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「ドラえもん」の道具が実現可能か検討せよ

 藤子不二雄原作のアニメキャラクター「ドラえもん」はいろいろ道具をもっている。タイムマシンやスモールライトのように、現段階の物理学からすると、とうてい不可能であり実現できないことが証明できそうなものもあるが、いくつかは実現できそうに見える。下に何となくできそうに見える道具を上げたが、これらから一つを選んで、それが実現可能かどうか検討しなさい。不可能ならばその理由を筋道を立てて詳しく説明しなさい。可能ならばどのような原理に基づくのか、実現するにはどのような工夫が必要か論述しなさい。
1)タケコプター
 プロペラと心棒からできているたけとんぼの様な道具で、これを帽子につけてかぶると空に浮かび、任意の方向に飛行できる。
2)エネルギー節約熱気球
 ライターの火だけで飛ぶことができる熱気球(人が乗ることができる)。
3)消光電球
 スイッチを入れると、光を吸収して夜のように部屋の中が暗くなる電球。4)望遠メガフォン
 スコープで相手を狙いながら話すと、遠くにいてもその人に声が届く。

('99年・千葉大学)

 日本が世界に誇る人気キャラクター「ドラえもん」が、ついに入試にまで登場! それも、ただ名前が出ただけじゃなく、ドラえもんの “ひみつ道具”が実現可能かどうかをまじめに検討させようというんだからビックリだ。
 課題は「タケコプター」「エネルギー節約気球」「消光電球」「望遠メガフォン」という4つの「何となくできそうに見える道具」の中から一つを選び、「それが実現可能かどうか検討しなさい。不可能ならばその理由を筋道を立てて詳しく説明しなさい。可能ならばどのような原理に基づくのか、実現するにはどのような工夫が必要か論述しなさい」というもの。一見、ふざけているようだが、同大学によれば、「物理に関する潜在能力を引き出すのが目的で、この課題は問題発見能力がポイント」とのことで、出題した側も大まじめなのである。

 そう、実はこの問題、同大学が他に先駆けて導入した先進科学プログラム、いわゆる“飛び入学”の入試問題で、その点でも当時かなり話題になったものなのだ。大学入試にドラえもんが登場すれば注目されるのは当然で、そういう意味ではあざとさも感じる。が、誰もが一度は「『どこでもドア』があったらなあ」なんて考えたことがあるように、ドラえもんの道具が想像力を刺激するのは疑いようのない事実。「物理とその関連分野に特に優れた才能を発掘しよう」という大学側の意図にはピッタリの題材だ。単に話題作りというだけでなく、科学する心と想像(創造)力を問うという点で、意外とナイスな問題といえるのかも?

(※2005年に某誌より依頼を受けて拙著『笑う入試問題』から抜粋・再構成した記事が先方の都合でボツになりました。そのときの原稿を順次掲載していきます)

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