明日の天気

もし晴れたら散歩をしよう。
何でもない道を当たり前の道を。
特に何を考えるわけでもなく。
何気なく何となく歩こう。
 
 
もし雨が降ったら窓の外を眺めよう。
絶え間なく降るようでいつかは上がる雨。
ずっと続くものなんて何にもないんだ。
形も気持ちも関係も人間も。
 
 
もし雪が降ったら長靴を履こう。
誰しもに平等に雪は降るけど
雪ほど人によって捉え方が違うものもない。
帽子を被ってマフラーを巻いて手袋をはめて。
いろんな雪の捉え方を見つけに行こう。
 
 
もし風が強かったら歩道に佇もう。
吹っ飛ばされないように足に力を入れながら。
道行く人を観察しよう。
そこにあるのはきっとチラリズム。
決して凝視してはならない。
でもそこにあるのはチラリズム。
 
 
もし槍が降ったらなるべく地下に行こう。
間違っても表なんかに出ちゃいけない。
槍の餌食になってたまるか。
狩られる側よりも狩る側でありたい。
 
 
もしウイルスが降ったら家の中にこもろう。
ウイルスはあらゆる手を使って体内に侵入しようとする。
ウイルスは動物を破壊するためにあるもの。
そんでもってウイルスは目には見えない。
そんなものとどうやって戦えばいいのさ。
だからこもるこもる。こもる以外の方法はない。
 
 
もし金が降ったらビルの屋上に行こう。
見下ろして目に入る光景は右往左往する虫ケラども。
我先に誰よりも多くの金を拾いまくりたい。
そんな金は偽物だ。そんな虫ケラも偽物だ。
 
 
もし人が降ったら社会を憎もう。
降った人に罪があるんじゃない。
降らせた社会に罪がある。
無関心を貫く奴らに罪がある。
当事者意識を失った発展途上に成り下がった国。
 
 
もし光が降ったら目を背けよう。
そこから先、何も考えられなくなっても。
そこから先、僕がいなくなってしまっても。
精一杯に目を背けよう。
僕がいる可能性を少しでも大きくしよう。
 
 
何も降らない時もある。
何かが降っている時もある。
 
何も起きない時はない。
どこかで何かが起こるだろう。
 
 
明日はどんな天気だろう。
何かが降るかも。降らないかも。
 
ひとつひとつを考えながら。
何とかかんとか生きていかなきゃ。