消費と生産の衝突

消費と生産の衝突について考えている。

例えば脱炭素を目指すと、アルミの消費は増やし、生産は減らす、という方向になる。自動車の省燃費化のためには軽くて強いアルミが必要だが、アルミは精錬時に鉄や銅の何倍もの二酸化炭素を出す。だから消費は増やしたいけど生産は減らしたい、というあり得ない結論になる。

ここで問題を更にややこしくしているのは、アルミの生産地と消費地が異なるということだ。例えば最大の生産地は中国だが、消費地は主に先進国である(中国も大消費地だが)ということだ。

そもそもCO2の排出を減らすのは排出国の責務だが、CO2を出して作った製品は別の国で消費される。だから先進国のCO2排出量が昔よりも減っているのは当たり前のことで、ただ排出量を新興国に輸出しているだけのことだ。(だけは言い過ぎで、省エネも再エネもしてはいるが。)

だからそのうちに、排出国の責任ばかり言わずに消費国も責任を取れ、さもないとアルミニウムを作ってやらないぞ、といった主張が出てくるのではないか。

日本の給料はこの30年間でほとんど増えず、海外に比べてかなりの安月給になっているが、それでも僕らが豊かな暮らしができるのは、グローバル化が進んで、良いものが安く安定的に買えるようになったからだ。

だからグローバル化に反対する気はない。ただ、生産と消費のねじれの問題は対処しないと、僕らの暮らしは回らなくなり、脱炭素もできなくなる、という虻蜂取らずになると思う。

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