クライマックスがセックスシーン。マンガ『星屑ニーナ』の圧倒的原始に今日も泣いてる

※ネタバレを含みます

マンガ『星屑ニーナ』が俺のストライクゾーンに2000km/hの超豪速球を喰らわせてから早1週間。今日も今日とて『星屑ニーナ』を読んでむせび泣いてる。ヒンッ!もうホント素晴らしい…サイコーだ!ビバ人間!

そう、このマンガは原始の圧倒的パワーで生きづらさを和らげてくれるんだ!

「そんなに凄いマンガなの?」

言わせてくれ。凄いんだよ!マジで。ヤバい。

まずタイムリープもの。どうだ、凄そうだろう。「タイムリープものは名作の法則」。そう、時かけ、まどマギ、シュタゲ、マブラヴ、YU-NOなんかが有名どころだな?

で、今の全部忘れてもらって、全裸。圧倒的全裸。そして、セックス。クライマックスがセックス。ヤバい。このお話の舞台はアンドロイドが存在する未来。なのに行き着く先が肉体と肉体。

何がどうしてタイムリープもののラストがこんなにプリミティブでアナログなんだ!?やいやいやい!読み手の今は21世紀だぞコラ!AIでデータサイエンスで落合がシンギュラティでギンギンなんだぞ!

でも、こんなにも涙がこぼれて止まらないのは、現代の生きづらさに猛烈で鮮烈なアタックをかましてるからなんだよ。

生きづらいのは「未来」のせい?

「生きづらい」「閉塞感がある」

これはきっと俺たち10~20代が抱え込んだ決定的な病だ。どこに向かってるのかもわからねぇ。生きている意味も見出せねぇ。なのに今日も明日も明後日も、ダラダラとそれでいて少しずつ首を真綿で絞められるような感覚だけがキンキンにあんだよ!脳みそが酸欠になって悲鳴あげてんだよッ!

でも、そんな悩みのスケールってすげー大きいようで、実は小さいんじゃないの?

未来。それが俺たちを悩ませ、目的を与えようと意識させ、タスクに日々を支配させる。達成できないモヤモヤと低下する自己肯定感に、メンタルをゴリゴリに削られてもがき苦しんでる。

でも、現在、今ここに、俺たちは生きている。それを忘れてはいないか?俺たちは根源的な欲求を無視してないか?それをこのマンガは問いかけてくんだよ。

メシ!寝る!セックス!

『星屑ニーナ』のラストはこうだ。

主人公のアンドロイド「星屑」とヒロイン「ニーナ」は無人島に不時着。空を飛べるバイクが存在する未来で、あまりにもポンコツなミスだ。しかも連絡手段はない。脱出できない。発達した科学に支えられてきた2人は、そこで生き延びねばならない。

ではそこで絶望するのか?

まぁ、んなわけない。アンドロイドである星屑が人間になるというアクロバットをかましながら、2人は生をどんどん体感していく。

人間になって初めて眠り、夢を見る星屑。起きたらウトウトする。二度寝しようとする。どこか嬉しそうな星屑をニーナが叩きおこす。

2人は食料を求めて走る。でも捕まらない…。焦る。あぁッ…また捕まらない。喉が乾く。

「おなかすいたー!」そう叫ぶ。すると、見つける宝物。
「こっちに水場がありましたー!」
ゴクゴクと喉を鳴らして2人は水を飲む。水だけで3日が経った。

食料の魚を捕まえる。
「3日ぶりの食べモンだーッ!絶対離さないからッ」
ニーナのその喜びに、アンドロイドだったはずの星屑が叫んだ!
「わかります!ニーナさんが泣いてるわけ」
「でしょー!」

2人はこれまでないほどに共感し、涙を流す。

さぁ、メシの時間だ!!!焚き火を起こす。魚を焼く。ジュワジュワと音をたて、肉汁がしたたる!
あぁ…おいしそうだ! 釣りたての魚の塩焼きって本当に美味しいんだよなぁ…。星屑は上品にかぷっとかみつく。
はぷはぷ、はー…」腹が満たされ、温かくなっていく感覚に思わず涙がこぼれる。
「お手本みせたげる」そんな彼を見てニーナはいう。
「フーフーッツフーッ」豪快ッ!ガパッとかぶりつく
熱ッ 熱 あふ おいひい あふい おいひー!
満面の笑顔でいう彼女を見て、よぅし!と星屑がガブッいく。
「熱ッ熱ッ熱ッおいしい熱いおいしい…」
焚き火が揺れる2人の影をが照らし、次第に生まれる感情が2人を近づける。

月が照らす夜の海辺。そこで、2人はセックスをする。しながらに、星屑は泣く。本人にも理由はわからないのだ。

「ボクはもう100年以上生きています」
そう言いながらも、強くニーナを抱きしめる。
「じゃあ遅すぎるくらいね」そうニーナは耳元でふふふと笑って、星屑を抱きしめ返す。無言の抱擁。有無を言わせぬ肯定。

眠って、食べて、怒って、泣いて、笑って、踊って…。
何もない無人島。なのにニーナは微笑む。

「アタシの夢は全部叶ってるんだ」
裸のまま彼女は海に入る
「ふんふんふーん♪」と踊りだす。その髪に月光を煌めかせながら。

星屑は問う。
「なんで踊ってるんですか?」
ニーナは笑って言うんである。

「えー?踊ってればいろいろ忘れられるもん」

爽やかにサクッと、このマンガはここで終わる。

原始的な感覚を取り戻す喜び

スマホやパソコン見てる時間が長い現代。

俺たちはいつの間にか原始的で初期的な欲求を忘れていやしないか?忙しい忙しいとタスクに終われ、その欲求をないがしろにし、樽の中に押し込んでいないか?

でも、それが実は根深いところで俺たちを縛ってるんじゃないか?

俺たちは人間だ。知性をもっているし、それゆえに傷つけ合うし、分かり合う。しかし、同時に俺たちはカラダを持つ。動物でもある。

では、動物的な幸せとは何か?

それは今、ここにある。食欲、睡眠欲、性欲、そして無条件肯定。

それは未来とタスクの中になどありはしない。もちろん、未来も絶対に大事だし、そのための希望を俺たちは作り続けるだろう。

でも、その前に今この有限の肉体を与えられた喜びに、身をまかせることも忘れてはいけないと思ったんだ。全力投球で、全力肯定で、抱擁して、泣いて笑って叫びたいんだ。

去年、アニソンクラブを取材した。人生初のクラブ。ドラッグとセックスの犯罪的な場所で怖いとアホな偏見を持っていた俺はめちゃくちゃ面食らった。

けど、太鼓のように打ち付けるビートに、気づけば踊ったこともないダンスを踊っていた。それを見て周りの人も受け入れ笑ってくれた。熱狂。最高に楽しかった。

いつか消える、この肉体があることの素晴らしさ。そしてその重要性。それを『星屑ニーナ』は余裕あるすまし顔で、俺たちに何度だって教えてくれる。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

3

野田 翔(ROOMIE / DON'CRY編集長)

ROOMIE(https://www.roomie.jp/)という月間ユーザー数260万人のライフスタイルメディアで編集長をやりつつ、生きづらさを和らげるDON'CRY(https://www.doncry.net)というカルチャーメディアでも編集長をやっています。

自分の好きな読み物

こういう集め方はできるのか?できないなら消す。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。