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この夏の暑さはカクシンハンの薔薇戦争が原因の一つだ

カクシンハン の「薔薇戦争」見てきました。

「ヘンリー六世」三部作と、「リチャード三世」の二本立て。

上演時間がヤバい

上演時間は、
「ヘンリー六世」一部 75分
「ヘンリー六世」二部 80分
「ヘンリー六世」三部 90分
(各部の合い間に10分の休憩)

「リチャード三世」2時間半(途中10分休憩あり)
です!

なんと一日でこれをやってしまうんです!!!
(「ヘンリー六世」だけの日、「リチャード三世」だけの日もあります)

まず、この上演時間に驚きますよね。
役者さんはもっとでしょうけど、観るほうも大変です。
頻繁に休憩に立てないと思ったので、私は、事前に頻尿を抑える薬まで飲んで臨みましたよ。「リチャード三世」と「ヘンリー六世」の間の一時間、会場準備の時間がありました。私は、その間にデカビタC的なものを途中飲みましたが、ロビーには、ちゃんとレッドブルも売ってました(ちゃんと?)。

歴史としては、
「ヘンリー六世」
「リチャード三世」
の順ですが、私が見た日は、
「リチャード三世」
「ヘンリー六世」
という逆薔薇の日!

主催側の都合もあるかもしれませんが、この順番は、この順番で楽しめる不思議!

とにもかくにも、昼12時半に開始して、終わったのは、20時半です。

拘束時間、実に8時間!

これが思ったほど、つらくない、というか全然平気でした。
本来、「ヘンリー六世」は一部〜三部まで、各部で2時間半はかかる劇。
それを各部1時間半くらいにおさめてしまうわけです。誰が何をしたのか、それを追うだけで、もうそれはすごいスピード感です。

ダイジェスト? いや、人間ドラマに感じれるところがすごい。

スピード感ある人間ドラマが、8時間という時間を忘れさせてくれます。

全体の登場人物は、140, 150人、それを17, 18人の役者でやってしまう。もっと混乱してもよさそうなのに、それはありません。普通、予備知識がなくては、誰がヨーク家で誰がランカスター家かなんてわかりません。それが衣装でわかるという工夫はあるのがまずわかりやすい。ランカスター家は赤い衣装、ヨーク家は白い衣装です。でも、同じ役者さんが、かたやヨーク家、かたやランカスター家として登場したりします。

それでもキャラを識別できるんですね。

わざとらしく演じ分けしているわけではないはずなんですが、話に合わせて、登場するから、この人がどういう立場の人で、どういう性格の人かは混乱がありませんでした。

人の入れ替わりが多くて、もうみんな混乱してるんじゃない?
というときには、役者さんが名乗ってくれたりします(笑)
たぶん、そんなことしなくてもよかったんじゃないくらい。

衣装変えるだけでもほんと大変ですよね。
でも、見ている間はそんなことを考えもしませんでしたが、衣装はどんな感じに収納して、入れ替えて、洗濯とか予備の衣装はどうしてんだろう? って、あとでつくづく考えました。


また、時間を忘れてしまう要因として、逆薔薇の場合、「リチャード三世」を先に観た場合、他の見方もできます。リチャード三世は、兄に始まり、幼い甥たちなど、容赦なく殺していきます。だんだんと、だったら殺してしまおうという判断が早くなっていく。なぜ、リチャード三世はあぁも残忍に、性急にことを進めたのだろう? と、そんな疑問を「ヘンリー六世」が始まったときに持って見ることになります。

時間的には、60年前に遡るわけで、リチャード三世が生まれる前です。でも、そこに至る要因が、どこかにあるはず、と思って、それを見逃したくなくて、集中してみます。

あのリチャードは、どうやって生まれた?!
最終的に、一つところに収束するヨークとランカスターにどういったことがあったの?

そういう気持ちを強くして観れたのは、逆薔薇でよかったな、と思いました。

役者さんたちもヤバい

テンポやシーンがすんなり入ってくるのは、ドラムのユージ・レルレ・カワグチさんのおかげです。音楽に合わせたものだけでなく、シーンを際立たせる音、出会い、驚き、悲しみ、こういったものをドラムが教えてくれます。
今回は、役まであって(笑)
合い間の休憩に、今回の内容の説明や販促物の説明まで・・もうがんばりすぎです。

赤や白の衣装のようなわかりやすさ、歌舞伎の型のようにこういう動きをすれば、この人はこういう人だとわかる役もありましたね。そういう意味で、わかりやすいシンボルとして、登場時、天真爛漫さを押し出したジャンヌ(長内映里香さん)もよかったです(ちょっと阿呆っぽくもありましたがそれもよかった)。

今回、一番好きだったのは、長くヨーク公として登場されていた大塚航二朗さん。安定感が半端なかった。特に、ヨーク公は登場時からの劇の終盤に向けて変化が大きい役だと思います。重要な家臣の一人、あくまで一人という印象から始まり、王位継承の正当性を持つものの自覚が芽生えたあと、もう王と呼んでもいいオーラを持った時期、一人の人間の変化が大きかったですが、人が入れ替わり立ち替わりする中、もうヨーク公として、ずっと劇の中心にあったと思います。

ヨーク公の三男であるリチャード三世(河内大和さん)は、割と最初からその内面では決意を固めて、内面の方向性としての変化はヨーク公ほど大きくなかったように思います。ただ、ときどき見せる、内面の決意、刃物に例えるなら、その刃の鋭さは、さすがです。リチャード三世のいびつな体を示しつつ、あの河内大和さんの肉体は、内面を感じさせる見事な武器でした。壁に映った影は、エヴァンゲリオンの初号機みたいでしたね。震えます。

ヘンリー六世(鈴木彰紀さん)もヨーク公同様、変化が大きい面も持っていたけど、三部構成、展開や、場面の効果もあって、ヨーク公のような感心の仕方はしませんでした。もちろん、すごいとしか言えないんだけど・・
しかも、ヨーク公の次男ジョージもやってるし(笑)
ただのダメな君主ではなく、ヘンリー六世は、こういう人だったんだな、って思わせてくれて、劇により厚みが感じられました。

毎回、劇を壊しやしないか、とヒヤヒヤする野村龍一さんも舞台と観客との距離をグッと縮めてくれました。楽しい場面がたくさんありましたね。私が演出家なら帰ってもらいたいくらいですが、それを舞台として成立させていたのは、本当に舞台にいらっしゃった役者の皆さんの力です。

全員が河内大和さんだと変だし、全員が野村龍一さんだともっとおかしくなる(笑)

今、手元にパンフを置いていますが、全員について、いくつかのシーンが思い出せるくらい。いいシーンも、もっさりしたシーンも、はしゃぎすぎでしょ、というシーンも浮かびます。

いい夏をありがとう

歴史劇いいじゃないか! という体験をさせていただけたカクシンハン の「薔薇戦争」。これが歴史劇の物差しになると、これから困るだろうなぁ。楽しみました。ありがとうございます。

またシェイクスピアとの距離が縮まったな。

翻訳はこちら。

あらすじ、劇の要約はこちら。


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