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1~10のなかで、最も像高の高いものはどれか。

次ページの1~10までの彫刻作例に関連する各問に答えなさい。
◆1~10のなかで、最も像高の高いものはどれか。
◆1~10のなかで、最も像高の低いものはどれか。

('00年・上智大学)

 日本史の問題なのだが、どう見ても「TVチャンピオン 仏像王選手権」の問題としか思えない。仏像の背の高さなんて、よほどのマニアでもなければ、いちいち覚えてないっつーの!

 これ以外にも、「1~10のなかで、最も制作年代が古いとされるものはどれか」「1~10のなかで、最も制作年代が新しいとされるものはどれか」「1~10のなかで、一木造ながら乾漆を最も多用しているものはどれか」といったマニアックな問題が連発される。結局、大問1題がまるまる仏像の問題だけに費やされており、まさに“仏像マニアによる仏像マニアのための問題”というほかない。

 ちなみに、「彫刻作例群」として挙げられているのは、新薬師寺薬師如来像、神護寺薬師如来像、元興寺薬師如来像、勝常寺薬師如来像、室生寺金堂釈迦如来像、室生寺弥勒堂釈迦如来像、薬師寺僧形八幡神像、唐招提寺鑑真和上像、法華寺十一面観音菩薩像、観心寺如意輪観音菩薩像の10体。どれが一番背が高くて、どれが一番低いか、わかりますか?

 上智大学は世界史でも同種の問題を出題している。5つの彫像の写真を見せて、それぞれに該当する人物を「皇帝(a~g)から選びなさい」というのである。そこで挙げられている皇帝とは「a マルクス=アウレリウス b ハドリアヌス c ウェスパシアヌス d カエサル e アウグゥストゥス f ネロ g ティトゥス」。教科書の隅から隅まで勉強した受験生なら名前はわかるかも。が、誰がどんな顔かまで知ってるかなあ。
 ていうか、知ってる必要ある? 上野の西郷像も本物とは似てないらしいし、こんな彫像の顔写真なんか覚える意味はないだろう。歴史を学ぶということは、そんな瑣末な雑学を覚えることじゃないはず。一部の彫像マニア向けに問題を作るのはやめましょうね。

(※2005年に某誌より依頼を受けて拙著『笑う入試問題』から抜粋・再構成した記事が先方の都合でボツになりました。そのときの原稿を順次掲載していきます)

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