遠距離恋愛が失敗するのと、夢が叶わないのは同じなんじゃないか?

「なりてぇモンちゃんと見ろ!!!」

これは『僕のヒーローアカデミア』というジャンプ作品の轟 焦凍(とどろき しょうと)というキャラの言葉だ。

劇中、彼はこの言葉を同じくヒーローを目指す友人にぶつけた。彼が自らの夢から目を背けた瞬間のことだった。

「人は目の前にあるものを欲しがる」

そのシーンを見た時、僕の目の前には数年前の光景が広がっていた。

教壇から、教授は青い目の学生たちに向かって静かにそう述べた。

「人は目の前にあるものを欲しがる」と。

それは、僕がカナダのド田舎大学で社会学を勉強していた時の言葉で、いわく、接触時間が多い人や物事がその人に一番影響を与えるというものだった。

教授は他にも例をあげていく。

例えば、遠距離恋愛の多くが失敗に終わってしまうのはなぜか?

それは、遠く離れて文字や声、画面越しの存在になってしまったパートナーよりも、目の前にいる異性の方が情報量が多いからだ、と。

同様に、会社の女性と関係を持ってしまう夫がいるのも、このせいだろうと。

「自分を変えたいなら、使う時間や、付き合う人を変えろ」

つまり、よく意識高い言葉として用いられるこの言葉も、あながち嘘でもないらしい。

人はどうしようもなく、目の前にあるものを欲しがってしまう生き物なのだ。

もし仮に、自分がなりたいものや、近づきたい人がいたとする。例えばそれは編集者や、マンガ家かもしれない。

でも、例えばメーカーや金融業界に勤め、その環境に親しんでしまえばその気持ちはどんどん薄れていく。

そんな時、あなたは、あなたの夢に対して遠距離恋愛をしている。遠距離で上手くいくカップルはごく少数だ。なんなら、身近にいたとしても別れゆくカップルは後を絶たない。

「人は易きに流れる」

知り合いに新卒で大手メーカーを蹴ってでも、あるメディアにアルバイトで入った人がいた。彼女は言う。

「あの時、この世界から離れたら、もう一生入れないと思った」と。

大げさだろうか?

いや、その言葉を酷く正しいだろうなと今は思う。僕はいまマスコミに入って社会人4年目だが、最初から正社員の門戸はくぐれず、非正規雇用だった。

それでも今、その選択をしたことは果てしなく正解だったと感じる。

「人は易きに流れる」

もし僕があの時、全然関係ない仕事に就いていたら、恐らく仕事の仲間たちから影響を受け、年中旅行でもして、慣れないフットサルでもして、お酒を飲んでグダを巻き、日々風俗にでも行っていたかもしれない。そしてそれを心のどこかで虚しく思う。

なぜそうなるのか? その理由は簡単だ。その道を選びたかったからではなく、その道のほうが楽だからだ。

「正しい選択などない。選んだ道を正しくするのが人生だ」とも思うので、その生き方を否定はしない。それが悪いとも思わない。人生はそんなに単純ではないと思う。

ただ、どうしてもそこに近づきたいものがあるなら、その分岐は思った以上に大きい。例えばマスコミの中途など、ほとんどが経験者採用だからだ。そうなると、経験を積むためには0からやり直すことになる。年収は絶対に下がる。社員でもなくなる可能性も高い。

でも逆に、近づいたら後は楽だ。

近くにいれば、身体は勝手に動く。

勝手に失敗し、勝手にバカにされ、勝手に悔しさが自らを駆り立て、焚きつける。

気づけば、自分の周りには似た人間が集まり、勝手に火をつけ合い始める。

そしてある日気づいたら、近づきたい場所に急速に近づいている自分に気づくのだ。

そう、夢の中には不思議な引力が働いていて、速度をもって飛び込んできたモノは、勝手に核に引き寄せるようにできているらしい。

なりたいもの、近づきたい人に、ちゃんと近づける人は強い。そして今、そういうものにネットは非常に近づきやすくしてくれるようになった。

だけど…。

そのまま口を開けていればいいほど甘くない。

だからこそ、なりたいものや、近づきたい人に、ちゃんと近づける人間でありたい。それを貶めるのではなく、目の前まで近づいて、ちゃんと欲しがる人間になりたい。

心の中の轟焦凍に「自分のなりてぇモンちゃんと見ろ!!!」と、怒られながら今日も暮らす。

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野田 翔(ROOMIE / DON'CRY編集長)

ROOMIE(https://www.roomie.jp/)という月間ユーザー数260万人のライフスタイルメディアで編集長をやりつつ、生きづらさを和らげるDON'CRY(https://www.doncry.net)というカルチャーメディアでも編集長をやっています。

何度も読み返したい素敵な文章の数々vol.10

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