期繰越指定正味財産額は活動計算書の方が貸借対照表よりも¥2,308,691-多く
前期繰越指定一般財産額は活動計算書の方が貸借対照表よりも¥2,308,691-少ない
状態になっており、結果的にはトータルは差引¥0になっています。
ではなぜこんな記載が発生したのかは、前期に当たる令和2年度の活動計算書を確認すると原因らしきものが伺えます。

令和2年度と令和3年度との比較

まず、令和3年度の前期繰越指定正味財産額・前期繰越一般正味財産額は令和2年度の(次期繰越)指定正味財産額・(次期繰越)一般正味財産額ということになりますので、同額となるはずです。

令和2年度活動計算書と令和3年度活動計算書・貸借対照表

令和2年度と令和3年度の活動計算書は一致しています。
ですので、当然ながら令和2年度活動計算書と令和3年度の貸借対照表では一致しません。
そして、令和2年度の活動計算書にこの差額¥2,308,691-と考えられる項目があります。

一般から指定への振替額

それが「一般正味財産から指定正味財産への振替額¥2,308,691-」になります。
令和3年度の活動計算書はこの振替額が反映されていますが、令和3年度の貸借対照表では反映されていません。
もし、振替をしなかった場合、
令和3年度の前期一般正味財産は
¥143,521,133+¥2,308,691=¥145,559,824となり貸借対照表と一致
令和3年度の前期指定正味財産も
¥299,059,093-¥2,308,691=¥296,750,402となり貸借対照表と一致します。

令和3年度貸借対照表(差替前) 正味財産

そのため、令和3年度の差替前の活動計算書と貸借対照表の記載のズレはこの「一般正味財産から指定正味財産への振替額¥2,308,691-」を反映した(活動計算書)か、しなかった(貸借対照表)か、これが原因と考えられます。

実は令和2年度も

実は令和2年度も活動計算書と貸借対照表で一般正味財産額と指定正味財産額でズレが生じています。

令和2年度 活動計算書・貸借対照表

そういう意味では令和2年度からおかしかったと言えばおかしかったわけです。
令和2年度の活動計算書・貸借対照表の(次期繰越)一般正味財産額・(次期繰越)指定正味財産額と令和3年度の活動計算書・貸借対照表の前期繰越一般正味財産額・前期繰越指定正味財産額を比較すると以下の通りとなります。

令和3年度・令和2年度の活動計算書と貸借対照表の比較

2年にわたって活動計算書と貸借対照表で金額が違っていたんですね。

って、これ、事業報告書ですよ?
よくこの内容で、東京都に提出してましたね・・・。

では、この状況を令和3年度の事業報告書の差替版ではどうしたのか、次項で見ていきたいと思います。

令和3年度(差替後)の活動計算書と貸借対照表

令和5年6月30日に令和3年度分の事業報告書は差替えられており、活動計算書、貸借対照表はその差替えの対象となっていました。

令和3年度 活動計算書・貸借対照表 差替

令和3年度事業報告書の差替前・差替後の比較

では、差替え前に活動計算書と貸借対照表でズレていた前期繰越一般正味財産額・前期繰越指定正味財産額はどうなったかというと。

令和3年度 活動計算書・貸借対照表 差替前・後

活動計算書・貸借対照表どちらも
前期繰越一般正味財産額:¥145,829,824
前期繰越指定正味財産額:¥296,750,402

なんと、差替前の貸借対照表の数字に差し替っていました。
つまり活動計算書の数字が誤りだったということです。
加えて言えば令和2年度の活動計算書の「一般正味財産から指定正味財産への振替額¥2,308,691-」全否定です。

令和2年度の事業報告書

当然ながら、前述の通り令和2年度の活動計算書は令和3年度の活動計算書と同じ金額になるように記載していたわけですから、令和2年度の事業報告書にも影響があります。
ですが、現時点(2023/11/11)ではまだ令和2年度の活動計算書は下図の通り「一般正味財産から指定正味財産への振替額¥2,308,691-」はそのままになっているので、ものと思われます。

令和2年度活動計算書 振替額

本来なら、令和5年度6月30日時点で令和2年度の活動計算書も差し替えが必要なわけですが、現時点ではまだ実施していないようです。
逆に言えば、「2019年(平成31年・令和元年)度~2022年度に、不正な現金引き出しが確認され~」ということで、令和元年まで遡ることが必要な見通しのようなので、令和4年度の事業報告書提出時に前年である令和3年度の修正(差替え)まで、と一旦区切ったということですかね。

それで、良いわけないと思うんですがね・・・。

取り敢えず令和3年度・令和2年度に関しては貸借対照表の数字を正として差替えているようなので、少なくとも今後の活動計算書の差替えは発生しそうですね。

最後に

いかがでしたでしょうか?
令和4年度の事業報告書の提出に合わせて令和3年度の事業報告書の差替でどのような変化があったかを見てきましたが、結論としてはまだ報告途中のようで、今後も修正・差し替えが発生しそうですね。
実際に令和3年度の貸借対照表の差替に至っては令和5年6月30日で2回目の差替えになっており、団体として大分杜撰な会計をしているように思えます。

令和3年度貸借対照表 差替履歴

今回11月2日に発表された「弊団体会計不正問題についてお詫びとご報告」でも
「2019年度~2022年度に、不正な現金引き出しが確認され、総額802万7603円の使途不明金が生じていることが判明いたしました。」
とありますので、令和元年まで遡ることの見通しが立っていて、かつその内容次第では各会計項目も様々な検査や数字の見直し・訂正が入る可能性がありますので、今回の修正だけで終わるとは到底思えない状況ですね。

また、今回の問題は職員A個人の問題と絞られているようですが、貸借対照表や活動報告書に記載しているものを何度も修正している状況ですから、それらをチェックしているはずの他の理事・監事が「知りませんでした」という状況のものでもないと思われます。

今回は令和2年度・令和3年度の前期繰越指定正味財産額・前期繰越一般正味財産額に絞って見てきましたが、次回は令和3年度の活動計算書の内容についてもまとめてみたいと思います。

それでは最後までご覧いただきありがとうございました。

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