見出し画像

9.CRM - はじめての通信販売&Eコマース

※本記事は2005年に作成し、自身のホームページ(Chikunai.net)で2016年ごろまで公開していた記事をnoteに転記したものである。私の管理不行き届きで、ホームページを失ってしまった。なるべく2005年の頃のまま転記するため、今読むと古臭さのある点は、ご理解いただきたい。このシリーズのトップはこちら→「はじめての通信販売&Eコマース

通販企業でCRM(Customer Relationship Management)を取り入れていない企業はないでしょう。通販企業限らずCRMはここ2000年からホットな話題です。顧客サービスを向上させる考え方として、システムに広く取り入れられているモデルです。

CRMを一言で語ると「顧客の声に耳を傾け、長く深い関係を作ろう」です。「顧客主義」、「顧客中心主義」とも言います。

これでは分かりにくい。これは、売り手側がシステムやサービスを高く売るために作った言葉です。
リアルの世界に置き換えてみます。

例えば女性の場合、美容院や化粧品専門店に始めて行くと、まず氏名、電話番号、住所、生年月日などを用紙に記入させられます。顧客カルテです。
このカルテは、お客様と会話したやり取りを記入していきます。
美容院であれば、いつ、誰が、どのようなカット・カラー・パーマをしたか記入します。さらに会話の中で得られた、趣味、職業(勤め先)、嗜好などの情報も記入します。
これを元に、過去3ヶ月来店の無いお客様がいた場合は、ダイレクトメールを送り来店を呼びかけます。
「最近いかがですか?」
「そろそろ来られる時期ではありませんか?」
クーポンなどの割引きオファーで誘うのも手です。
また、顧客満足度を上げるために美容師は、次回来店されたときも会話が弾むように、カルテから趣味・嗜好を確認して仕事に取り組みます。お客様にとってお店側に顔を覚えてもらっている事は、気持ちいいものです。
化粧品でも同じです。カルテに対していつ何を買われたかを記入します。化粧品の平均消耗期間を過ぎても来店が無ければ、化粧品会社側からアクションします。肌の悩み(肌質)やお問い合わせ内容などもカルテに記入し、顧客の悩みに答える対応や、今後の商品開発に利用します。

例えば男性の場合、自動車のディーラー(販売店)へ、新車の見学・試乗・カタログ入手などで、氏名、電話番号、住所、生年月日などを用紙に記入させられます。営業マンとの会話で、さらに職業(から年収を推測)や、嗜好を得ます。
その後、自動車の購入に結びつかなければ、試乗キャンペーンやローン金利優遇キャンペーンのダイレクトメールを送り、来店やさらに購入を誘います。
自動車が購入されれば、次の買い替えまでの様々なアクションが待っています。定期メンテナンスのお知らせ。オイル交換のお誘い。そして車検です。
2度目の車検に近づいた頃から、買い替えを誘う新車の情報をお客様に伝えます。お客様の年齢や嗜好によって進める車種を変えます。DINKSであればステーションワゴン。ファミリーであればミニバンやワンボックス。子供が親元を離れた夫婦であれば、高級セダンやドライビングを楽しめるオープンカー・スポーツカーなどなど。

これがCRM。IT企業だけの話しではなく、大企業だけが取り入れる話しでもありません。普段から日常生活の中で、CRMを取り入れられています。何も難しいことはありません。

90年代前半、大量生産・大量消費に終りが告げられました。顧客は、それまで供給側主導で、差別化の少ない商品を購入していました。しかし、時代が変わり消費者のニーズは多様化したのです。ブランドやカリスマへの一極集中、または個性を求める消費行動へ変わりました。商品サイクルも短くなり、売り時を逃すと在庫の山が築きあげられたのです。
従来型の企業形態では、顧客が何を求めているのか見えにくく、従来形の商品やサービスでは売れなくなってきました。

そこで、一人一人の顧客の声(購買、意見・感想、クレーム、アンケート)に耳を傾け、集めた情報を分析した結果、新たな販売に生かす戦略へ転換しました。
一人一人の購買動向を把握できるため、一人一人のニーズに合わせた商品の訴求・提案が可能です。これをOne to Oneマーケティングと言いますが、実際は顧客を数十のセグメントに分け訴求していきます。
さらに二次効果として、SCM(Supply Chain Manegement)に生かされ、過剰な生産、過剰な調達が減り、在庫の山が減るなど、バックオフィスの効率も回復しました。
商品の改善やサービスの向上、さらに潜在的な欲求を満たす新商品や新サービスを提案でき、効率的に顧客と長く深い関係を作れ、新規顧客獲得にも役立ちます。

CRM化にあたってまず始めるのが、美容院が行っている顧客カルテ作り。インフラの構築です。顧客データベースを作り顧客を中心にした企業形態へ変化させます。

従来企業の中で、顧客と接するマーケティング(Marketing)、営業(Sales)、サポート(Support)部門は、横の繋がりの浅い関係でした。しかし、CRMでは各部門毎に所有していた顧客データを統合し、一つの顧客データベース・顧客カルテを元に活動します。各部門の活動結果は、統合した顧客データベースに履歴を追加していきます。

図1 従来の顧客データベース
図2 各部門を統一した顧客データベース

顧客を中心に置く。
顧客と長く深い付き合いをする(Life Time Value)。
会員・非会員の隔たり無く、顧客を個人(個客)として管理する。

マーケティングであればダイレクトメール・カタログ送付やアンケート収集。営業であれば販売・キャンペーン。サポートであれば応対履歴などが、顧客との会話した履歴になります。

今日商品を購入した顧客は新規顧客なのかリピーターなのか(顧客セグメント)。
何回も購入のある優良顧客、又は最近購入の無い離反顧客(購買動向)。
ヘビーユーザー又はクレーマーからの意見(応対履歴)。
反応を示した又は示さないダイレクトメール(媒体効果)。
反応を示した又は示さないキャンペーン(インセンティブテスト又はオファーテスト、クリエイティブテスト)。
顧客属性別(デモグラフィック分析)、顧客嗜好別(サイコグラフィック)で知ることができます。


図3 全てのコミュニケーション履歴は顧客データベースへ

顧客データベースを全社で共有できることで最も大きいのは、企業の戦略立案を担うマーケティングです。PDCAで立てた仮説から最終的な評価までが可能になります。むしろ、そこまでできて初めてCRMの完成といえます。
他部署間の連携がしやすくなり、企業にとって重要で大事な顧客の動向を全部署で認識することができます。
優良顧客と捕らえた「個客」に対して、マーケティング部門ならポイントなど優遇施策で顧客離反防止、営業部門ならインセンティブ又はオファー(特典)、サポート部門なら手厚いサービスを提供することができます。また、開発部門はこれら情報を元にして新製品を開発したり、従来の製品にリニューアルや新しいタイプ(サイズや色など)を増やすことができます。
サポート部門で収集したクレーマー顧客情報があれば、マーケティング部門がダイレクトメール・カタログを送ることなく、営業部門がアウトコールもすくことなく、コストも被害を抑えられます。

このように情報を蓄積する事で、いろいろな角度から顧客の嗜好・動向がわかるようになり、企業活動の意識決定に大変役立つ情報が引き出せるようになります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?