ユニコーンオーバーロードクリア後雑感

総評:めっちゃ良かった

 無料で数時間遊べる上にデータを引き継げる体験版があるので、正直言葉を重ねて推すよりそっちをやってもらった方が早く、ここではそこらへんは省略する。以下に続くのはタイトルから察せられるとおりネタバレありの感想なので、ネタバレが嫌な人ははやく体験版をやるか本編をクリアしてほしい。





没シナリオ考察

 ユニコーンオーバーロードには、開発段階では他にも没シナリオがあったんじゃないかとうかがわせる要素がいくつかある。
 その根拠の一つが、クリア後仲間になるキャラ達だ。
 最後のクエスト攻略中にヘルマンとナイジェル、クリア後のサブクエスト攻略でイレニア、ミレー、アルチーナ、エリゴール、ボーモン、ゲイリーが仲間になる。いずれも本編では一時的加入のみのキャラか、敵対的だったキャラだ。
 ほぼ傭兵と同じ仕様のヘルマンはさておくとして、これらのキャラは2つに分類できる。「システムボイスが実装されているか否か」だ。
 仲間キャラは守備兵として街に配置したり、食事をともにしたりすることができ、そのときには固有のボイスが再生される。この「守備兵配置」と「食事」はクリア後加入キャラも同様に可能で、テキストメッセージもそれぞれ固有のものがあるが、ボイスがあるかどうかはキャラによって異なるのだ。
 まとめると、以下のようになる。

守備兵ボイス・食事ボイスあり:アルチーナ、ゲイリー、ナイジェル
守備兵ボイスあり:ミレー
ボイスなし:エリゴール、ボーモン、イレニア

 これは要するに、(ボイスの実装がそのままゲームでの扱いを示唆していると仮定すれば)こういうことだ。

永続的な仲間として加入するルートがあった:アルチーナ、ゲイリー、ナイジェル
食事ができない期間でのみ加入するルートがあった:ミレー
加入する予定はなかった:エリゴール、ボーモン、イレニア

 「加入する予定はなかった」キャラについては特に問題ないだろう。イレニアは救出自体が話の根幹に関わるし、エリゴールはおおよそ和解して仲間になれそうな出自ではない。ボーモンも解放軍に就く動機がない性格だ。
 またミレーについても、本編での挙動とほぼ一致している。ニーナ加入イベントでのみ参戦していたミレーが、開発段階ではイベント開始前にも一応仲間として加入している状況があったのか、というぐらいだろう。
 気になるのはやはりアルチーナ、ゲイリーの二人だ。(ナイジェルは本編でも一応の和解を見せていたため特段不思議ではない)
 アルチーナはアレインを生贄にしたジェラール(アレイン祖父)の蘇生、ゲイリーはイレニアの死をきっかけにした自棄と、本編ではおおよそ解放軍に加入しそうな動機は見受けられない。
 では、どういうことか? おそらく開発段階ではその動機を満たすルートがあったのだ。個別に考えてみよう。

アルチーナ


 アルチーナは支配の術を受けておらず、降霊術によるジェラールの降霊を対価として自発的にゼノイラに協力していた。その彼女が解放軍に協力するようになる理由とはなんだろうか。考えられるのは以下だ。

①降霊術はジェラールには有効でなかった
②ジェラールを穢された
③降霊術は有効だったが、ジェラールに諭された

 このうち、①は作中で示唆されている。バルトロの降霊術は一角獣の呪いによって幽世に彷徨っている者を取り憑かせることはできるが、真っ当に死んだ者については言及されていない。アーカイブの天界の項を見る限り、恐らくできないだろう。バルトロ側にかつて死んだ名君をもう一度蘇らせる動機もない。
 ②については、間接的にアルチーナがそう感じるだろう出来事がある。アルビオンの死霊術によって無理やり動かされている教皇だ。マルチーナはゼノイラに協力しているが、理性的な判断力は保っている。死臭に満ちた教皇の部屋と、教皇の死体が立っていれば良しとするサナティオたちの姿は、彼女に己の行いを顧みさせるには十分だろう。
 ③もないとは言えない。墓所にはジェラールの幻影がいるし、イベントの途中になんらかの形でジェラールの声を聞いた可能性はあるだろう。
 さて、総合するとどういうことか? もしエルヘイムでアルチーナと決戦をする前にアルビオンを訪れ(一応実際のゲーム本編でもバストリアス経由でたぶん行けることは行ける。確かめてはない)、教皇の惨状を伝えることができれば、アルチーナが考えを改める理由は十分にあるのだ。そもそも、アレインの肉体を借りて蘇ったジェラールを生かしておく理由が、ゼノイラには元々ないのだから。

ゲイリー

 ゲイリーはイレニアと、イレニアの統治するコルニアのみに価値を見出していた。では、そんなゲイリーが仲間になる状況とは何か? 当然、イレニアが生きていることと、イレニアの肉体をガレリウスが乗っ取っていることをゲイリーが知ることだ。どうやって知ることができるだろうか?

①憑依の瞬間を誰かが目撃していた
②ガレリウスの鎧が砕ける瞬間を見た

 ②については早々にガレリウスを倒さなければならない上に、一角獣の力がなければそのままバッドエンドに移行してしまうので考えにくい。
 ①の場合、最も有望なのはやはりアルチーナだろう。憑依の現場にはイレニア隊の面子が倒れていたが、このうちホドリックとルノーは支配の術で記憶が曖昧になっているし、ゲイリー本人が知っていたら話にならない。アルチーナはヤーナの師となるほど長命で熟練の魔術師であるうえ、彼女は仮に知っていたとしても自分の目的があるうちはそのことを黙っている動機がある。ジェラールと再開するためには、イレニアが死んでいるほうが都合がいいのだから。
 つまりアルチーナが仲間になった場合、ゲイリーも流れで仲間になり得るということだ。そしてその場合、やはりアルビオンからエルヘイムに進行するルートになるだろう。


没ルート推測

 というわけで、「バストリアス⇒アルビオン⇒エルヘイム」シナリオルートがあったのではないか? というのが推測の内容だ。製品版ではまずドラケンガルドかエルヘイムに行くことを提示されるが(推奨レベル的にはまずドラケンガルドに行くことを誘導しているが)、それぞれが地続きの国であるなら「3つのうち2つから選ぶ」よりは「まずは3つの国のどれかに行く」という初期構想であった方がスッキリする。スッキリするだけだけど。そしてそのうちの一つがアルチーナとゲイリーが仲間になるバストリアスルートだった可能性がある。あるだけだ。「エルヘイムに獣人がいた」という回収されなかった話もこれを示唆しているような気がする。

 あとはまあ…なんつーか…かっちり詰めているゲームの割に、仲間を加入させる/処刑するの選択肢が妙にゲームから浮いてるのが気になるんだよね。アレインの懐深さをロールプレイさせる要素&隠し要素用と言えばそれまでだけど、キャラによっては丸ごとサブイベントがなかったことになる割に代わりの報酬がしょっぱいので、妙にバランスが悪い。取り返しがつかないので選択肢選ぶときに微妙に緊張するし。こういうのってある仲間の非加入が別の仲間の加入フラグになってないと駆け引きとしては成り立ってないよね。

結論:DLC来るといいなあ。

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