樋原伸彦(早稲田大学ビジネススクール准教授)

イノベーションのためのファイナンスが専門。早稲田大学イノベーション・ファイナンス国際研…

樋原伸彦(早稲田大学ビジネススクール准教授)

イノベーションのためのファイナンスが専門。早稲田大学イノベーション・ファイナンス国際研究所(https://cfi-wbs.com/)所長も兼務。研究室website: https://hibara-wbs.com/

最近の記事

2020年はスタートアップの資金調達のためのSaaSが来そうな予感。

2019年もいよいよもうすぐ終わります。2020年僕的に注目するビジネスは、資金調達のためのSaaSです。2019年後半にかけてバタバタと色々と僕の視界に入ってきました。 スタートアップの資金調達はなかなか手間がかかるプロセスです。とにかく、資金提供側の稟議を通すために、将来(最低5年くらい)にわたるキャッシュフローの準備など、資金提供側が望むものを言われる通り出さなきゃいけない。いったん資金調達プロセスに入ってしまうと、たぶん本業にリソースをさけられなくなるのが、スタート

    • 大企業によるスタートアップへの投資促進を企図する新税制優遇策が提案されてます

      個人版エンジェル税制も法人版エンジェル税制でもお金が動かなかったので、今度こそとしての新施策だ。 更なる詳細の続報が待たれるが、今回の記事に基づいてとりあえずコメント。この手の新税制策についてはもっとこのCOMEMOのような場での議論を盛り上げたいところ。 事業会社とコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)によるスタートアップ企業への出資、が対象とのことだが、CVCをどう定義づけるのか。現在、CVCの態様は様々な形態を取るようになってきているので、この定義の詳細が関心

      • 2019年の欧州は? 政治が再び金融市場を揺るがす可能性も。

        ユーロ導入20年。記事にもあるように、後半10年は、ユーロ導入前の90年代のEMS時代を彷彿とさせるようにギリシャをはじめとした南欧通貨が狙い撃ちに遭った期間がありました。その時も、ユーロ導入以降の最大のベネフィット享受者であるドイツが相応の負担をすべき、という議論がありましたが、なかなかドイツの政治家にそこまで踏み込む勇気はなかった。 そして、2019年、イギリスはBrexit問題、フランスはイエローベスト運動が象徴するマクロン大統領の不人気、そして、ドイツまでもメルケル

        • 1968年から50年。そしてフランスではイエローベスト運動。

          「1968年は全世界的に特に学生が異議申し立てをした年だった」と学部学生の時に、著名なフランス文学者から教わった記憶がある。80年代後半の日本の大学のキャンパス(それから予備校にも)には、1968年に学生として関わっていた教員がたくさんいたけど、まだreflectionsできる時期(まだ20年しか経ってなかった)ではなかったのかもしれない。それで、今年50年で、reflectionsできるってニュアンスがこの記事にはありますが、どうなんでしょうね。 かたや、この週末たまたま

        2020年はスタートアップの資金調達のためのSaaSが来そうな予感。

          イスラエルのUber事情

          前回イスラエルへ出張したときは、認可されているタクシー以外もUberとして営業できていて、大変快適に利用できたのですが、今回来たところ、認可タクシーにしかUberによる営業が許されなくなっていて、Uberの数が激減。で、Uberではなく、写真のGettをデファクトで皆さん利用されるようになってました。最初Uberを必死で探したんですが、「このエリアにはいません」とか、15分待ちとかだったので、途中からGettに変更、5分以内では来るようになりました。しかし、Gettも認可タク

          スタートアップへは本来転職なんでしょうけど。。

          日本の場合、スタートアップの給料が大企業のレベルに至っていないので、出向という形をとらないと、派遣される大企業社員が個人的に損しちゃうからなんでしょうが、少し話が小さいですよね。スタートアップが今はまだしも、そのスタートアップが将来大化けする、あるいはスタートアップに転職して自分のvalueが上昇する期待(つまり、どちらの場合も、今スタートアップに動いた方が、自分の将来の所得が大企業の今後の給与カーブをはるかに上回れる期待)があれば動くはず。それは、スタートアップ側もその期待

          スタートアップへは本来転職なんでしょうけど。。

          官民ファンドの理想形はありえるのか?産業革新投資機構の役員辞任に関して

          産業革新投資機構(以下JIC)で社長以下多くの取締役が辞任した。今回の騒動、痛み分けの感は否めないところがあります。 まず、民間サイドからの高報酬の要求ですが、95%が政府の出資(つまり自動的にJICにお金はついてしまう)ですから、幹部はファンドビジネスで一番つらい投資家からの資金調達の労をとってないわけで、まずそこが弱点となります。経産省としては、この一点だけでも、最初の段階で高額報酬は難しいと言えたはずです。(社長はdebtの世界の方だったわけで、VC投資のトラックレコ

          官民ファンドの理想形はありえるのか?産業革新投資機構の役員辞任に関して

          プレ金、シャイニング月とかよりも、いっそ週休三日制がいいのでは。

          働き方改革は色々話が出てますが、仕事をちゃんとしたいのに、毎日早く帰れ帰れと言われるのも、労働生産性が上がるとは必ずしも限らないような。海外との時差で考えれば、日本時間の月曜の昼間は欧米はほとんどまだ日曜なわけで、日本の月曜はいっそお休みにしてしまってもそんなにビジネス上の問題はないか、とも思います。(ちなみに、イスラエルは金土が休みですが、ビジネス上の問題は出てないかと。) 土日月と家族と一緒に過ごせれば、火水木金は思いっきり退社時間を気にせず働きまくる方が労働生産性は上

          プレ金、シャイニング月とかよりも、いっそ週休三日制がいいのでは。

          スタートアップ企業に貸せるようになるか?

          日曜日の一面トップです。ポイントはいくつかあるんですが、3つに絞りますと、 1) 銀行ではなくて事業会社が企業に融資する力がでてくるんじゃないの、という話。理由はIT企業などの事業会社に、融資対象となりえるかもしれない企業の取引データが蓄積していることから、そのデータに基づけば信用力を評価することができそうじゃないかと。これは、以前からもある「企業間信用」ではあるのですが、データーの蓄積及びアクセスが今は格段に高まってきているので、注目されてるわけです。 2) その結果、

          スタートアップ企業に貸せるようになるか?

          スタートアップのための都市エコシステムは今後どうなるのか?

          良記事。このような分析も含めた記事というのが、なぜか日本の新聞には欧米の新聞よりこれまで極端に少なかったんで、こういうのは大変好感が持てます。 ここの地図に載ってる各都市は、いわゆるEE(Entrepreneurial Ecosystem)と言われ、スタートアップ企業が活動しやすい環境を提供しています。なぜ、あえて「都市」ではなく「エコシステム(環境系)」という表現をみんな使いたがるのか?それは、都市というコンセプトだけでは内包しきれない、労働市場のこと、資金提供機能の状況

          スタートアップのための都市エコシステムは今後どうなるのか?

          行政が莫大なビジネス機会を奪ってますよね!

          こういう記事を見ると、本当に悲しくなりますよね。行政がまさに、これからのビジネス機会を潰してしまっている。2020年のオリンピックを控えて、これでいいのでしょうか。それ以上に、日本が直面しつつある多くの課題の解決に繋がりそうなチャンスを自ら潰している。このコストはとんでもなく大きいと思うのですが。。。 恐らくこういう指摘を受けても、この結果を招いてしまっている行政システムの中では、誰も責任を感じていないっぽいのが、また状況の深刻さをより一層際立たせます。政治が、国民が、こうい

          行政が莫大なビジネス機会を奪ってますよね!

          ベルギー戦:この試合で考えましょ。日本のサッカーとかじゃなくて。

          もちろんとってもexcitingな試合を見せてくれて凄くありがたかったんですが、今回のワールドカップでは、これまで日本が先制してリードする試合展開があまりなかったのがこのベルギー戦に影響したのかなあ、とは思わなくもありません。コロンビア戦で先制した後前半で追いつかれるまで、それから後半2-1になって試合終了まで、だけでした。それも1点差だけ。今日のベルギー戦のように2点リードするなんていう展開は皆無でした。 なので、今日の2点リードの状況はベンチにとっても選手にとっても想定

          ベルギー戦:この試合で考えましょ。日本のサッカーとかじゃなくて。

          「職務範囲の明確化」が肝だと思う。

          この記事にある通り「働き方改革法」が通りました。「とにかく残業なくさなきゃ」という話ばかりなのですが、そこを直接変えるだけでは解決にならないよなあ、とずっと思ってました。「無限定型」という単語がこの記事でも出てましたが、ここからどこまで職務範囲を限定する方向に行けるか、が働き方改革の成否を左右するかと。日本企業でこれまで出世してきたキャラは、自分の職務じゃないところにも頭を突っ込んで、社内の違う部署あるいは役員レベルにインフォーマルに名前を売れる人だったような。となると、当然

          「職務範囲の明確化」が肝だと思う。

          武田薬品:株主の反応「借金返せるのか?」

          この記事は武田に関することだけではないですが、「借金返せるのか?」という見出しはどうなんでしょうね。株主は債権者ではないですからね。もちろん、企業に対するキャッシュフロー権としての順番としては、株主が債権者に劣るので、その意味では、もちろん借金返した後でしか株主に企業価値は配分されませんので、この発言には一理あります。しかしながら、企業がリスクをある程度取って行くことは、株主の利益に合致するはずです。なぜなら、うまく行ったときのupsideは債権者ではなく株主のものになるから

          武田薬品:株主の反応「借金返せるのか?」

          北朝鮮特需か - 東京五輪の次の日本経済の牽引役は。

          トランプ大統領の記者会見を待たないといけませんが、経済についても何か示唆があるような気がします。もう、優秀なビジネスマンはポジション取ってるんでしょうね。日本企業にも期待したいところです。 米国政府もトランプ前はこういった機会を作れなかったわけで、米国の官僚制の機能も低下しているのかも。官僚制の問題はどこもそんない大差ないんでしょうかね。 取り急ぎです。 (了) https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/summit2018/ ©

          北朝鮮特需か - 東京五輪の次の日本経済の牽引役は。

          空襲に遭ってない街の魅力。京都、金沢の次はここかなあ。

          仕事関係で別府に行く機会は多かったんですが、いつも、この街の魅力はもっと知られていいんじゃないかと思ってました。 空襲に遭ってないので、別府のdowntownは戦前の仕切りがそのまま残っていて、善悪織り交ぜなかなか魅力的な街です。 下記にコピペした図録でも、大都市で空襲死者数が表示されてないのは、京都、金沢など数えるほどです。 空襲に遭わなかった街として、京都、金沢(北陸新幹線の開通で脚光を浴びました)、ついで次は別府かも。空襲から免れ、戦前が破壊されていない街はなんか

          空襲に遭ってない街の魅力。京都、金沢の次はここかなあ。