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10年後の国会では何が争点となっているか

10年後、日本の国会では何が争点となっているだろうか。現在観察できる社会的事実をもとに推論しなさい。(600字程度)
('00年・群馬大学)

 こんな国際情勢も経済情勢も激動の時代に、10年後の国会の争点なんてわかるわけないって! 「現在観察できる社会的事実をもとに」って、そりゃそれ以外に判断材料ないもんなあ。でもまあ、社会的課題と国会の争点とは別物だし、文字通り十年一日のごとく、10年後も靖国問題とか年金問題とかで不毛な論争を繰り広げているのかも。それとも、もしかしたら憲法九条が改正されて、徴兵制が議論されてたりして……。(注:この原稿を書いたのは2005年です)

 この手の“未来予測問題”は結構多くて、たとえば「21世紀に、世界を大きく変える原動力となるものは、何であろうか。あなたが予想するものをひとつあげて、理由とともに述べなさい」('02年・大阪大学)、「これから先100年の間に世界はどのようになると想像しますか。その理由は何ですか」('99年・立命館大学)なんてのも出題されている。10年後の日本のことだってわからないのに、今後100年間の世界の変化って、そんなスケールのでかい話を一介の受験生に聞かないで! 世紀の変わり目ってことで出された問題なんだろうけど、19世紀末に今の世界のあり方を予想できた人が、はたして何人いただろうか。携帯電話やインターネットがこれほど普及し、人々の生活様式や経済活動までも変容させるとは、誰も考えなかったに違いない。

 しかも、恐ろしいことに、上記の阪大と立命館大のやつは英語の問題なのだ。日本語でさえ何をどう書いていいかわからないのに英語でなんて、アジとイワシの区別もつかない人間にマグロの解体ショーをやれと言ってるようなもんである。ようするに無理!

 出題者の先生は、これらの問題にどういう解答を想定しているのか。同じことを自分が聞かれたら、何と答えるつもりなのか。「自分がされて困ることは、他人にしてはいけない」と学校で習わなかったのか。もう少し受験生の身になって、答えやすいテーマを選んでほしいものである。

(※2005年に某誌より依頼を受けて拙著『笑う入試問題』から抜粋・再構成した記事が先方の都合でボツになりました。そのときの原稿を順次掲載していきます)


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