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あのときの書評

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過去に書いた書評を順次アップしていきます。
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記事一覧

中崎タツヤ『もたない男』

中崎タツヤ『もたない男』

※2010年12月掲載

 年末の大掃除をきっちり済ませてお正月、という方も多いと思うけど、我が家はいつもどおり散らかったままである。いや、多少は掃除しましたよ。でも、床や机の上に積み上がった本が片付かない。だって、物理的に収納できる限界量を完全に超えてるんだもん。本棚の増設も限界で、もはや片付けようにも片付けるスペースがないのである。
 だったら、不要な本を売るなり捨てるなりすればいいじゃん、っ

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天久聖一『こどもの発想。』

天久聖一『こどもの発想。』

※2011年3月掲載

 あまりのバカバカしさゆえ、逆に「あんたはエライ!」と賛嘆せずにいられない“天才的にバカな本”、略して「天才バカ本」を紹介する、というコンセプトで始めたこのコーナー。これまで紹介してきた本は、いずれもイイ大人がバカなことを真剣にやってるところに価値があるもので、バカと言っても本当のバカが書いた本(ビジネス書とか自己啓発本とかであるでしょ?)はもとより相手にしないのであった。

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田中宏和『田中宏和さん』

田中宏和『田中宏和さん』

※2010年11月掲載

 みなさん、自分の名前、好きですか? 私はあんまり好きじゃない。電話で「新保(しんぼ)です」と名乗っても「は?」と聞き返されたり、「じんぼさん」や「しんどうさん」ならまだしも「しんごさんですね?」ってオレは風見しんごか!みたいなことばっかりで、なかなかわかってもらえないのがイヤ。さらに「信長」となると、「本名ですか?」とか「やっぱりご両親が織田信長のファンで?」とか、いち

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安居良基『世界でもっとも阿呆な旅』

安居良基『世界でもっとも阿呆な旅』

※2010年10月掲載

 いつ、どういうきっかけで知ったのか、まるで記憶にないのだけれど、世界のどこかに「エロマンガ島」という島があることは、かなり昔から知っていた。中学生ぐらいのときには地図帳でその存在を確認して、ほかにもエロい地名はないか、みんなで探したりしたものだ。「スケベニンゲン」という地名を知ったのもその頃だったか。インターネットで検索すれば、エロマンガ島に関する情報もエロ画像も、簡単

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黒木夏美『バナナの皮はなぜすべるのか?』

黒木夏美『バナナの皮はなぜすべるのか?』

※2010年8月掲載

 もはや定番となった感のある「○○はなぜ××なのか?」式のタイトル。新書なんかだと、期待したほど中身がなかったりすることもしばしばだが、この本は違う。最初から最後まで、濃厚な具がみっちり詰まってる。ただし、『バナナの皮はなぜすべるのか?』というタイトルは、やっぱりちょっと内容を正確には表していない面もあり。
 本書がまるまる一冊かけて追究したテーマ。それは〈バナナの皮ですべ

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内海慶一『100均フリーダム』

内海慶一『100均フリーダム』

※2010年7月掲載

 たまたま本屋をうろついてたら、目が合ってしまったのだ、この本と。正確に言えば、この本のカバー写真に使われているヘンなパンダと目が合った。
 な、何だ、このパンダ……!? 質感からしてぬいぐるみではなく、いわゆるフィギュアの類のようだが、何かがおかしい。普通ならティアドロップ型のサングラスみたいな目の周りの模様が、『天才バカボン』に出てくる目ん玉つながりのお巡りさんみたくな

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レタスバーガープリーズ.OK,OK!

レタスバーガープリーズ.OK,OK!

※拙著『現代マンガの冒険者たち』(2008年刊)収録の原稿です。

 長年、『朝日新聞』と『アサヒ芸能』でマンガガイドを執筆しているが、同じ「アサヒ」でも読者層はずいぶん違う。朝日では少女マンガを扱うこともしばしばあるが、アサ芸のほうではさすがに少女マンガは避けている。

 しかし、過去に一度だけアサ芸で少女マンガを紹介したことがあった。それが松田奈緒子の『レタスバーガープリーズ.OK,OK!』だ

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『鉄棒する漱石、ハイジャンプの安吾』

『鉄棒する漱石、ハイジャンプの安吾』

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2003年10月

夏目漱石から向田邦子まで――
作家とスポーツの意外な関係を発掘する「夏目漱石は器械体操の名人だった」「坂口安吾は全国中学校陸上競技大会の走り高跳びで優勝したことがある」「向田邦子はボウリングでアベレージ200以上の腕前だった」……そんな思わず「へぇ~」とうなってしまうトリビアネタが満載の本書。帯のキャッチにあるとおり「文士25人と

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赤瀬川原平『背水の陣』

赤瀬川原平『背水の陣』

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2003年8月

身の回りのことから環境問題を考える
超自然体の“ゲンペイ流環境論” タイトルを見ただけでは何だかわからないが、環境問題について書かれた本である。といっても、声高に環境保護を叫んだり、しかつめらしく啓蒙を垂れるような類のものではない。

「ぼくのような人間までもが、環境問題を考えなければならなくなった」――そんな書き出しに象徴されるよ

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建築という行為を一味違った視点から見てみると……

建築という行為を一味違った視点から見てみると……

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2006年6月

 人生で一番大きな買い物といえば、やはり家だろう。限られた予算のなかで、いかに理想に近い住まいを手に入れるか。誰しも頭を悩ませるところである。

 夫は普通のサラリーマン、妻はフリーライターという、とある夫婦の場合もそう。さまざまな物件を2年近く見て歩き、たどり着いた結論が〈築25年の中古住宅をリノベーションする〉というものだった。

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日本の童貞

日本の童貞

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2003年7月

日本社会における「童貞観」の変遷を女性の目からクールに分析した労作

 とりあえずタイトルだけでつい買ってしまったこの本。戦前から現在に至るまでのセックス・リサーチや雑誌記事などに表れた「童貞」に関する言説を抽出し、社会における「童貞観」の変遷を分析したものだが、とにかくよくぞこれだけの資料を調べたと感心してしまう労作である。笑った

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昭和の“元少年”を刺激する野球と科学への斬新な視線

昭和の“元少年”を刺激する野球と科学への斬新な視線

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2006年5月

 ドイツW杯開幕まであとわずか。が、昭和の時代に生まれ育った人間にとってスポーツといえば、何をおいてもまず野球である。本稿執筆時点で、セ・リーグは巨人がトップを快走しており、阪神ファンの私としては夜も眠れぬ日々であるが、実はこの巨人の躍進を予見していた人物がいる。スポーツライターの小関順二氏。著書『野球力』のなかで同氏が巨人再建案と

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運転

運転

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2003年3月

あらゆるマシンの“運転”の極意を楽しみながら疑似体験できる一冊

 男にとって「クルマの運転がヘタ」というのは「SEXがヘタ」というのと同じくらい屈辱的なことであろう。それはつまり、食欲や性欲と同じレベルで“運転欲”みたいなものが遺伝子に組み込まれている証拠ではあるまいか。そうでなければ、いい年した大人が『電車でGO!』に熱中したり

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SHINJO

SHINJO

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2003年3月

メジャーリーガーたちをも魅了した“新庄マジック”の全貌が明らかに!

 いよいよメジャーリーグ開幕。今年もイチローは当然のようにヒットを積み重ね、野茂は黙々と三振の山を築くに違いない。そして何より松井の一打席一打席がTVや新聞をにぎわすことだろう。しかし、メジャーにはもう一人、忘れてはならない日本人選手がいる。イチローと比べれば打率

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