待ち焦がれていた、より厳しい道へ
念願叶ってプロになったフィリピンでの1年目。両親が試合を観に来てくれた。プロとはいえ当時の給料は多くはなくて、本当は招待したかったけれども、両親自らお金を出して来てくれた。
両親が泊まったのは「Dusit Thani Manila」。5つ星ホテル。両親と夕ご飯を食べ、ホテルの部屋でくつろいでいるときに、親父がぼそっとひとりごとを言った。
「俺もやっとこういうところに泊まれるようになったんだな」
この言葉とあの背中は今でもはっきりと思い出せる。
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親父はたしか私が小学生の時に独立したと記憶している。サッカーの送り迎えのときによく「ちひろはこれ、どう思う?」って聞いてきた。当時は適当に返事していたけれど、今振り返ると仕事のことをいつも考えている人だった。苦労した背中を見ていた。それでも、ときには厳しい顔つきで、ときには楽しそうに仕事の話をしていた。
そんなこんなで大学生になった。将来のことを考えたとき、親父みたいに働きたいと考えていた。でも4年生のときに親父に言われた
「2年間好きなことをやっていいぞ」
と言ってくれた親父のこの言葉に甘ったれの俺は甘えた。今しかできないことだと思った、プロサッカー選手になる夢を追いかけることを両親にさせてもらった。
でもどこかで現実も見ていた。サッカーを辞めた後のことも考えていた。だからエージェントをつけずに自分自身で売り込んで交渉した。仮説を立てて、調べて、行動して、失敗したら改善する。そんなことを自分という商品を売り込む中でやってきた。そして、語学。英語をある程度までには伸ばしたかった。
そんな中でもいつもあったのが親父の背中。いつかはそっちの世界、ビジネスの世界に行こうと思っていた。
そのタイミングは2年前になる、、、はずだった。
本帰国のタイミングで一般企業への転職活動をしていた。サッカーの世界で働くことなんてまったく考えていなくて、探してもいなかった。いくつかの会社の選考途中の2018年末、そんなときに私が帰国すると知った知り合いが「興味ある?」と繋げてくれたのが徳島ヴォルティスだった。
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そこから2年。徳島ヴォルティスとジュビロ磐田という素晴らしいチームで通訳として働くことができた。怒涛の2年間だった。本当に楽しい時間を、素晴らしい仲間と、選手と、サポーターの皆さんに与えてもらった。本当に本当に楽しい時間だった。いつまでもここにいたいと思うほど、熱く、仕事ができたと思う。
でも...その充実感とは裏腹に焦燥感もいつもあった。この居心地のいいところにズルズルといてもダメだとも思っていた。だから、あのカッコいい親父の背中を追いかけることにしました。俺もいつか仕事をしているその背中を子どもに見せたいと思います。
ふー。。。
先日、ヴォルティスとジュビロの試合をスタンドで見て、やっと気持ちの整理が付きました。ちょっと時間がかかってしまいました。あそこで働いていたんだなと思うと、本当に不思議な感じで。もうフィールドからスタンドを見上げることもないんだなぁ。夢みたいだったなぁ。楽しかったなぁって。。。
徳島ヴォルティスの皆さん、私がどんな気持ちで働いていたかは年始に書いた記事の通りです。(「通訳1年目」) 今でも何かとTwitterやInstagramで声をかけていただいて、本当に嬉しいです。昨年あと1点で届かなかったJ1昇格まであと少しですね。自分のことのようにワクワクしています!
ジュビロ磐田の皆さん、短い間でしたが、この伝統あるチームに加わることができて本当によかったです。そして何もできなくて申し訳ありません。ただ、開幕戦で見たヤマハスタジアムの光景。あの満員のスタジアムの雰囲気には鳥肌が立ちました。早くあの光景が戻ってくることを切に祈っています。そしてこのコロナ禍で社会的アクションを起こした選手たちには心の底から尊敬しかありません。
そうだ、1つエピソードが。7月の九州豪雨で地元熊本の球磨川が氾濫したとき、大貴が「ご実家は大丈夫ですか?困ったことがあれば選手会からも支援するので言ってください」と言ってくれました。幸い実家は大丈夫だったので丁重にお断りしたのですが、その心遣いがとても嬉しかったのを覚えています。
そんな人間としても素晴らしい選手たちと仕事ができたことを誇りに思います。きっと来年はやってくれるはず。心から応援しています!
今でも2チームはとっても大好きなチームです!
大事な試合にはふらっと応援に行きたいと思いますので、見かけたら声かけてください😁
次のフィールドでしっかり戦って、いつか違う形でサッカーに、スポーツに貢献できたらと思います。
本当にありがとうございました!
nos vemos
Chihiro
ちなみに「Mr.前言撤回」だということはここに記しておきます笑
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